うだるような夏日が続く今日この頃。いつもならサマーバカンスに浮かれたいところですが、時は2021年のコロナ禍。歴史に残る自粛の陣まっただ中です。このフラストレーション、ヒヤッとザブッと洗いながしてみませんか? 東京都内で、最近テレビでも取り上げられる「リバーボード」を体験してきました!
川をダイレクトに楽しめる「リバーボード」
新宿駅から約1時間20分。JR青梅線 「御嶽駅」にやって来ました。目指したのは駅から徒歩2分(助かる)にある、「リバーボードクラブ」です。
迎えてくれたのは「リバーボードクラブ」代表の菅原洋平さん。
コヤナギ:川でボディーボードのようなものに乗る遊びには"ハイドロスピード"もありますが、リバーボードとは何が違うんですか?
「同じです。ハイドロスピードはフランスで発祥したときの名前なのですが、いまは商標の関係で世界的には使えません。日本では持ち込まれたときの名前のまま広がっている、という感じです。英語圏では"リバーボーディング"と呼ぶことが多く、僕たちも川の板、リバーボードと呼んでいます」
コヤナギ:リバーボードってどんなスポーツですか?
「ひとり用のボードで浮力を得つつ、足にフィンを装着して推進します。川の流れにうまく"動かしてもらって"、川の楽しさをダイレクトに感じられるスポーツだと思っています」
コヤナギ:日本で使われているボードは黄色い浮き輪状のものが多いようですが、こちらでは船みたいな形のボードを使っていますね。なぜこの形状なんでしょうか。
「これは僕の手作りです」
コヤナギ:え!?
「浮き輪のようなボードは日本で開発されたもので、優れた安定力がありますよ。しかし世界大会では、自分が表現したい動きに合わせて作られたボードを使っている選手もいます。ボードを選べば、ゆったりと川下りを楽しむこともできますし、スラロームのように激流をくぐり抜けたり、バックウォッシュという逆流ポイントで"リバーサーフィン"に挑戦することもできます。そんな"ギア"の追求も大切にして、ボードのオーダーメイドやワークショップも行っています」
さっそく装備&実技へ
リバーボードに必要な装備は、水着とゴーグル(川の中を覗けて楽しいのであると便利)以外はレンタルできます。上からヘルメット、ライフジャケット、ウェットスーツ、ニーパッド。これに、手を保護するグローブとウェットブーツを装着。フィンと自分のボードを担いで川上まで500mほど歩きます。ボードの重さは3キロほど。他のリバースポーツとくらべると、ずいぶんお手軽です。
「準備運動が終わったら、そのまま川に入ってみましょうか!」
やったー、と苔に滑る足元に気をつけながら川に入ると……つっめたい! なにこれ、海の比じゃない。山の水は冷たいっていうけど、真夏の川でもこんなに冷たいんだ、とおどろきます。水中メガネを装着し、川の中をのぞき込むと、あ、いました! 白くて小さい川魚!!
「この季節だとイワナ、ヤマメ、ニジマスなんかもいますかね」
水中を覗いたり、浮いたりして川に親しみ、今度は川の流れに入って抜ける練習をして行きます。見ている方向に流されていくので、自分がどこに行きたいか見失わないことが大切です(人生みたいですね)。
何度か練習をしたのち、いよいよボードで川下りへ! ボードの奥に肘を入れ、上半身をボードに乗せてフィンキックで進みます。といっても、川は常に流れているので前進するぶんにはほとんど蹴らず、水面にフィンを伸ばしているだけで安定力が生まれます。
「一番大切なのは、絶対に川の中で立たないこと。川の中は深さも岩もまちまちです。ニーパッドはつけていますが、無理に足を降ろせばひざを打って大けがなんてこともあります。そしてパニックにならないこと」
やがて、スラロームカヌーの練習用ゲートがたくさんぶら下がっている激流ポイントにやって来ました。ワッシャワッシャと水が跳ね回り、ボードはアメリカの古い絶叫マシンみたいにポンポン飛び跳ねます。ひっくり返っても大丈夫。すぐにボードがくるんと元に戻って、それすら楽しい。
「岩が近づいても岩の方ばっかり見ていちゃダメですよ! 見ている方に進んでいきますから、抜ける方を見るんです。どうしても岩に近づいてしまったら、反対側へ避けずに寄せていきましょう。水の力で押し戻してくれます」
水の力で、押し戻す? どういう意味か想像していたら、うっかり岩に近づいてしまいました。わわ、ぶつかる!? と思うと、ボードはすんでのところでぬるりと岩を避けました。まるで透明なゼリーでもあるように。うわぁ、なんだ、今の感覚! これが"川に動かしてもらう"ってこと?
やがて川も流れが緩やかなところへ。鏡のような水面に鳥の声が聞こえます。でも、ボードの下を流れていく川底の速さを見ると、すごいスピードで進んでいることが分かり、川の流れってやっぱり早い、と思いました。
少しだけ先頭を泳がせてもらったときのことが、忘れられません。
川辺のうっそうとした木々に見守られ、水面で太陽がきらめき、風と鳥の声が全身を包みました。まるで川を流れる木の葉に乗った、妖精にでもなった気分です。そのとき、水面ギリギリを小さな青い個体が飛鳥。カワセミです。わたしを一瞥すると、水面の岩についっととまりました。ここは……東京都内なんだよね?
最近、川の魅力に気がついたというカワマミコさんはこう話します。
「自分では入れないような流れの川にも、リバーボードだと飛び込んでいけるのが楽しかったです! 川の流れを体で直接受けるので、自然を全身で感じ、泳がなくても川が自然に流してくれるので、浮かんでいれば進んでいく。激しいスポーツかと思っていましたが意外とゆったり楽しめました」
この日、わたしたちが体験したのは「1日コース」。午前中は川に親しんでリバーボードの基本を習い、午後は3キロほど下って自動車で帰ってきました。体感速度はあっという間で、まだまだ泳げるって気持ちでいっぱい。でもそれは、アドレナリンの成せる技だったようです。翌日は全身筋肉痛。酷使したふくらはぎはもちろん、ずっと上体を支えていた脇腹もプルプルします。
それにしても、川で感じた一体感が、昨日のこと、東京都内での体験だとは信じられません。リバーボードは通年行われ、夏のオンシーズンもいいですが、秋冬は水量が減りスポーツ性が増すそう。またレッスンを中心に実施しているとか。フラストレーションを洗い流したくなったら、都内でリバーボードはいかがですか?
▼Information
リバーボードクラブ
住所:東京都青梅市御岳本町266 斉藤マンション101号室
JR青梅線 「御嶽駅」徒歩2分
公式サイト:https://riverboardclub.com/
※対象は身長140cm以上の小学校高学年以上