コロナ禍によって、アパレル業界は一変しました。とくにその影響を大きく受けているのが紳士服でしょう。テレワークが普及し、男女ともほとんどスーツを着用することなく仕事ができるようになり、また採寸のために店舗を訪問する機会も減ったのです。
これを受けて、いま多くのアパレル店がオンラインオーダーを実施。ユーザーが満足する在り方を模索しています。そんな中、北海道帯広市から新しい価値観でスーツを展開しているのが「アステッドコーキン」(USTED KOUAHKINN)です。
アステッドコーキンのコンセプトは「身体のサイズが理想の全てではない」。
身体のサイズは採寸すればわかりますが、着心地という"好み"はユーザーごとに異なります。そこで、「お客様が着ている服こそ、お客様が着用感覚を把握しているもの」という考えをもとに、ユーザーが普段着ているスーツを計測。それを基準に、詳細なフィッティングが可能なオンラインオーダーを実現しています。
「お客様の価値観でお洋服を作りたい」…… という想いが込められたアステッドコーキン。同ブランドのオンラインオーダーをさっそく試してみました。なお、今回作ったオーダースーツは同社のBLOGでも取り上げられています。
アステッドコーキンの特徴
アステッドコーキンは、国内トップクラスの縫製工場と契約し、高品質なオーダースーツを展開しているブランドです。また、ビジネスウェアのカジュアル化を踏まえ、ジャケット専用のスタイルも用意。幅広いビジネスパーソンのニーズに応えています。
そんなアステッドコーキンですが、スーツモデル自体はシンプルです。手軽さと品質を両立させたエントリーモデル「1シリーズ」が2モデル、豊富な生地から自由にカスタマイズできるスタンダードモデル「3シリーズ」が2モデル、クオリティと着心地を追求し高級生地が選べるフラグシップモデル「5シリーズ」が1モデルの、計5モデルとなります。
- 1シリーズ「S1s」「S1i」:53,900円~ / カスタマイズ:21カ所 / 生地:33種類
- 3シリーズ「S3b」「S3e」:74,800円~ / カスタマイズ:23カ所 / 生地:314種類
- 5シリーズ「S5n」:96,800円~ / カスタマイズ:27カ所 / 生地:315種類
(※2021年8月現在 / 10,000円以上は送料無料 / いずれも税別)
上位モデルは選べる生地の数がぐんと増え、またその品質は価格以上に向上します。同社の特徴を活かすなら、やはり「3シリーズ」以上を選ぶのがオススメです。オンラインオーダーも、予算とスタイルに合わせてこの5モデルから選択することがスタートになります。
基本的なステップは以下の通り。
- 1:アステッドコーキンにアクセスします
- 2:スーツスタイルか、ジャケットスタイルかを選択します
- 3:オーダーするアイテムを選択します
- 4:生地・ジャケット・パンツをカスタマイズします
- 5:採寸方法を選択します
- 6:お届け先、お支払い情報を入力し、注文します
- 7:届いたスーツ回収キットでお気に入りのスーツを送ります(通常10日前後)
- 8:オーダーアイテムのサイズ調整を行います
- 9:生地に合わせた納期(通常3~6週間程度)で商品が発送されます
一度採寸が完了してしまえば、以降はそのデータを元にオーダーアイテムのサイズ調整を行うことができますので、二回目以降は「7」の項目を省略することができます。
オンラインオーダーを試してみよう
それでは実際にオンラインオーダーを試していきましょう。アステッドコーキンの魅力を最大限に活かせるのは、すでにスーツを所有しており、その着用感を把握しているユーザーです。そこで今回は、20代のビジネスパーソンがスーツをオンラインオーダーする、という想定で進めたいと思います。
Webページにアクセスしたら、まず「MENU」タブ内の「MODEL」からシリーズを選びます。今回はフラグシップモデル「5シリーズ」の「S5n」を選択。そして今回オーダーするアイテムを一覧の中から選びます。選べるアイテムは以下の通りです。
- スーツ (※2ピース)
- スーツ+ベスト (※3ピース)
- ジャケット
- パンツ
- ベスト
今回は標準的な2ピース構成である「スーツ」を選びました。
スーツをカスタマイズしよう
続けて「生地」「ジャケット」「パンツ」のカスタマイズを行っていきます。「S5n」で選べる生地の数は、2021年8月1日現在、なんと全315種。どれも一度は耳にしたことのある高級生地ばかりです。判断に迷ったので、今回は5種まで選べる「生地サンプル申込」を選び、カノニコの生地サンプルを取り寄せることにしました。生地サンプルを確認し、今回は「カノニコ モヘアクアトロ ブルー」を選択することにします。
次に「ジャケット」と「パンツ」をカスタマイズしていきます。非常に細かいところまでカスタマイズできますが、「こだわりオプション」を開くとさらにメニューが展開され、本切羽やR台場、ゴージラインなど10項目が追加で現れます。こだわりたい人はとことんこだわれるのがアステッドコーキンです。
とはいえ、各モデルにはそのモデルに合わせたカスタマイズが標準で選択されているので、必ずしもカスタマイズを行う必要はありません。自分のスタイルに合わせて必要なところだけ変更すれば良いでしょう。今回は、以下のようにカスタマイズしました。※を付けた部分が変更箇所です。
ジャケット
- デザイン:シングル2ボタン / ノッチドラペル
- バックスタイル:サイドベンツ
- 裏仕様:総裏
- 胸ポケット:バルカ
- 腰ポケット:斜め (※)
- 裏地色:キュブラ(100%) / ブルーグレー (※)
- ボタン色:水牛 / ダークブラウン
- こだわりオプション:肩パッド:なし / 本切羽:本切羽(あり)(※) / 袖ボタンホール配 色:グレー(※) / R台場:標準(台場なし) / AMFステッチ:標準 / ゴージライン:標準 /ネーム刺繍(銀):ローマ字(筆記体)(※) / フロントカット:そのまま / 汗止め:あり(※) / 衿幅:9.0cm(※)
パンツ
- タック:ワンタック(※)
- 裾上げ:ダブル4.0cm(※)
- こだわりオプション:ピスポケット:フタなし / 持ち出し:あり(6.5cm)(※) / サスベンダーボタン:なし / タック方向:アウトタック
もし生地の選び方やカスタマイズ方法がわからない場合は、チャットによる質問にも対応しています。チャットボット対応であれば24時間、スタッフから直接返事を受けたい場合は土日除く11~20時に問い合わせることができます。
このほか、予約制のリモート接客サービスやサイズサンプルスーツの無料レンタルなどのサービスも行っています。スタッフに詳しいアドバイスを受けたい方や、お気に入りのスーツが無い方はこちらも気軽に利用しましょう。
採寸方法を決め必要に応じてスーツを送る
モデルと生地の選択、そしてカスタマイズが終了したら、採寸方法を選びます。選べる方法は4つです。
- 1:お気に入りスーツを送って当店で採寸
- 2:マイサイズ(お気に入り)を利用
- 3:ご自身で入力
- 4:過去の購入履歴を利用
初めてアステッドコーキンを利用する方は、必然的に「1」か「3」を選ぶことになるでしょう。とはいえ、自身のヌード寸を正確に把握している方は少ないはずです。お気に入りスーツをアステッドコーキンが採寸し、そこからフィッティングを調整できることはウリでもありますので、ここは「1:お気に入りスーツを送って当店で採寸」を試したいと思います。
お気に入りスーツ採寸を選択すると、「スーツ回収キット」の申し込みフォームが開きます。送付できるのは「ジャケット」「ジャケット・パンツ (2ピース)」「ジャケット・パンツ・ベスト (3ピース)」です。スーツを仕立てる場合は、最低「ジャケット・パンツ (2ピース)」が必要になります。送ったスーツは2人以上の手で採寸され、正確な値が入力されます。
お届け先となる住所を入力したら、数日でスーツ回収キットが到着しますので、お気に入りのスーツを入れて送付しましょう。この一連の手続きには約10~20日かかりますので、初回注文時は日程に余裕を持った方が良いでしょう。
オーダーアイテムのサイズを調整する
採寸が完了すると、注文履歴からサイズ調整が行えるようになります。必要な方はサイズ調整期間内にカスタマイズしましょう。調整できるのは以下の項目です。
ジャケット:バスト、ショルダー、ウエストサイズ、着丈、右袖丈、左袖丈、二の腕 袖幅、袖口幅
パンツ:ヒップ、渡り、ウエスト、ひざ、裾、股下、股上
いずれも採寸サイズからcm単位でプラスもしくはマイナスという形で調整可能です。サイズを調整すると、数値でサイズの差が示され、またサイズを比較した参考シルエットがプレビューとして表示されます。同時に、フィット感をパーセンテージで表示します。ジャストサイズが100%です。
このサイズ調整が、アステッドコーキンの魅力と言えるでしょう。送ったスーツと比較してオーダースーツの着心地をどうしたいのか、ユーザー自身がフィッティングを考えることができます。細めやゆったり、余裕の有り無しという感覚はユーザーごとに異なりますので、ユーザーが着用したスーツを元にするのです。
調整可能な期間内にサイズを調整したら、あとは到着を待つだけです。
オーダースーツを試着する
こうして約1カ月後、待ちに待ったオーダースーツが到着しました。出来映えは「さすが!」の一言で、そのクオリティの高さがよくわかります。
慣れ親しんだスーツを元にサイズを調整しているだけあって、「胸周りはちょっと余裕を持たせたい」「ウエストは細めにしたい」といったフィッティングも想定したとおりに仕上がってきました。
なお、このスーツはアステッドコーキンのBLOGで紹介されています。細かなディテールを見てみたい方はこちらも参考にしてください。
スーツを送る必要があるため、アプリを利用した採寸や来店採寸と比べると多少日数は必要になりますが、そのぶん完成したスーツの着用感は非常に快適です。タイトなサイズ感で作る場合はとくに微調整が難しいものですが、アステッドコーキンのスーツは細く見えつつも着づらさを感じさせません。着用後のフォルムからスーツの美しさがはっきりと現れ、価格以上の価値を感じることができるでしょう。
なお、出来上がったスーツは、初回注文時のみ到着後3日以内に「お問い合わせフォーム」より連絡すればお直しを依頼できます。着用後はすぐに試着しましょう。
今回は、「アステッドコーキン」で2ピーススーツをオーダーする流れをご紹介しました。
新型コロナウイルスの流行が続く中、スーツのオンラインオーダーを行うアパレル店は増え続けています。この流れはコロナ禍が収束に向かっても、もはや変わることはないでしょう。アステッドコーキンはこのアパレル業界のオンライン化に合わせ、働き方改革も推し進めたいとしています。
これまでアパレル業界の労働環境は決して良いとは言えませんでした。価格を下げるために大量生産された多くの衣類が、時期を過ぎると投げ売りされ、そしてその多くがだれも袖を通さないまま廃棄されます。またそんな業界の末端で働くアパレル店員の賃金や労働環境も恵まれているとはとても言えませんでした。
アステッドコーキンは、地方に拠点を構え、オンラインオーダーという業態を取ることで、そのような無駄を発生させることのないサービスを実現しています。また完全週休二日制を導入し、従業員がアパレルの仕事をしながらも私生活を充実させられるようにしているそうです。これは、SDGsの達成にも繋がる取り組みといえるでしょう。
帯広市から発せられた新しいオーダースーツは、これからどのような広がりを見せるのでしょうか。期待を寄せつつ見守っていきたいと思います。