米労働省が2021年8月6日に発表した7月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数94.3万人増、(2)失業率5.4%、(3)平均時給30.54ドル(前月比+0.4%、前年比+4.0%)という内容であった。
(1)7月の米非農業部門雇用者数は前月比94.3万人増と市場予想(87.0万人増)を上回り、前月の93.8万人増(85.0万人増から上方修正)から増加幅が拡大した。業種別では引き続きレジャー・サービスの増加が目立っており、38.0万人増と全体の4割を占めた。雇用情勢を基調的に見る上で重視される3カ月平均の増加幅も83.2万人へと上昇した。
(2)7月の米失業率は5.4%と前月から0.5ポイント改善して2020年3月以来の低水準となった。市場予想は5.7%だった。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は前月から0.1ポイント上昇。フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は9.2%と、前月から0.4ポイント改善した。
(3)7月の米平均時給は30.54ドルと、前月から0.11ドル増加(前月比+0.4%)して過去最高を更新。前年比でも4.0%と高い伸びとなった。人員確保に向けて企業による賃金引き上げの動きが見られる中、伸び率は市場予想(前月比+0.3%、前年比+3.6%)を上回った。
米7月雇用統計は、非農業部門雇用者数、失業率、平均時給が揃って予想以上の好結果となり、米連邦準備制度理事会(FRB)によるテーパリング(量的緩和の段階的な縮小)に対する市場の期待を再燃させる事になった。
8月に入り、「2022年の利上げに向けた体制を整えるため、早期にテーパリングに着手し、迅速に進める必要がある(ウォラーFRB理事)」、「利上げに必要な条件は22年末までに満たされると確信している(クラリダFRB副議長)」などと、FRB高官からタカ派発言が相次いだ事で再び高まりつつあった市場のテーパリング期待は、米7月雇用統計の好結果を受けてさらに高まった。7月米連邦公開市場委員会(FOMC)後に一時1.12%台へと低下していた米10年債利回りは1.3%台を回復。ドル/円も一時の108.70円台から110.30円台へと上昇した。なお、FRBのテーパリング開始を巡っては8月26-28日のジャクソンホール・シンポジウムでのパウエルFRB議長の講演が注目されている。