夏から秋の始めにかけて旬を迎えるぶどうは、赤ワインの原料にもなることから「体によい」というイメージを抱いている人も少なくないでしょう。実際に、ぶどうの皮には抗酸化作用のあるポリフェノールが豊富に含まれています。
しかし、ぶどうには「消化に悪い」「太りやすい」といったイメージもあります。本記事ではぶどうの栄養成分や効能などに触れ、ぶどうを生活に取り入れるヒントを紹介します。
ぶどうとは
ぶどう(葡萄、英名 "Grape")は、ブドウ科(Vitaceae))のつる性落葉低木で、その果実を食用にします。栽培の歴史はとても古く、ヨーロッパでは紀元前3000~4000年頃にはすでに栽培されていました。現在でも生食用と酒造用が栽培されていますが、古くはワインを作るために多く栽培されました。
日本ではヤマブドウが自生していましたが、現在栽培されている甲州ぶどうは、奈良時代に中国から伝わったとされる系統が山梨県で自生し、鎌倉時代になって栽培されるようになったと言われています。
現在、世界のぶどう生産量1位は中国で、全体の約2割を占めています。続いてイタリア、アメリカ、スペイン、フランスなどが上位に名を連ねています。上位は国内に多くのワイナリーを持つ国で占められていますね。
ぶどうの品種
スーパーなどで見かけるのは人気のある数種類ですが、現在主な品種は約80種類もあり、皮の色で大きく3種類に分けられます。
巨峰に代表される黒色
黒いぶどうの代表的な品種は大粒の「巨峰」や「ピオーネ」、「ナガノパープル」などがあります。
デラウエアに代表される赤色
赤いぶどうは、おなじみの「デラウエア」、大粒で高級な「ルビーロマン」、長細い形の「マニキュアフィンガー」などがあります。
シャインマスカットが有名な緑色
緑色のぶどうは、香りが豊かな「マスカットアレキサンドリア」、「ナイアガラ」、人気急上昇中の「シャインマスカット」などがあります。
このほか、輸入ぶどうも目にするようになりました。種無しの赤ぶどう「クリムゾンシードレス」、種無しの白ぶどう「トンプソンシードレス」などで、どちらも皮ごと食べることができて、渋みが少なく食べやすいです。
ぶどうの旬
最近ではコンビニで冷凍ぶどうが販売されていて、いつでも手軽に食べられるようになりましたが、やはり、最もおいしくて安くなる旬の季節に楽しみたいものです。ぶどうの産地は有名な山梨・長野以外にも本州では青森から広島、島根、北海道や福岡など全国で栽培されています。収穫量のトップは山梨が約25%、長野が約15%、山形が約10%と続きます。
ぶどうの旬は、たくさんの品種を全国の産地が作っていることから、種類によってずれがあります。言い換えれば、長い間旬のぶどうが食べられるということです。
代表的な種類で見てみると、「デラウエア」は5月から店頭に並び始め、最盛期は7~8月、9月まで楽しめます。「巨峰」は5月中旬から最盛期が8月中旬~10月頭まで。「シャインマスカット」は7月頭から最盛期が8月中旬から9月いっぱい、10月の頭まで楽しめます。短いものでも3カ月、長いものになると半年近くおいしく食べることができるフルーツです。
ぶどうの栄養成分とその効能
続いて、ぶどうの栄養成分を詳しくみていきましょう。
【ポリフェノール】抗酸化作用・眼精疲労を和らげる
強い抗酸化力を持つことで広く知られるようになったポリフェノール。ぶどうの皮や種の部分に多く含まれており、動脈硬化などの予防に加えて、抗酸化作用つまりアンチエイジング効果があると言われています。
ポリフェノールには8,000を超える種類があるとされてますが、ぶどうにはアントシアニンやレスベラトロールといったポリフェノールが含有されています。アントシアニンは、目の疲れなど視機能改善作用に効果が期待できるそうです。
レスベラトロールは脂肪減少効果や血流改善効果などがあることが研究で明らかにされてきており、サプリメントにも利用されることが多くなってきました。
【ブドウ糖】脳のエネルギー源・疲労回復につなげる
ブドウ糖は正式名称をグルコースといいます。「脳がエネルギーとして利用できる唯一の物質」とされ、体にとって欠かせない栄養素です。ブドウ糖は体内で素早くエネルギーに変換されるため、疲労回復の効能があるとされています。デスクワークで頭を酷使した際に摂取すれば、脳の活性化につながります。
ビタミンCやビタミンB1も
ぶどうには、ビタミンCやビタミンB群も含まれています。ビタミンCはコラーゲンの合成に不可欠なビタミンで、ポリフェノール同様、抗酸化作用を持つことで知られています。
ビタミンB1も疲労回復効果が有名です。このビタミンB1が欠乏すると食欲不振や疲労感、手足のしびれ、むくみなどの症状が見られるようになります。
ぶどうは食べすぎるとどうなる?
ぶどうにはブドウ糖が多く含まれていると紹介しましたが、ブドウ糖は多く取りすぎると中性脂肪となり蓄えられていきます。結果、肥満を招いてしまう要因に。
また、ブドウ糖は一度に多く摂取しすぎると、下痢などを起こすとも言われています。ぶどうに限らず、食べ物は適量とバランスが大切です。ポリフェノールをとりたいからなどと、一度にたくさん食べるのは避けましょう。
ぶどうのカロリー
食べると身体に良いことがたくさんあることがわかりましたが、体内に吸収されやすい糖質となると、気になるのがカロリーですね。
日本食品標準成分表によれば、ぶどうの可食部100グラムあたりのエネルギーは59kcalとなっています。ぶどうは種類で大きさがかなり異なるので、主な品種でみていきましょう。
■巨峰
- 1房(250g)……148kcal
- 1粒(12g)……7kcal
■デラウェア
- 1房(120g)……71kcal
- 1粒(2g)……1kcal
■マスカットオブアレキサンドリア
- 1房(300g)……177kcal
- 1粒(13g)……8kcal
このように大粒のぶどうは、小さいぶどうに比べればハイカロリーですが、その分一粒の食べ応えがあるので、そこまで気にしなくてもいいかもしれません。もちろん食べすぎはNGです。
ぶどうの選び方
いいことずくめのぶどうですが、不安があるとしたら価格が高いことでしょうか。比較的安く手に入るデラウエアは1パック2房入りで500円くらいですが、人気のシャインマスカットは1房2,000円から品質の良いものだと5,000円近いものもあります。それならば、できるだけおいしいものを選びたいものです。
おいしいぶどうの特徴
おいしいぶどうの特徴は以下の通りです。
(1)色が濃くて表面に張りがある
(2)ブルーム(白い粉状のもの)がしっかりついている
(3)枝が緑でしっかりしており、切り口が新しい
(4)実が隙間なくびっしりとついている
特に(4)については、房から実がポロポロと落ちるものは鮮度が落ちているとのことです。
ぶどうの食べ方
ブドウの果実は枝に近い部分から熟していくため、房の上の部分ほど甘みが強くなり、房の下に行くに従い甘味も弱くなります。房の下の方から食べていくと、だんだん甘みが強くなるので、最後まで甘みを楽しみながら食べられます。
また、冷やしすぎると甘みが感じにくくなってしまうので、保存は常温で食べる直前に冷水で冷やして食べるようにしましょう。
ぶどうは消化に悪い?
抗酸化作用など、美容に効果的なポリフェノールをしっかりとるなら、ぶどうは皮ごと食べるのがおすすめです。ただし、皮には食物繊維も豊富に含まれますので、消化にいいとはいえません。また、前述したとおり、ぶどうに豊富に含まれるブドウ糖は、一度に多く摂取すると下痢を起こしてしまうことがあります。
ぶどうの切り方と保存方法
最後に保存方法についてご紹介します。
房のまま保存する
房のまま保存する場合は、1房ずつ乾燥しないように袋に入れて、冷蔵庫の野菜室に保存します。水がつくと早く痛んでしまうので、洗ってから保存せずに、食べる直前に洗います。
粒が大きいぶどうは1粒ずつ保存
粒が大きいぶどうは、1粒ずつに切り離して密封袋に入れ、野菜室で保存します。枝から実を引きちぎるのではなく、枝の部分を少しだけ付けてハサミを使って切り落としていきます。引きちぎると、実と枝のついていた部分に穴が開いて、痛みやすくなります。この場合も、洗うのは食べる直前にしましょう。
冷凍保存という選択肢もあり
食べきれないときは、冷凍保存もおすすめです。1粒ずつ切り離したぶどうの実を密封袋に入れたまま冷凍します。食べるときは、食べる分だけ取り出して、水洗いします。表面だけ解凍されるので、皮が剥きやすくなるメリットがあります。完全に解凍せずに凍った状態で食べると、シャーベットのような食感で、生とは違ったおいしさを楽しめます。
ぶどうは健康や美容につながる栄養素が豊富
これから旬を迎えるぶどうは、味がおいしいだけでなく、健康や美容にもよい果物なんですね。ただし、ブドウ糖を多く含む果物なので、食べすぎは肥満の原因に。適量を楽しむようにしましょう。