「お膳立て」(おぜんだて)という表現は、ビジネスや日常会話などさまざまなシーンで使われます。しかし、「お膳立て」は相手や対象によっては使用に適していない言葉です。

この記事では「お膳立て」を正しく使えるよう、言葉の意味や使用に適した相手や内容、使い方を例文とあわせて紹介します。また、類語や英語表現などもまとめました。

  • 「お膳立て」とは

    「お膳立て」の意味や使い方・類語表現などを紹介する記事です

「お膳立て」(おぜんだて)とは

「お膳立て」とは、準備しておくことや用意することを意味する言葉です。「膳立て」に接頭辞「お」が付いている丁寧な表現で、ビジネスや日常会話でも使われます。

「お膳立て」の由来

「お膳立て」の「お膳」とは、調えられた食事や料理、もしくは料理を乗せる台のことで、接頭辞「お」が付くことで食事を出す相手を敬って丁寧に表す表現です。「立て」は名詞の後に付くことで、取り立ててそのことを行う様子を表します。

たくさんの人に料理を準備する時に、お膳に乗せて運ぶと効率がいいことから、「お膳立て」が「準備しておくこと」を意味するようになりました。

人の行動に対して使う言葉

「お膳立て」は単なる準備に対して使われる言葉ではありません。人が見えないところで先回りして準備を行う場合に、その行動に対して使われます。

例えば、プレゼンテーションが成功するように、周囲の人が裏で準備を整えておくような状況での行動に対してです。

目上の人には使わない

「お膳立て」は物ごとがうまく進むように影で準備を進めておくことです。目上の人に対して「お膳立てしておきました」と自分で言ってしまうと、手柄を自慢して図々しいという印象を持たれる可能性があります。

そのため、「お膳立て」は目上の人に対して自分の行動を報告する場合には使わない方が望ましいです。

使うのにふさわしくない対象がある

「お膳立て」はどのような状況にでも使われるわけではなく、イベント成功時の準備してくれた人に対してや、うまくいったプレゼンテーションの準備をしてくれた人に対して使われます。

一方、葬式の準備などの不幸ごとに使うのは適切ではありません。このように、使うのにふさわしくない内容もある点に注意しましょう。

  • 「お膳立て」とは

    「お膳立て」は見えないところで準備する人に対して使われる言葉です

「お膳立て」の使い方

「お膳立て」はよく聞く言葉ではありますが、誤った使い方をしてしまうこともあります。ここでは、「お膳立て」の具体的な使い方を紹介します。

名詞として使う

・プロジェクトが成功できたのはAさんのお膳立てのおかげだ
・大規模なミーティングをトラブルなく終えられたのは、みなさんのお膳立てがあったからこそです

上記は「お膳立て」を名詞として使用した場合の例です。「お膳立て」は準備に奔走してくれた相手の行動を指して使われることがあります。

「する」を付けて使うことが多い

・親族で顔を合わせる機会をお膳立てしてくれた
・あのおばさんはお見合いをお膳立てするのが趣味だ
・B選手はパスがうまく、いつもゴールのお膳立てをしてくれる

「お膳立て」は名詞ですので、「する」を付けて使われることも多いです。上記の例文を参考に活用してください。

皮肉として使われることもある

「お膳立て」は主に人の行動に対して使われる言葉で、自分の行動に対してはあまり使われません。しかし、嫌みや皮肉の意味を込めて、自分の行動に対して「お膳立て」を使うことがあります。

例えば「明日のプレゼンテーションに役立てばと思いお膳立てしておいたよ」などのように、暗に相手の力不足や準備不足を皮肉する言い回しで使われることがある点も覚えておきましょう。

「お膳立て」の誤用例

・明日のミーティングのお膳立てをお願いします
・イベントのお膳立てをさせていただきます
・葬儀のお膳立てができました

「お膳立て」は「裏方が気を利かせ、うまくいくよう準備する」ことを表します。

そのため、他人に求めたり自分の行動に対して使ったりするのは適切ではありません。また、葬式など望ましくない内容に使うのも間違っていることを覚えておきましょう。

  • 「お膳立て」の使い方

    「お膳立て」は内容や状況・相手に注意して使いましょう

「お膳立て」の類語や言い換え例

「お膳立て」には似た意味を持つ類語がいくつかあります。状況に応じて使い分けられるようになりましょう。

準備・用意

「準備」とは「物ごとを行う前に、態勢を整えたり必要なものをそろえたりしてあらかじめ用意をしておくこと」です。

また、「用意」には「事前に必要なものをそろえて、整えておくこと」という意味があります。

どちらも「お膳立て」を言い換えることが可能ですので、覚えておきましょう。

支度・仕度

「支度」と「仕度」はどちらも読み方は「したく」で、意味も同じです。「予定されていることを行うのに必要なものをそろえること」という意味があり、「お膳立て」と言い換えられます。

下ごしらえ・下準備

「下ごしらえ」には「事前に準備をしておくこと」という意味があります。また「下準備」は、「本格的に物ごとに取りかかる前に、あらかじめ行う準備」のことで、「下ごしらえ」と意味が似ています。

どちらも「気を利かせて準備しておく」という「お膳立て」の意味と似ている類語のひとつです。

根回し

「根回し」には、「交渉や会議などの前に、物ごとをうまく運べるように、事前に手を打っておくこと」という意味があります。

「お膳立て」をプレゼンテーションの下準備などビジネスシーンで使う場合、状況によっては「根回し」と言い換えられます。状況によって使いこなしましょう。

手はず

「手はず」は、「物ごとを行う時に、事前に決めておく手順や、前もってしておくべき準備」という意味をもちます。「お膳立てする」は「手はずを整える」とも言い換えられますので、類語のひとつとして覚えておきましょう。

  • 「お膳立て」の類語や言い換え例

    「お膳立て」には「準備」や「用意」などいくつかの類語があります

「お膳立て」の英語表現

「お膳立て」の代表的な英語表現を例文とあわせて紹介します。

preparation

「preparation」には、「準備」「用意の手はず」などの意味があります。下記のように、「お膳立て」の英語表現として用いられることもありますので覚えておきましょう。

・previous preparation(前もって行うお膳立て)
・He engages in her preparation.(彼は彼女のお膳立てを行う)

arrange

「arrange」には、「前もって整える」「用意しておく」などの意味があります。「お膳立てする」「お膳立て」の英語表現に適していますので、使ってみましょう。

・Arrangements were complete for the meeting.(ミーティングのお膳立てができていた)
・He found the arrangements all made.(彼はお膳立てが整っているところへやってきた)

  • 「お膳立て」の英語表現

    「お膳立て」の英語表現には「preparation」や「arrange」があります

「お膳立て」を使える相手や場面を理解しておこう

「お膳立て」には「すぐに取りかかるための準備をすること」という意味があり、ビジネスシーンでもよく耳にします。ただし、使う際は自分の行動に対しては使えない点や、目上の人には使えない点、また葬式など望ましくない対象には使えない点などは覚えておきましょう。さらに、「お膳立て」は皮肉として使われる場合もあります。

円滑なコミュニケーションのためにも、「お膳立て」の正しい意味や使い方を理解して活用するようにしましょう。