ビジネスシーンだけではなく日常生活でもよく耳にする「適応」という言葉。きちんとした意味を理解していますか? 本記事では、適応の意味や使い方をご紹介します。

また、「適用」との違いや使いわけ、英語表現もあわせて解説。適応という言葉が入った「適応障害」についても説明します。

  • 適応とは

    「適応」の意味や「適用」との違いを解説する記事です

「適応」とは

適応は「てきおう」と読む言葉です。ここでは、適応の意味や使い方について解説します。

■適応の意味

適応はその場の環境や条件によく当てはまることを指します。生物の性質や習性が外部環境に適した状態であることや、長い年月をかけて適するように変化する現象も適応です。

人間の場合は、外部環境に適するために行動や意識を変えていくことも適応となります。

■適応の使い方・例文

ここでは、適応を使用した例文をご紹介します。

・社会人生活に適応できている気がする

・あの人は適応能力が高いから、どこに行っても活躍できている

・フロリダの在来種のトカゲは木の頂上で生活するという環境に適応するため、体を変化させた

・愛用していたアプリがアップデートされた。まだ、新しい仕様に適応できていない

・心身の不調が続いたため病院を受診したら、適応障害と診断された

■適応の類語・言い換え

適応は次の言葉が類語・言い換えになります。

慣らす、溶け込む、即す、即する、適合、同調、順応、即応、対応、照応など。

  • 適応とは

    適応はその場の環境や条件にうまく当てはまることを指します

「適応」と「適用」の違い

適応と響きやニュアンスが似ている言葉に「適用(てきよう)」があります。ここでは、「適応」と「適用」との違い確認しておきましょう。

■適用の意味

「適用」の意味は「当てはめて用いること」です。規則や法律などを、人や事例に当てはめて用いることを指します。

■適応と適用の違い

適応はその場の環境や条件に当てはまることや、適するように変化することです。一方、適用は規則や法律の内容に人の行動や物事を当てはめることです。「適用」はすでにあるルールが主軸になります。

適応→自分が環境や条件に合わせている・変化している場合に使う
適用→行動や物事をすでにあるルールや条件に合致させる場合に使う

■適応と適用を使いわける方法

適応と適用を使いわける方法は次のポイントに注目するといいです。そこでもう一度適応と適用の意味を確認しましょう。

【適応】
その場の環境や条件によく「当てはまる」こと

【適用】
規則や法律など事例に「当てはめて用いる」こと

上記を確認すると、「当てはまる」なら適応が使えます。環境に適するために変化することも適応なので、「慣れる」という言葉で置き換えるとわかりやすいです。

また、適用の「当てはめて用いる」は「当てはめられる」という言葉で置き換えると理解できます。

■適応と適用の使いわけ例文

下記でご紹介する文章の1と2はどちらが正しいのかみてみましょう。

【例文1】
1. 私たちは時代の変化の波に「適応する」必要がある
2. 私たちは時代の変化の波に「適用する」必要がある

上記の例文を「慣れる」や「当てはめて用いる」に置き換えてみると、

  1. 私たちは時代の変化の波に「慣れる」必要がある
  2. 私たちは時代の変化の波に「当てはめて用いる」必要がある

1と2では、1が正しいことがわかりますね。例文1は「適応」を使うのが正解です。

【例文2】
1. どの条件を「適応」するかによって問題点が変わる
2. どの条件を「適用」するかによって問題点が変わる

上記の例文を「当てはまる」や「当てはめて用いる」に置き換えてみると、

  1. どの条件を「当てはまる」(する)かによって問題点が変わる
  2. どの条件を「当てはめて用いる」(する)かによって問題点が変わる

1と2では、2が正しいことがわかりますね。例文2は「適用」を使うのが正解です。

  • 適応と適用の違いを確認

    適応と適用の違いや使いわけ方を覚えましょう

「適応」の英語表現

適応を使いこなすために、ここでは、適応の英語表現をご紹介します。外国語ではどのように表現されるのかを、例文とあわせてみていきましょう。

■適応の英語表現

適応を英語で使う場合は、「adjust」や「adaptation」で表現できます。

英語: I've been adjusting to my new life
意味: 新しい生活に適応してきた
英語: He's so adaptable, I envy him
意味: 彼は適応能力が高いから、羨ましい
  • 適応の英語表現

    適応の英語表現

「適応障害」とは

最近は、適応という言葉を聞いて「適応障害」を思い浮かべる人も多いでしょう。「適応障害」とは、特定の状況や環境が耐え難いストレスとなり、気分や行動、体調に症状が現れることです。

特定の状況や環境は、転属や転勤、人間関係など個人によって異なります。

■適応障害の症状

適応障害で現れる症状は多様です。気分や行動面、体調面でさまざまな症状が現れます。

【気分】
不安、緊張、焦り、抑うつ気分、イライラ、落ち込み】
【行動面】
喧嘩、無断欠席、暴飲暴食、無謀な運転】
【体調面】
頭痛、めまい、汗をかく、どきどきする、倦怠感、集中力の低下

■適応障害になりやすい人の特徴

適応障害になりやすい人の特徴は次の通りです。自分が当てはまるかどうか、家族や友人、同僚が当てはまっていないかチェックしてみましょう。

・傷つきやすい
・完璧主義・徹底的にやる
・責任感が強い
・几帳面・生真面目
・切り替えるのが下手
・人目や他人からの評価を気にする
・頼まれたら断れない
・自分ではなく周りを優先する
・人の気持ちや周りの状況を読み取れない

■適応障害の人への接し方

適応障害という病気を深く理解して接することが、苦しんでいる人の心を和らげることにつながります。

・話を聞く
まずは、本人の話を聞き気持ちに寄り添ってあげることが大切です。不安や恐怖、イライラしている原因をじっくりと聞いてあげましょう。たとえ話のつじつまが合わなくても途中でさえぎるのではなく、ただ目をみてうなずくことがポイントです。

本人が話をしたがらない場合は、「話したくなったらいつでも声をかけて」と伝えてあげてください。

・かける言葉に注意する
本人の話を聞いている最中などは、かける言葉に気をつけてください。次のような言葉を口にしないよう注意しましょう。

・がんばって、がんばれるよ
・どうしてそうなっちゃったの?
・まだ治らないの?
・早くよくなるといいね
・気合いが足りないね
・心が弱い

・休学・休職中の人への接し方
干渉し過ぎず、ご自身の生活を保ちながら、本人を温かく見守ってください。食欲が出てきた・活動量が増えてきた・学校や職場の話題を本人がするようになったら、回復の兆しといえます。様子をみて主治医などの専門家へ伝えておきましょう。

・在学中・在職中・復帰後の接し方
励ましや否定的な言葉を避けます。初めから以前のような活動や作業を期待するのではなく、本人の状態に応じた活動の許容量を専門家と相談しながら、どの程度の業務負荷を与えるのか決めていきましょう。

本人が必要なときに休息を取りやすい勉学・業務の態勢を整えることも必要です。食事会や飲み会に誘う場合は、本人が参加したくないときには簡単に断れるような誘い方をしましょう。

「もう大丈夫」といった本人の言葉をそのまま信じるのではなく、雑談などをしながら様子を見守っていきましょう。

  • 適応という言葉が使われた症状に「適応障害」がある

    「適応障害」は状況や環境がストレスになり心や体にあらゆる症状が出ます

適応は環境や条件にうまく「当てはまる」こと

「適応」はその場の環境や条件にうまく「当てはまる」という意味の言葉です。また、性質や習慣を適するように変化させることも「適応」となります。適応と似ている言葉に「適用」がありますが、「適用」は規則や法律に「当てはめて用いる」という意味です。

ふたつの言葉の意味をよく理解し、正しい使い方を心がけてください。英語表現も参考にして、適応を使いこなしましょう。

【参考資料】
こころの耳「ご家族にできること