ことわざや四字熟語は、日常生活の中で意外と使う機会があるもの。「枯れ木も山のにぎわい」もよく見聞きすることわざの1つですが、意味を間違えてしまっている人は決して少なくありません。
そこで今回は、「枯れ木も山のにぎわい」の正しい意味や使い方を例文付きでくわしく解説。類義語や対義語など、言葉をより深く理解するためのポイントもあわせて紹介します。
「枯れ木も山のにぎわい」の意味・由来
「枯れ木も山のにぎわい」は、「つまらないものでもないよりはましである」という意味です。
「たとえ葉っぱ1枚付きいていない寒々しい枯れ木であっても、土ばかりの何もない山よりはましだろう」ということが転じて現在の意味となりました。
誤用している人が多いことわざ
「ないよりもあったほうがまし」という意味の「枯れ木も山のにぎわい」ですが、実は「人が集まればにぎやかになる」という意味で誤用している人が多いことわざでもあります。
「枯れ木も山のにぎわい」はパーティや会合などへの招待を受けた人が、自分のことを「つまらないものでもないよりはまし」と謙そんする時に使う言葉です。
しかし、いつしか「枯れ木=つまらないもの」という認識が薄くなってしまい、「単純に人が多い方がにぎやかでいい」という意味で誤用されることが増えてしまいました。
誰かを招待する時にうっかり「枯れ木も山のにぎわいですので、ぜひお越しください」などと言ってしまうと、相手を「つまらないもの」と見ていることになってしまいます。誤用には十分注意したいものです。
「枯れ木も山のにぎわい」を使った例文
日常生活でも見聞きする機会がある「枯れ木も山のにぎわい」という言葉。
本来は自分や自分の身内を枯れ木にたとえ謙そんして使う表現です。誤用を避け適切に使用するためにも、例文で具体的な使用シーンを確認しておきましょう。
例文
このような素晴らしいパーティは場違いでないかとお返事に躊躇しましたが、枯れ木も山のにぎわいと思い参加させていただくことにしました。
父は「枯れ木も山のにぎわい」と言って出かけたが、同窓会を満喫してきたようです。
私の手作りのため形はいびつですが、枯れ木も山のにぎわいと思いリビングに飾ることにしました。
「枯れ木も山のにぎわい」の類義語
「枯れ木も山のにぎわい」には、状況や場面によって言い換えられる類義語がいくつかあります。
知っておくと日常生活などで役に立つかもしれませんので、代表的なものを確認しておきましょう。
蟻も軍勢・餓鬼も人数
「蟻も軍勢」は「枯れ木も山のにぎわい」と同じくことわざの1つであり、「いなくてもいい人や微力なものでもないよりはましである」という意味です。
「蟻のような小さな虫でも数が集まれば力が強大になる」ことが転じて現在の意味となっており、「ないよりもましなもの」を表すという意味で「枯れ木も山のにぎわい」の類義語となります。
なお、「つまらない人間でも多少の役割は果たす」という意味の「餓鬼も人数」もほぼ同じ意味です。
歪み木も山のにぎわい
「歪(ゆが)み木も山のにぎわい」も、「おもしろくないもの、役に立たないものでもないよりはまし」という意味のことわざです。「枯れ木も山のにぎわい」ほど知名度はありませんが、枯れ木が歪み木に置き換わっただけで、意味は同じです。
「枯れ木も山のにぎわい」の対義語
「枯れ木も山のにぎわい」を正しく理解するためには、反対の意味を持つ言葉を確認しておくことも大切です。
ここからは「枯れ木も山のにぎわい」の代表的な対義語を紹介します。それぞれの言葉のニュアンスをしっかり理解しておきましょう。
無用の長物
「無用の長物」は、「全く役に立たず、むしろないほうがいいもの、あると邪魔なもの」という意味のことわざです。
一般的に長いものは短いものより役に立つと考えられますが、「無用の長物」はあると逆に邪魔になってしまうもの。「つまらないものでもないよりはまし」という意味の「枯れ木も山のにぎわい」とは真逆の意味となるため、対義語の代表格と言えるでしょう。
月夜に提灯
「月夜に提灯(ちょうちん)」は、不必要なものや無駄なものの例えに使われます。
「月が出ている明るい夜には提灯は不要である」ということが転じて、「無益で役立たずなもの」を意味しています。
「無駄なもの」を意味する表現であるため、「あったほうがましなもの」を示す「枯れ木も山のにぎわい」とは逆の意味を持っていると言えます。
「枯れ木も山のにぎわい」と混同しやすい表現
「枯れ木も山のにぎわい」ということわざについて、意味や類義語・対義語などを見てきました。意味はしっかり理解できていても、日常で使うシーンが少ないと似た言葉を含むことわざと混同してしまうことも。
ここからは、「枯れ木も山のにぎわい」の類義語だと勘違いしやすい表現を紹介します。
それぞれの言葉の正しい意味を理解して、正確に使えるようにしておきましょう。
枯れ木に花
同じ「枯れ木」という言葉を使うことから「枯れ木も山のにぎわい」と似たような意味だと勘違いしやすいのが、「枯れ木に花」という表現。
しかし、「枯れ木に花」は「一旦衰えたものが再び栄えること」の例えであり、「枯れ木も山のにぎわい」とは意味が全く異なります。
同じような響きを持つからといって混同することのないよう、それぞれの言葉の意味をよく理解しておくようにしましょう。
あばたもえくぼ
「あばたもえくぼ」は、皮膚に残った傷痕である「あばた」が「えくぼ」のように見える、つまり「本来なら短所であるものでも、恋する人のものなら長所に見える」という意味のことわざです。
マイナスのものがよく見えるというニュアンスから「枯れ木も山のにぎわい」の類義語だと考える人もいるようですが、実際は2つの言葉が持つ意味は大きく異なります。
「ないよりはあるほうがまし」という意味の「枯れ木も山のにぎわい」とは、使われる場面も使う人の気持ちも大きく違ってくるため、混同することのないよう注意しましょう。
「枯れ木も山のにぎわい」の英語表現
海外の友人や知人がいる人の中には、「枯れ木も山のにぎわい」を英語で表現したいという人もいるでしょう。
ここからは、「枯れ木も山のにぎわい」の意味に近いいくつかの英語表現を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
例文
Even a leafless tree adds interest to a mountain.
直訳すると「たとえ枯れ木であっても山に趣を添えられる」となり、「枯れ木も山のにぎわい」と同じ意味として使える。A bad bush is better than the open field.
「悪い茂みも何もない野原よりはまし」という意味であり、「枯れ木も山のにぎわい」と同等の表現となる。Half a loaf is better than none.
「パン半分でも何もないよりはいい」という意味で、「枯れ木も山のにぎわい」と同じ表現として使うことができる。
正しい意味を理解して誤用を避けよう
「枯れ木も山のにぎわい」ということわざの意味は、「つまらないものでもないよりはましである」です。
「ないよりはまし」というマイナスなニュアンスを含み、自分や身内のことを謙そんするようなシーンで使います。間違ってもそのほかの誰かに対して使ってしまうことのないようにしましょう。
今回紹介した類義や対義のことわざも、知っていればちょっとした話のネタに使えるかも。ぜひ一緒に覚えてみてください。