JR東海は4日、新幹線車両の台車の検査・修繕を行う大阪台車検査車両所(大阪府摂津市)に、廃車車両の部品等を利用して、整備の不備による台車の不具合等を再現し体感できる装置を製作し、これを教育設備として活用する「S-sense(エッセンス)」を新設したと発表した。
新幹線車両の台車は、車体を支持し軌道を走行する装置であり、安全に直結する非常に重要な装置となるため、JR東海ではこれまで台車の安全性を向上するための技術開発と新しい検査手法の導入に取り組んできた。これまでの取組みにより、車両不具合の発生頻度は低下したが、一方で社員の世代交代が進んだことにより、実際に不具合を扱った経験のある社員が少なくなっているという。
こうした中でも事故の発生を防止するため、不具合が発生するプロセスを可視化することで、ルールや基本動作が重要なことに対する社員の理解を深めることに取り組んでいる。この目的に沿って「S-sense」が新設されたという。
「S-sense」では、ルールや基本動作を遵守しなかった場合に発生する現象を実際の部品で再現する「作業本質エリア」(運転事故防止)、機械等での狭窄や重量物が落下する状況を実際の部品で再現し、作業に潜む危険を体感できる「安全本質エリア」(労働災害防止)の2つのエリアを設けた。
体感教育設備例としては、「作業本質エリア」でモーターの回転力を歯車装置に伝える部品「WN継手」の取付不良体感装置によって、歯車装置と車軸が円滑に回らなくなることを体感できるほか、「安全本質エリア」の車輪落下体感装置によって、約300kgの車輪を吊り上げる際に吊り具の掛かり方が浅い場合、少しの衝撃で車輪が落下する様子を再現しており、車輪が落下した際の恐ろしさも体感できるという。
訓練対象者は大阪台車検査車両所で新幹線車両の台車の検査・修繕に関わる社員および関係会社社員とされ、5月28日から稼働を開始している。