近年よく聞く「自己肯定感」という言葉。欠点があろうと、そのままの自分でOKと思える感覚を言います。自己肯定感が低いと、常に他人の顔色をうかがったり、生きている意味が感じられなかったり。
そんな“生きづらさ”から抜け出す方法について、秋葉原内科saveクリニックでメンタルヘルスに携わる「Dr.ゆうすけ」こと、鈴木裕介さんに話をうかがいました。
Q.自己肯定感を得るにはどうしたらいいですか?
自己肯定感を育むには、「自分」「他人」「世界」への「基本的信頼」が不可欠です。特に大切なのが、「自分を一方的にジャッジせず、自分の欠損や欠点を認めてくれる信頼できる他人」との出会い。信頼できる他人との間で「こんな自分でも受け入れてもらえる」という経験を積み重ねない限り、人はなかなか「何はなくとも、自分は自分であって大丈夫」と思えるようになりません。
本来なら、親や家族が「信頼できる他人」の役割を担うことが望ましいですが、自己肯定感が低い人は養育者とのコミュニケーションに安心を感じられないような環境であったケースが多いです。まずは身近にいる「この人なら大丈夫そう」という人に、自分の気持ちを話すことから始めてみましょう。
友人や先輩など、実際に「近い相手」に話すことが難しいという方は、カウンセラーなどを頼るのも手です。少し「遠い相手」のほうが安心する、という方もけっこういます。どんな相手が適しているかを見極めるために、僕が尊敬する先輩に教えていただいた「8つのポイント」を挙げたので、参考にしてください。
Q.信頼できる人と出会えなかったらどうすればいいでしょうか?
僕は医師として悩みを抱えた患者さんと日々向き合っていますが、マンガやアニメ、ゲームといったコンテンツに救われたケースが少なくありません。自分と似たような境遇のキャラクターがどのようにその境遇から脱却するかを追体験することで、“新しい視点”と“救い”が得られます。
また、作品世界に没頭することで、今は考えたくない「余計なこと」から切り離されて癒しを得ることもできます。患者さんの人生に全く違った光の当て方ができるコンテンツの力に、僕は大きな可能性を感じています。
他にも、“推し”バンドができて、そのライブに行くことで癒された知人もいます。出雲大社の荘厳さに打たれて「自分は世界の一部であり、世界は自分を受け入れてくれる」と感じられたという患者さんもいました。信頼できる人に出会えなかったとしても、「世界とのつながりを感じられる何か」と出会えれば、そこを足掛かりに、“生きづらさ”から抜け出すことはできると思います。
Q.生きづらさを感じる人間関係を変えるにはどうしたらいいですか?
自分が今の状態を望んでいるのかどうかを、しっかり問うことです。今の状況を嫌だと思ったら、「これはやはり嫌なんだ」と自分の中で認める。たとえば、「上司に高圧的な態度で指示された」「友人が挨拶を返してくれなかった」など、違和感を覚える対応をされた時、自分の中にほんの数%でもつらい、悲しい気持ちがなかったか確かめてみてください。
こういう場合、「自分の態度に問題があったのでは?」と考える人も多いでしょうが、“どういう態度や言葉で接するべきだったか”は技術論です。より大切なのは、関係性の中で感じ取った感情や、快・不快の感覚です。怒りや悲しみなど、たとえネガティブなものであっても、自分の中から生じたフィーリングであれば、それは真実です。
無かったことにせず、しっかりと汲み上げて、まずは認めてあげるところからはじめましょう。
自分の感情に気づけるようになってきたら、次の段階では、その「気持ちを吐露」してみましょう。いきなり相手に「つらいです」と伝えなくても、まずは「ぼんやりとした言葉にする」「ノートに書き出す」などでいいと思います。
こうした訓練は徐々に慣らしていくことが大事です。できれば、コーチのような役割になる「信頼できる大人」がいてくれたほうがうまくいきやすいでしょう。そもそも、生きづらさを感じている人というのは、あまりにも不条理な体験が多かったために、「こんなにつらいことばかり起こるのは、全部自分が悪いからだ」というストーリーに沿って、生きてこざるを得なかった可能性が高いです。
そうした“思考のクセ”は、自分で把握するのは難しい。「こういう筋道で、自分が悪いと思わされる状況に追い込まれたよね」と客観的に指摘してもらうことは、自己認識を改める機会になります。まずは、自分の感情を自分のものとしてとらえなおしていくこと。それが、自分の人生を生きることにつながります。
Q.「嫌だ」と感じる相手には、どう対応したらいいですか?
友人、上司など、相手との関係性によって対処法は変わってくると思います。僕なりに考えた対処法を下図に紹介しておきます。参考にしてください。