「圧巻」は、よく見聞きする言葉ですが、「圧倒」「壮観」「席巻」とは同じ意味なのか違いがあるのか、うまく説明できる人は少ないかもしれません。これらの言葉はそれぞれ意味合いが違うため、言い換えには使えない表現です。

本記事では、圧巻の意味と圧倒・壮観・席巻との違いについて、例文を交えながら分かりやすく解説します。また、圧巻と言い換えが可能な類語や、英語表現についてもまとめました。

  • 圧巻とは

    「圧巻のパフォーマンス」など、圧巻はどのようなケースで使えるのかを確認しよう

「圧巻」とはどういう意味?

圧巻とは「あっかん」と読み、「全体の中でもっとも優れた部分」のことを指す言葉です。例えば「圧巻の演技」と表現すると、「演技の中でももっとも良かった部分」という意味になります。

由来は中国から

圧巻の由来は、古代中国の官吏登用試験「科挙(かきょ)」にあります。圧巻の「巻」は科挙の答案のことで、最優秀の答案を他の答案の上に載せたことから生まれた言葉です。最優秀の答案が他の答案を「圧する」ことから圧巻という言葉になりました。

これらの故事から来る四字熟語「科挙圧巻」は、「試験でもっとも優秀な成績を収めること」という意味になります。滅多に使わないかもしれませんが、圧巻とセットで覚えておくといいでしょう。

「圧感」は誤用

同じ読みの単語で「圧感」を目にしたことがあるかもしれません。「圧感」は、辞書には掲載されていない単語で、しばしば圧巻の誤用としてみられます。間違って使わないように注意しましょう。

  • 圧巻とは

    圧巻の由来は中国の「科挙」でもっとも優秀な答案を一番上に置いたことにちなんでいる

「圧巻」の使い方と例文

圧巻の使い方は、あくまでも「全体」の中で「一番すぐれている部分」に対して使います。

・登山の醍醐味は、美しい自然の景色を堪能できることだ。特に、山頂で見られる日の出は圧巻の景色だ。
・大好きな役者の舞台を見に行った。素晴らしい演技に感動したが、特にクライマックスを迎えたときは圧巻の演技で、思わず涙が出てきた。
・紅葉の季節でも一瞬だけ見ることのできる燃えるような赤は、まさに圧巻の一言である。
・新体操のA選手の演技は、他の選手と一線を画す圧巻のパフォーマンスだ。

いずれの例文も、景色・演技・紅葉の赤色など「全体」があり、その中でももっともすぐれている「部分」に対して「圧巻」を使っています。

「全体」を示さずに単純に「圧巻」を使う場合は、「これまでにみたことがない」「人生の中でも経験したことがない」という意味を含みます。

・気球からの眺めは、まさに圧巻の景色だ。
・今日見た映画はこれまでに見たことのない圧巻の美しさだった。

以上で、圧巻の基本的な使い方と例文を紹介しました。次に圧巻によく似た他の言葉との違いについて解説します。

  • 圧巻の使い方と例文

    さまざまな例文を読み、圧巻が使える場面を覚えよう

「圧巻」と圧倒・壮観・席巻の違いと使い分け方

圧巻と似たような意味を持つ言葉に圧倒(あっとう)・壮観(そうかん)・席巻(せっけん)があります。いずれも、少しニュアンスが違う部分があるため、圧巻との単純な置き換えができないケースもあります。意味の違いを把握して適切な場面で使い分けられるようにしましょう。

圧巻と圧倒の違い

圧倒には2種類の意味があります。1つめは「きわめてすぐれた力を持ち、その力で相手を押さえつけること」という意味です。「A投手は圧倒的な球速で相手チームの打者を圧倒した」とすると、1つめの意味になります。

2つめは「自身の力をみせつけることで、周囲を恐れさせること」という意味です。「彼は大声で近寄るなと叫び、周囲を圧倒した」という場合は、周囲を恐れさせていることから2つめの意味になります。

圧巻には、相手を押さえつけたり、威嚇(いかく)したりというニュアンスは含まず、そのままでは置き換えられません。両者を場面によって使い分けるようにしましょう。

圧巻と壮観の違い

壮観は「眺め」に関する言葉であり、規模が大きく素晴らしい景色を形容する言葉です。「山頂からの眺めはまさに壮観」「すべて紅葉で埋め尽くされた山並みの様子は壮観」などといった使い方をします。

圧巻は景色にも使いますが、他にも使える言葉です。「山頂でみられる日の出は圧巻の景色」という表現なら「山頂でみられる日の出は壮観」と言い換えられます。一方「他の選手と一線を画す圧巻のパフォーマンス」は、景色ではないため壮観と言い換えることはできません。

圧巻と席巻の違い

席巻とは、凄まじい勢いで勢力を広げる様子を表現する言葉です。「A社は瞬く間に〇市場を席巻した」などという使い方をします。圧巻には「勢力を広げる」という意味はないため、席巻と置き換えることはできません。

以上で、圧巻と圧倒・壮観・席巻との違いについて解説しました。では、圧巻をお置き換えられる類語表現には何があるでしょうか。

関連記事: 席巻とは? 読み方や意味、正しい使い方を例文とともに紹介

  • 圧巻と圧倒・壮観・席巻の違いと例文

    圧巻と圧倒・壮観・席巻にはそれぞれ少しずつ意味の違いがあるので言い換えには注意

「圧巻」の類語・言い換え表現

圧巻の類語や言い換え表現について、例文を示しながら解説します。

見どころ

全体の中で、特に注目するべき部分、みる価値のある部分を指す言葉です。「あの映画の見どころは、怪獣が第4形態になって歩き出す部分だ」などという形で使います。観光案内等の場合は、最低限行っておきたい部分、というニュアンスを含む場合もあります。「秋の京都観光は嵐山が見どころだ」などと使います。

見せ場

演劇などで、役者が得意な芸をみせる場面のことを表す言葉です。みるだけの価値がある、という意味を含む場合もあります。「あの試合の見せ場は9回裏2アウトからの代打満塁ホームランだった」などのように使います。

山場

もっとも盛り上がった重要な場面で、クライマックスや最高潮(さいこうちょう)に似た意味を持つ単語です。「この映画も、ラスボスが登場して山場に差し掛かってきた」等と使います。

ハイライト

もっとも興味を引く部分を表す言葉で、見せ場、山場とも似た言葉です。「東京オリンピックのハイライトは〇〇」などの使い方ができます。

  • 圧巻の類語表現

    圧巻の類語表現を覚えることで、利用シーンも自然と理解できる

「圧巻」の英語表現

圧巻の英語表現は「high spot」「highlight」などになります。ただ、文脈の中で別の表現になることもあるので、以下の例文もみて確認しましょう。

The sunrise seen at the top of the mountain is an impressive sight.
(山頂で見られる日の出は圧巻の景色だ。)

Her performance is breathtaking.
(彼女の演技は圧巻だ。)

The fiery red of the autumn leaves that can only be seen for a moment is just stunning.
(一瞬だけ見ることのできる紅葉の燃えるような赤色は、まさに圧巻だ。)

Player A's performance is a masterpiece.
(A選手の演技は圧巻のパフォーマンスだ。)

  • 圧巻の英語表現と例文

    圧巻の英語表現を覚えて使えるようになろう

「圧巻」は全体の中でもっとも優れた部分を指す言葉

圧巻の意味と、圧倒・壮観・席巻との違いについて解説しました。いずれも意味の違う言葉であり、そのまま置き換えるには難しい表現です。圧巻の類語には、見どころや見せ場などがあり、言い換える場合はこれらの表現を使いましょう。また、圧巻は名詞としてのみ使われるため、動詞としては使えない点も要注意です。

単語の中で同じ漢字が使われていると、似た意味の言葉と感じがちですが、まったく違う意味を持つ場合もあります。言葉の正しい意味を覚えて、仕事でも正しい言葉遣いができるようになりましょう。