新型コロナウイルスが登場してから、「コロナが収束したら、食事に行こうね」といった約束を何度したことでしょうか。コロナ前、私たちは気軽にランチに誘い合い、終業後に飲みに行ったりすることで、インフォーマルなコミュニケーションを図ってきました。それが今では、不要不急の外出を制限され、外出先での飲食等が制限され、「オンライン飲み会」という言葉まで生まれました。
そして、企業では「従業員エンゲージメント」という言葉がよく聞かれるようになりました。そうした中、会話を引き出すための偶発的なコミュニケーションの重要性に気がついた多くの企業が、分散したチームとのコミュニケーションの場として、Web会議システムを使用したイベントを実施するようになりました。
このようなイベントを行う理由のもう一つは、従業員のWell-being向上のためでもあります。周りから邪魔されることなく集中して作業でき、通勤時間を業務に当てることができるなど、「常に働き続けられる」というテレワークの特質は、短期的には良い現象として捉えられてきました。しかし、パンデミックが長期化した今、燃え尽き症候群の原因となりつつあります。このような状況において、企業は常に従業員のWell-beingを考慮しなければなりません。
従業員が参加したいイベント作りの重要性
そして、パンデミックが長引くにしたがって、オンラインを通じた活動への興味関心が薄れ、結果的にイベントの参加率は減少傾向にあります。Web会議を主体とした取り組みはどこか不自然であり、対面時との感覚のギャップに従業員が疲れてしまったのかもしれません。
各イベントの目的を明確にしたうえで、従業員を飽きさせないコンテンツを提供し続け、従業員が「また参加したい」と思うオンライン企画には、参加する理由づくりが必要です。
ITのソフトウェアを提供するシトリックスでは、コロナ前から柔軟な働き方を提唱しており、働き方の選択肢として、テレワークやモバイルワークを提供してきました。そしてコロナ禍でも、全従業員がテレワークに切り替わってから約1年半の間、7月下旬の時点で15回のオンラインイベント開催、毎回25~30%の参加率を達成しています。
オンラインイベントをビジネス戦略として位置づけ、個人のライフスタイルの課題に切り込み、特別感のある演出をすることが、結果として、オンラインイベント継続の鍵だったと思います。以下が、シトリックスにおけるオンラインイベントのポイントです。それぞれのポイントについて、詳しく紹介していきましょう。
- (1)企業の大局的なテーマを掲げ(社会的に認知度の高いテーマを設定)、ビジネス戦略であるという位置づけを明確にする(従業員の成長につながる環境問題、女性雇用、ダイバーシティとインクルーションなど)
- (2)企業人そして個人としてのニーズ(仕事、暮し)従業員の根本的なニーズ(潜在的なニーズと合わせる・困っていること)を分析して、興味を後押しするブランド力のあるコンテンツを探す
- (3)企画自体に特別感を出す
(1)ビジネス戦略の一環としてプログラムを準備
1つ目のポイントは、企業が持つ大局的なテーマと連動させるプログラムに設計することです。お勧めは、最新の自社のサステナビリティレポートを徹底的に分析し、所属している企業がSDGsのどの領域にコミットをしているのかを把握します。ここから、従業員エンゲージメント企画のテーマを選ぶことで、会社の持続可能性な経営方針と合致することができます。
サステナビリティレポートがない場合、コアなビジネス戦略と合わせることでも応用が可能です。シトリックスの場合、コミットをしている領域は8つあり、「ジェンダー平等」、「飢餓をなくそう」、「貧困をなくそう」というテーマに沿って、国際女性デーを第1四半期の柱にしました。
国際女性デーの企画では、京都のチョコレート専門店「DariK」さんをお招きして、インドネシアで働く駐在員の方から、インドネシアの女性問題、フェアトレードではない新しいビジネスモデルの話をしてもらった上で、参加者の自宅に「DariK」のチョコレートを送付してチョコレートを味わってもらうことで、体験としてSDGsを感じられる設計にしています。また、ご家族で参加される方も多くいますので、小さな子供でも分かるような「絵になるコンテンツ」を用意することもポイントです。