「一本締め」は送別会などで最後の締めとして行うことの定番です。しかし、社会人経験が浅い人ほど、一本締めの意味や由来などはわからずに、周りの空気を読みながら同じようにかけ声や打ち手を行っていることが多いでしょう。
また、「一丁締め」や「三本締め」など似たような状況で行われるものもありますし、地域による違いもあります。そこでこの記事では、「一本締め」の意味や正しいやり方、「一丁締め」など他の方法との違いについて紹介します。
一本締めとは
「一本締め」とは、手締めと呼ばれる手拍子のひとつです。手拍子を「3回、3回、3回、1回」を1セット行います。物ごとが無事に終わったことを祝って行われる日本の風習のひとつです。
会合の最後で行われることが多い
一本締めは会社の送別会や地区の集まりなど、宴会の最後に行われることが多いです。全国的に行われている日本の風習ですが、作法やリズムは地域によって異なる場合があります。
リモートワークを導入する企業が増えたりと、人が集まるシーンが少なくなっていることで、一本締めを行う機会は減少していますが、一般的なビジネスマナーとして覚えておきましょう。
一本締めの目的
一本締めの目的は、協力してくれた人に対して感謝の気持ちや敬意を表すことです。一人ひとりに挨拶をするかわりに、参加者全体が一緒になって行うことで、全員に対しての感謝や敬意が表現できます。
仕事への慰労やこれまでの感謝、今後の活躍への期待などを祈って、会合の最後の締めとして行うのが一本締めです。
一本締めでは「パパパン、パパパン、パパパン、パン」と、3回の柏手を3回繰り返すことで9回手を叩くことになります。9を漢字で書くと「九」です。この漢字に最後の1を加えることで、「丸」という漢字になり、集まりが「丸」くおさまったことへの感謝を示すこととして行われます。
一本締めの由来
一本締めをはじめとする手締めのルーツと言われているのは、日本の古い書物である古事記に登場する国譲り神話です。
大国主命(おおくにぬしのみこと)が天照大神から、出雲の国を譲るように言われて、長男の事大主神(ことしろのみこと)に伝えたら、柏手を打って了承したという話がありました。このことから、手締めのルーツは日本の神様である事大主神だという説があります。
一本締めのやり方を解説
一本締めを担当するのは宴会の幹事やその場の責任者であることが多く、決まったやり方があります。ここでは、一本締めのやり方やかけ声などを紹介します。
「一本締め」の前に口上や挨拶が必要
一本締めをいきなり始めようとしても、全員で行いますのでなかなかそろいません。宴会の最後だと場が賑やかになっている中、場の全員に参加してもらうためにも、まずは口上や挨拶を行いましょう。
「一本締め」を行う
口上を述べた後は、その後に「それでは皆さま、お手を拝借」などのかけ声を行いましょう。かけ声は堂々と威勢よく行うのがポイントです。
その後に、「いよぉ~」と音頭をとって、「パパパン、パパパン、パパパン、パン」と全員で手を叩きます。
最後の挨拶も忘れずに
全員で気持ちよく一本締めを行った後は、幹事や代表者が「ありがとうございました」と言って感謝の気持ちを表しましょう。面倒に感じる人もいるかもしれませんが、打ち手だけで終わると何となく締まらない雰囲気になってしまいます。
とくに幹事や代表者の人は、一本締めの後無言で終わることのないよう気を配りましょう。
全員の拍手で終了
自分が幹事や代表者ではなく参加者である場合には、一本締めの後は拍手で終わりましょう。拍手をするのは幹事や代表者が「ありがとうございました」と言うタイミングです。
自分が若手社会人で、拍手のタイミングがよくわからなければ、周りの人を見て合わせるといいでしょう。
一本締めと同じ状況で行われる他の作法
一本締めなどの手締めは全国的に行われていますが、作法やリズム、やり方やかけ声は地域やシーンによって異なる場合があります。例えば名古屋で行われる作法のひとつが、「ですね」という意味を持つ方言「なも」を織り込んだ「名古屋ナモ締め」という手締めです。
ここでは、状況に合わせて行えるよう、代表的な手締めをいくつか紹介します。
三本締め
手締めの中で最もフォーマルな場で行われるのが三本締めです。「パパパン、パパパン、パパパン、パン」を3回行いますので、一本締めを3回行うことになります。
三本締めは、1回目は主催者へ向けての感謝の気持ち、2回目は来客や来賓へ向けての感謝の気持ち、3回目は不参加となった方への感謝の気持ちを表すものです。
他の手締めに比べて長く行われることもあり、比較的フォーマルな場で行われます。
一丁締め・関東一本締め
一丁締めも手締めのひとつで、関東一本締めと呼ばれることもあります。三本締めの省略形で、「お手を拝借」「いよぉ~」の後、全員で手を1度だけ叩く方法です。
主に日常的な打ち上げや飲み会など、比較的カジュアルな場で行われます。三本締めや一本締めに比べて軽くできますので、形式を取り入れたい職場での集まりで用いられることが多いです。
感謝の気持ちを一度の打ち手に凝縮することで、効率よく行えます。
大阪締め
大阪締めは大阪の地域色がよく出た手締めで、下記のような作法で行われます。
幹事や代表者:「打ちまーしょ」
パンパン(全員で打ち手)
幹事や代表者:「もひとつせ」
パンパン(全員で打ち手)
幹事や代表者:「祝(いお)うて3度」
パパンパン(全員で打ち手)
一本締め、三本締めなどに比べると人の声が多いです。台詞は大阪のどの地域なのかで多少異なりますが、おおむねこのような手順で行われます。
博多手一本
博多手一本は大阪締めが元になっていると言われているので、作法は大阪締めと似ています。
幹事や代表者:「よーお」
パンパン(全員で打ち手)
幹事や代表者:「もひとつ」または「まひとつ」
パンパン(全員で打ち手)
幹事や代表者:「祝(いお)うて三度」または「よてさん」など
パパン パン(全員で打ち手)
福岡地域では宴会の席や結婚式、お祭りなど、祝いの席などでよく行われます。
一本締めの英語表現
「一本締め」は日本の文化ですので、ひとことで表せる英語表現はありません。「ippon-jime」とローマ字表記にする以外の方法だと、下記のように細かいニュアンスまで伝える方法があります。
・Hand clapping (once in the rhythm of 3-3-3-1) done to celebrate the completion of the project.
上記を直訳すると、「プロジェクトの終了を祝うための拍手(3-3-3-1のリズムで)」となり、どうすればいいのかまでを細かく伝えられる言い回しです。
一本締めは職場の集まりでよく行われる! 社会人なら知っておこう
一本締めは、職場の送別会や忘年会など、飲み会の最後に締めとして行われる作法です。全国的に行われていますが、地域によっては一丁締めや大阪締めなど、異なる方法で締められることもあります。それぞれの地域やシーンの作法も押さえておきましょう。
一本締めの前には口上が述べられ、打ち手とともに行われるのが一般的です。いざ自分が仕切りを任された時にうまく進められるよう、この記事で紹介してきた一本締めの由来や意味を覚えておきましょう。