私はヴァン・ダー・アーキテクツジャパンという建築デザイン会社の代表として東京に事務所を構えています。Uber JapanやWeWork Japanをはじめ、スタートアップまで幅広く企業のデザインオフィスを作るのが仕事です。

特にこの一年は、ウィズコロナ時代に求められる「働く場所」の作り方を考えてきました。

この知見を基に、今回は2回にわたり「建築家がお勧めする『リモートワークで成果を出せる』環境作り」というテーマで今日からできるTipsを紹介したいと思います。

  • リモートワークで成果を出せる環境とは?

リモートワークがだれてしまう原因に

リモートワークが一般化したメリットとしては満員電車など通勤のストレスがなくなり、余った時間を仕事のインプットに当てたり、お家時間を楽しんだり、コロナ禍で行動が制限される中でも、有意義な時間の過ごし方ができるようになったのではないでしょうか。

しかしながら、リモートワークならではの問題点や悩みも聞くようになってきました。

例えば「自宅だとなぜか集中できない」「アイディアが浮かばない」など、仕事の生産性低下が問題視されるケースが多いようです。これは、リモートワーク環境を整備できていないことにより、オン/オフの切り替えがうまくいっていないことが原因だと考えます。

都内では特に一人暮らしの場合ワンルームに住む人が多いのではないでしょうか? この場合どうしても食事をするテーブルでパソコンを開いたり、くつろぐためのソファに座って資料を作ったり、仕事スペースと生活スペースの境界が曖昧になってしまいます。

オン、オフを同じ環境で過ごすことによって、仕事の効率は悪くなるし、さらにオフでくつろぐことも難しくなり、悪循環に陥ってしまうのです。

注目すべきは、「空間」「照明」「音」の3つの要素。ここを改善し、生産性が上げるリモートワーク環境作りを目指しましょう。

仕事をするためだけのスペースを決める

第一の解決策は、自宅内に「仕事をするためだけ」のスペースを確保することです。狭さ・規模は気にせず、毎回決まった場所で仕事をすることをお勧めします。

私の最初のオフィスは、当時住んでいたアパートの廊下にあったコートクローゼットの中でした。とても狭い空間でしたが、「私だけの仕事スペース」で他の部屋から離れているので、朝はクローゼットオフィスに「出社」し、夜にはすぐ生活空間へ「帰宅」できました。

仕事場を見えないようにする事は、仕事モードのスイッチをオフにし、リラックスモードに切り替えるという意味でとても大切です。仕事場と生活空間をきっちり区切らないと、常に仕事モードになってしまい日常生活に支障をきたすでしょう。

とは言え、今すぐクローゼットを仕事スペースに変えることは難しいでしょう。

例えばIKEAの「BEKANT(ベカント)」(2万9,990円)はディバイダ(仕切り)で仕事スペースと生活空間を物理的、そして心理的にも分けることができます。

どうしても1つのテーブルしか置けない場合、小さな仕切りをテーブルの上に置くだけでも、仕事とそれ以外の活動を「区切る」事ができます。

これは集中力を高めるだけでなく、電話会議中に音を吸収するのにも役立ちます。このような仕切りはコクヨやイケアなどのオフィス家具会社から購入できますが、プラスチック段ボールで簡単に作ることもできます。

また、株式会社イトーキが販売している「ONOFF(オノフ)」(8万9,900円)のようなテーブルを使うことですぐに空間を区切ることができます。

ONOFFの最大の特徴は机を簡単に広げることも折りたたむこともできる点にあります。仕事中は机を広げて、仕事がおわったらコンパクトにたたむことによって、仕事空間と生活空間を明確に分け、オンとオフをメリハリをつけることができるようになります。

折りたたむとと厚さ約240mmと薄く、衣類ハンガーとして使うことができるのも、魅力の一つです。

部屋の明るさでオン、オフを変える

一日中同じ明るさで過ごすこともオン、オフの切り替えができない大きな原因になります。

例えば、仕事が終わったら天井の蛍光灯は消して、柔らかな灯りのテーブルランプをつけると良いでしょう。

白色の蛍光灯のスイッチをオフにすると同時に仕事モードもオフ。そしてテーブルランプの柔らかな灯りをオンにすることで、リラックスモードをオンにできるでしょう。

デザイン的にもオススメの間接照明を紹介します。

一つ目に紹介したい照明は、FLYMEeの「Table Lamp(テーブルランプ)」(2万2.750円)です。石の台座とアンティークブロンズの塗装仕上によってユニークなデザインとなっています。形状が丸く、温かくて柔らかい光を放っていて、オフの時間を彩る照明としておすすめです。

次に紹介したい照明はIKEAの「ベイヤ」(4,990円)です。竹の伸縮自在な特徴を存分に生かした照明で、デザイン性もさることながら、電気をつけると独特な模様が浮かび上がるのがユニークです。あなたのオフ時間を彩ってくれるでしょう。

最後に紹介したい照明は、HAYの「PC PORTABLE OCEAN GREEN テーブルランプ」(1万4,546円)です。この照明は充電式のポータブル照明となっています。食事や読書、映画鑑賞などさまざまなシチュエーションや場所に応じて使い分けることができる点がおすすめです。

仕事中だけ聴く音楽のプレイリストを用意する

最後の提案は、仕事中にだけ聴く音楽のプレイリストを作成する事です。普段聴いている音楽とは異なる曲だけで作りましょう。

それを聴き続けてルーティーン化すれば、その音楽をかけるだけですぐに仕事モードに切り替えることができます。

普段みなさんがあまり聞かないのでは? と思う音楽でプレイリストを作ってみたので参考にしてみてください。

Tim Hecker: Music of the Air
Ellende: Girlfriend Experience
Fennesz: Endless Summer
Oren Armbarchi: Stars Aligned, Webs spun
Gia Margaret: Barely there
Lucrecia Dalt: Glosolalia
Lightbath: The rhythm of desire
Coil: Red birds will fly out of the east and destroy Paris in a night
M Geddes Gengras: Ishi
R Beny: July side A

※他にもYouTubeにアップされている焚火や川のせせらぎのような自然音もお勧めです!

別の部屋を用意することは難しくても、小さな環境の変化を積み重ねることで生活にメリハリをつけることが可能です。今回の記事をきっかけにぜひ実践してみてください。

著者プロフィール:マーテン・ヴァン・ダー・リンデン(Martin van der Linden)

在日オランダ人建築家のマーティン・ヴァン・ダー・リンデンは、2001年に建築デザイン事務所であるヴァン・ダー・アーキテクツジャパン株式会社を設立。東京を拠点に、Uber JapanやWeWork Japan、NvidiaやAir Franceなど国内外の有名企業オフィスや地域公民館の外観・空間設計、インテリアデザインを手がけてきました。クライアントのニーズだけでなく、事業のビジョンや想いまでもを建築デザインで体現した、独創的かつ革新的なデザインが特徴。