コーレルは、傘下の米Parallelsが、Mac上でWindowsなどを動作させる仮想マシン(VM)環境「Parallels Desktop 17 for Mac」を8月10日から販売開始することを発表した。Intel版とM1プロセッサー版が1つになったユニバーサルバイナリとして提供され、両環境で今秋登場予定の最新OS「macOS 12 Monterey」やWindows 11も動作する予定だ。

  • Parallels Desktop 17 for Mac

M1 MacでWindows 11が動作

2006年にIntel CPUを採用したMac向けに最初のバージョンが登場して以来、再起動なしにVM上でWindowsを動作させる手段として、多くのMacユーザーが愛用してきたParallels Desktop。前バージョンである16.5でM1プロセッサー搭載Macを正式サポートしたが、最新パージョンでは、さらにM1プロセッサーへの対応が進化している。

Parallels Deskotp 17 for Mac(以下、バージョン17)では、AppleおよびMicroSoftと協力し、今秋登場予定の次期macOS「macOS 12 Monterey」とWindows 11をサポート(Windows 11正式リリース後を予定)。もちろんWindows 10は完全サポートしている。Intel Macのみならず、M1 MacにおいてもWindows用アプリの動作が可能になる。また、全体的な最適化により、パフォーマンスおよびグラフィックス性能が向上し、デスクトップアプリやビデオ、ゲームでの挙動が改善している。

  • ややわかりづらいが、M1 Mac上のVMからM1 Macのバッテリーステータスが確認できるようになるなど、互換性はさらに向上している

バージョン17はIntel版およびM1プロセッサー版のバイナリが1つのパッケージに収録された「ユニバーサルバイナリ」方式で提供され、1つのアプリで両環境に最適化された状態で利用できる。M1 Mac用のバイナリについては、実に50人年もの工数をかけて開発され、ユーザーからはIntel版とM1版の違いがわからないレベルになっているという。

ただしCPUアーキテクチャの違いから、ゲストOSおよびホストOSには多少の違いがある。Intel版はホストOSがmacOS High Sierra(10.14)、Mojave(10.15)、Catalina(10.16)、Big Sur(11)、Monterey(12)となる一方、M1 MacではBig SurとMontereyのみ。またゲストOSは、Intel版が非常に多彩なOSをサポートするのに対し、M1 Macでは限られたバージョンのOSしかサポートしない。

ホストOS
Intel版 M1版
Monterey Monterey
Big Sur Big Sur
Catalina
Mojave
High Sierra
ゲストOS
Intel x86_32およびx86_64 ARM64
Windows Mac Linux Windows Mac Linux
Windows 11 Monterey Ubuntu Windows 11 Monterey Ubuntu
Windows 10 Big Sur Fedora Windows 10 Fedora
Windows 8 Catalina CentOS Debian GNU
Windows 7 Mojave Devian GNU Kali
Windows XP High Sierra Mint
Server 2019 Sierra Red Hat
Server 2016 El Capitan Suse Linux
Server 2012 Yosemite Kali
Windows Vista Mavericks
Windows 2000 Mountain Lion
+ Boot Camp Lion

また、VM上のWindowsで動作するアプリの互換性だが、M1版のバージョン17上で動作するWindows 10 on ARM Insider Preview版では、ほとんど全ての32bit x86アプリが動作し、64bit版 x86アプリにおいても多くが動作しているものの、互換性は完全ではないとのこと。ただし、これはARM版Windowsが搭載するx86→ARM64のバイナリ変換技術「Dynamic Binary Translator」によるものであり、現在もMicrosoftによる改善が続いているため、同技術が搭載されるWindows 11の正規リリースまでには、より互換性が向上されている見込み。もっとも、ARMネイティブ版のWindowsアプリが増えれば、x86版をバイナリ変換して動作させる必要自体がなくなるだろう。

パフォーマンス面では、OpenGLのパフォーマンスが最大6倍向上したほか、2Dグラフィックも25%高速化。WindowsおよびLinuxのレジュームも最大で38%高速化している。また、Intel MacではVMのネットワークパフォーマンスが最大60%高速化しているほか、M1 MacではWindows 10 Insider Previewの起動が最大33%、ディスクパフォーマンスが最大20%、Direct X 11のグラフィックパフォーマンスが最大28%、それぞれ高速化している。

また、VMにとって最適なリソースの割り当てを診断し、アドバイスを提供する「自動リソースマネージャ」が搭載された。自分がVMにどれくらいメモリやプロセッサ数を割り当てるべきかわからない初心者にとって心強い機能になるだろう。

  • マニュアルモードにすると、リソースの割り当てに対するアドバイスが表示される

細かいところでは、VM上のWindowsアプリとMacアプリとの間でドラッグ&ドロップによるコピー&ペーストが実現しており、これまで以上にMacとWindowsの違いを意識せずに使えるはずだ。

  • Coherenceモードにおいて画像やテキストのVM間のドラッグ&ドロップを実現した

販売形態は従来と同じく永続ライセンスとサブスクリプションライセンス(1年)に分かれており、通常店舗用パッケージと、Parallelsオンラインストアからのダウンロード販売も行われる(アカデミック版およびBusiness Editionのボリュームライセンス価格は要問い合わせ)。基本的に前バージョンから価格は変わっていないが、店頭向けの「乗り換えアップグレード版」がなくなっているほか、Apple Store専用パッケージがなくなっている。

  • 店頭販売用パッケージ。Pro版および生協版にはラベルが付いている

  • Parallelsオンラインストア販売

Parallel Desktop 17 for Mac 通常エディション
新規および更新サブスクリプション 8,345円
新規永続ライセンス 9,818円
旧バージョンの永続ライセンスから永続ライセンスへのアップグレード 5,204円

Parallel Desktop 17 for Mac Pro Edition
新規および更新サブスクリプション 年間9,818円
任意のエディションからのアップグレード 5,204円

Parallel Desktop 17 for Mac Business Edition
新規および更新サブスクリプション 年間9,818円

  • 店頭販売製品

Parallel Desktop 17 for Mac 通常版
新規永続ライセンス 10,000円

Parallel Desktop 17 for Mac 生協版
新規および更新サブスクリプション 年間4,800円

Parallel Desktop 17 for Mac Pro Edition
新規および更新サブスクリプション 年間10,000円

なお、Parallelsのウェブサイトで配布されている「Parallels Desktopトライアル」から、フル機能を14日間、無償で利用可能。このとき、Windows 10のトライアル版を併用することで、無償でWindowsの動作を確認できる。Mac上でWindowsアプリを動かしたいが、動作速度などに不安がある人は、事前にトライアル版を利用してみるといいだろう。