レンズ交換式デジタルカメラといえば、やはりフルサイズが話題の中心です。しかしながら、APS-Cフォーマットなどのカメラも決して人気がないわけではありません。フルサイズより手に入れやすい価格や手ごろな大きさなどを好み、愛用する人は多くいます。
タムロンが6月末に発売した「11-20mm F/2.8 Di III-A RXD(Model B060)」は、ソニーEマウント用のAPS-Cサイズ対応の超広角ズームレンズ。35mm判換算で16.5-30mm相当の画角を誇ります。ズーム全域で開放F2.8としながら小型軽量に仕上げた鏡筒もポイント。今回はソニーのフルサイズミラーレス「α7C」を使用し、APS-Cサイズにクロップ(1,032万画素相当)した画像で実力をチェックしました。
F2.8通しの超広角ズームとは思えないコンパクトさ
まず手にして驚かされるのが、レンズの大きさと重さです。長さ86.2mm、最大径φ73mm、質量335gと、開放F2.8の大口径超広角ズームとしてはとてもコンパクト。フルサイズ用のF2.8超広角ズームとは比べるまでもありません。ソニーのAPS-Cミラーレスはコンパクトな設計なので、ちょうどよい大きさや重さといえます。
似たようなスペックのレンズとして、ソニー純正では「E 10-18mm F4 OSS」があります。こちらは全長70.0mm、最大径φ63.5mm、質量225gと、タムロン製品と比べてもさらにひと回り小型軽量ですが、開放値はF4とタムロンよりも1段分暗くなります。本原稿執筆時点での実売価格は、タムロンが88,000円前後、ソニーが83,000円前後ですので、選択に大いに悩むところと思われますが、明るさを優先させるならいうまでもなく本レンズとなるでしょう。
鏡筒はスイッチ類などなく、ズームリングとフォーカスリングのみのシンプルな外観です。シェイプもスマートで、どんなカメラにも似合いそうだと感じました。付属のレンズフードも鏡筒との一体感があり、見た目の雰囲気も上々です。フィルター径はφ67mmとなります。
描写性能は不満なし、タムロンらしく接写にも強い
気になる光学系ですが、レンズ構成は10群12枚。高画質を得るためのガラスモールド非球面レンズや異常低分散レンズなど、光学特性に秀でた5枚の特殊レンズが含まれます。一般に、ズームレンズのように光学設計上負荷がかかりやすいものほど、収差と呼ばれる写りに悪影響を及ぼす特性が現れやすいのですが、今回撮影した作例を見る限り不満のない描写といえます。
カメラ側のレンズ補正機能が働いていることもあり、被写体のエッジなどに現れることの多い色のにじみや、直線が不自然に曲がって写るディストーションなども良好に補正。周辺部もしっかりと結像しており、被写体が不鮮明に写ることもありません。それはズーム全域で変わることがないのも、このレンズのすごさのひとつと述べてよいでしょう。
現代のレンズらしく絞り開放から解像感は高く、クリアな写りを見せます。積極的に絞りを開いた撮影が楽しめます。レンズ内手ブレ補正機構がないため、絞りを開いて少しでも速いシャッターが切りたいときも有利です。
タムロン独自のステッピングモーターにより、AFは高速かつ高精度な動作です。静粛性にも優れており、作動音が気になることもありません。AFの合焦後、MFによるピント合わせが可能なダイレクトマニュアルフォーカス(DMF)に対応しているのもうれしい部分。じっくり被写体と対峙し、緻密にピントを合わせたいときなど重宝します。最短撮影距離はワイド端0.15m、テレ端0.24m。特に、ワイド端では被写体にグッと寄って超広角レンズならではの極端な遠近感を活かした撮影が楽しめます。しかも、絞り開放からF5.6までの絞り形状は円形としており、小さいながらも丸い玉ボケが期待できそうです。
本レンズは現在のところソニーEマウント専用となりますが、ニコンや富士フイルムをはじめ、APS-Cフォーマットのミラーレスカメラを出している他社のマウントにも対応してほしいレンズだと感じました。