雨模様(あめもよう)と聞くと、どのような天気をイメージするでしょうか。雨がぽつぽつと降っている、あるいは降ったりやんだりしている情景を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、これらの情景は、いずれも本来の「雨模様」ではありません。
本記事では、雨模様の本来の意味を解説するとともに、別の意味に解釈されている現状について整理しました。雨模様の類語や英語表現、例文なども紹介しますので、これを機会に雨模様の意味を把握しましょう。
雨模様とはどんな天気?
「雨模様」とは、今にも雨が降りそうな空の様子を表す言葉です。つまり、本来「雨模様」の表現を使う時点では雨は降っていません。しかし、近年では「雨が降っているらしい様子」あるいは「雨が降ったりやんだりしている様子」にも使うケースが見られます。
雨模様を「小雨が降ったりやんだりしている様子」と解釈する人は多い
2010年(平成22年)の「国語に関する世論調査」によると、「外は雨模様だ。」という文章を見て「小雨が降ったりやんだりしている様子」と解釈した人は47.5%と最多。「雨が降りそうな様子」は43.3%で次点でした。
雨模様という言葉を「小雨が降ったりやんだりしている様子」と解釈して使っている人の方が多い点には要注意です。実際に会話の中で雨模様が出てきた場合は、話し手がどちらの意味で使っているのか、前後の文脈などで確認しましょう。
雨模様の語源は「雨催(あまもよい)」
雨模様の語源は「雨を催す」という意味の「雨催」だと言われています。例えば、眠気を「催す」という場合、実際にはまだ眠っていない状態を指します。同じように「雨催」も、「これから雨が降りそうな様子」を表すのです。
「荒れ模様」も雨模様と同様「これから荒れる」という意味
ちなみに、天気予報などで耳にする雨模様と似ている「荒れ模様」も、実際に荒れているわけではありません。暗雲が垂れ込めて風が強くなってきた、雷鳴が聞こえてきたなど、これから荒天になりそうな場合に使う言葉です。
雨模様の使い方と例文
雨模様の使い方と例文を、正しい場合と誤っている場合に分けて解説します。
正しい使い方と例文
雨模様の正しい意味である「降りそうで降らない様子」を表現した例文は以下の通りです。
・雨雲が増えてきた。今にも降ってきそうな雨模様だ。
・今日は朝から雨模様なので、降ってこないうちに用事を済ませよう。
・雨模様の空なので、傘を忘れず持って出かけましょう。
誤った使い方と例文
雨模様の誤った使い方である「小雨が降ったりやんだりしている様子」を表現した例文は以下の通りです。
・どうやら雨模様なので、濡れるのが嫌で出かけるのを取りやめた。
・雨模様なので、ここ数日は外で洗濯物を干せない。
雨模様の類語と例文
雨模様の類語表現として、「雨が降りそうだ」と「雨が少し降っている」の両方を紹介します。雨模様では伝わりにくい場合、類語表現に言い換えて雨が降っているかどうかをより明確にできます。
「今にも雨が降ってきそうな空の様子」の類語
今にも雨が降りそうな様子を示す言葉は、雨模様以外にも「雨催い」「ぐずついた天気」「どんよりした天気」などがあります。
・今日は終日ぐずついた天気が続く。
・朝からどんよりした天気でスッキリとしない。
「雨が少し降っている様子」の類語
雨が少し降っている様子を示す類語表現としては「降ったり止んだり」「ポツポツと」「小降り」などがあります。これらの類語表現なら、雨が降っていることを明確に示せるので、雨模様の言い換え表現として利用するといいでしょう。
・今日は朝から雨が降ったり止んだりと落ち着かない天気だ。
・ポツポツとしてきたので傘を忘れないでください。
・今は小振りだけどもうすぐ止みそうだ。
雨模様の英語表現と例文
雨模様を英語で表現する場合は「It looks like rain」「signs of rain」「It is threatening to rain」などが使われます。これらの表現を使った例文は以下の通りです。
It looks like rain tonight.
(今夜は雨のようですね。)
Don't go out as it is threatening to rain.
(雨が降りそうなので、外出しないでください。)
Looking up at the sky, there are signs of rain.
(空を見上げると、雨の気配がします。)
いずれも「今にも雨が降りそうな様子」のときに使える表現です。
雨模様以外にも! 間違いやすい天気の表現
雨模様以外にも、天気を表現する言葉の中には意味を間違いやすいものがいくつかあります。ここでは、いくつか間違いやすい天気の表現をピックアップしたので、勘違いして覚えていないかどうか確認しましょう。
五月晴れ
五月晴れ(さつきばれ)は、本来5月の晴天のことを表す表現ではありません。ここでいう5月は旧暦の5月で、現在の暦では6月に相当します。つまり、本来の五月晴れとは「梅雨の晴れ間」を指す言葉です。
現在では、単純に5月の晴天を表現する際に使う人もいますので、文脈によってどちらの意味で使われているか確認しましょう。
小春日和
小春日和(こはるびより)は、春に使う言葉ではありません。小春日和は、晩秋から初冬にかけて見られる、暖かく穏やかな日のことを指す言葉です。季節が異なるため、間違って解釈しないよう注意しましょう。
にわか雨が降る
にわか雨とは「一時的に降る雨」という意味です。にわか雨にすでに「降る」という意味が含まれているため、「降る」という動詞を付けると意味が重複します。同じような天気の表現には「みぞれ」「にわか雪」などがあります。
満天の星空
「満天の星空」は、実は二重表現になっており、日本語的には誤りです。「満天」の天がそのまま空を表しているので、「空」が重複しています。正しい表現は「満天の星」です。
未明(みめい)
「未明」は、何となく深夜から夜明け前を指しているように思っている人も多いのではないでしょうか。しかし実際には、明確に時間が決まっており「午前0時から午前3時まで」の3時間を指す言葉です。
豪雨(ごうう)
非常に強い雨が降ると「豪雨」と表現していないでしょうか。では、豪雨と大雨の違いは何かを説明できますか?
気象庁によると、豪雨とは「著しい災害が発生した」激しい大雨のことを指します。大雨は「災害発生の危険性がある雨」の場合に使い、豪雨は災害が発生した場合に限定して使う雨の表現です。
例えば、2021年7月3日、熱海に降った激しい雨で土石流が発生しましたが、気象庁では「大雨」という表現にしており、豪雨は使っていません。豪雨は命名された大雨災害にのみ使われるのですが、熱海の大雨災害は命名されていないため、大雨という表現に留まっています。
ついつい使ってしまいがちな豪雨ですが、実際に使う場面はかなり限定されている点に注意しましょう。
雨模様には複数の意味があるので言い換えも検討しよう
雨模様の本来の意味は「今にも雨が降りそうな様子」です。しかし、現在では「雨が降ったりやんだりしている様子」「雨が降っていそうな様子」などの意味でも使われることが多く、紛らわしい表現になる恐れがあります。
このように、雨模様には複数の意味があり、前後の文脈だけでは解釈が難しい場合もあります。明確に状況が分かる表現に言い換えることも検討しましょう。