考えてみれば、夏はなにかと食事に迷う季節である。ガッツリ食べて空腹を満たしたいが、熱々のラーメンやカレーで大汗をかくのもツラい。はたまた厳しい暑さに食欲もわかないが、ちゃんと栄養を摂らないと身体は一層ダルくなる……。

そんなもどかしい季節にあって、「これはほぼ100点ではないか」と思えるメニューを発見した。武蔵野うどんをウリにするチェーン「久兵衛屋」の季節限定メニュー「豚しゃぶごまだれうどん穴子天定食」だ。

これをシェアせずにいたら恨みを買いそうなので、ここで情報共有させていただきたい。食欲のやり場に困っている人も、食欲減退に喘いでいる人も必見のパワーフードである。

つけ麺スタイルで味わう「武蔵野うどん」とは

「武蔵野うどん」を知らない人のために、少しおさらいしよう。

武蔵野うどんとは、東京都〜埼玉県に広がる武蔵野エリアの郷土料理。太くてコシの強いざるうどんを、具沢山の温かいつけ汁で食べるのが一般的だ。明治以降は豚肉の細切れを入れた「肉汁うどん」が代表的なメニューになっている。

  • こちらは久兵衛屋の看板メニュー「肉汁うどん」

とても食べごたえがあるので、讃岐うどんのような一般的なうどんよりも、どちらかというとラーメンのいちジャンルである“つけ麺”のひや盛り(温かいスープに冷たい麺)に近いスタイルだと思ってほしい。

そんな武蔵野うどんは現在、“隠れうどん大国”の埼玉県などで味わうことができ、特に久兵衛屋の出す武蔵野うどんは、味、コスパともに優れていると言えるだろう。

先日も埼玉県に行く用事があったので、久兵衛屋にも寄ったのだが、ここで遭遇した季節限定メニューがそれはそれは優秀で……前置きが長くなったが、いよいよ実食した様子をご覧いただこう。

名前の時点ですでに豪勢「豚しゃぶごまだれうどん穴子天定食」

7月末、夏真っ盛り。気温は33度オーバー。

「腹は減っているが、どにかく暑苦しいものは食べたくない。そうだ、久兵衛屋ならきっと何かちょうどいいメニューがあるだろう」と思って入店してみると……

「濃厚 ごまだれうどん」なる季節限定メニューを発見。単品もあるが、目玉は「豚しゃぶごまだれうどん穴子天定食」だと思われる。名前だけでも豪勢である。店員さんによると、ごまだれのつけ汁は冷製だそうだ。よし、ちょうどいい。今回はこれを食べてみよう。

そうして待つこと約10分。目の前に現れたのがこれだ。

別の角度からも見てみよう。

……何かの祝いの席のような豪華さである。えっ、これで1,089円って……いいんですか? 穴子さんなんて、まるまる一本も乗っていますよね。採算取れてますか? むしろもう200円くらい払いましょうか? と遠慮したくなるほどだが、こんな豪華メンバーが揃って、本当に1000円ちょっとしかしないらしい。ウソだろオイ、最高かよ……。

せっかくなので、まずは穴子さんを揚げたてのうちにいただこう。いただきます。

うんまっ……!

衣はサックサクで、身はホックホクで肉厚。噛むと柔らかく、ホロホロと口の中でほどけてゆく。聞くところによると、穴子の旬は6月から8月頃。この時季の穴子は脂分が少なく、淡白でサッパリしており、天ぷらなどで食べるとより一層美味しさが際立つのだとか。う〜ん、見事な相性である。

穴子は魚介類でもトップクラスのビタミンAを含み、免疫力の向上や感染症予防などの効果も期待できると言われている。他にもDHAやたんぱく質、ビタミンEやカルシウムも豊富で、体力を消耗しやすい夏にピッタリの食べ物だ。

続いて、うどんも食べてみよう。まずは麺だけで……ズズッ。

これも美味い! キリッと冷えたごまだれは濃厚でコク深く、芳醇なごまの香りが減退気味の食欲をかき立てる。うどんも太くてコシが強いから、ごまだれに負けず劣らずの存在感を発揮している。

では、今度はお肉も合わせて……

ふっ。笑えるほど美味い(笑)。なるほど、豚肉はバラ肉じゃなくて、薄切りのロース肉かな。噛みごたえがあるからコシの強いうどんとの相性もいい。「よく考えられているなぁ〜」とつい関心してしまう。

一見矛盾しているようだが、サッパリ食べられるのに、こってりラーメンを食べているかのようなガッツリ感も味わえる。これなら食べざかりの若者たちも大喜びすること請け合いだ。しかも、麺もスープも冷たいので、汗をかく煩わしさもない点もうれしい。

さらに驚いたのが、こちらの……

薬味である。もしかしたら薬味を軽視する人もいるかもしれないが、白髪ネギ、ミョウガ、大葉がミックスされた薬味が全体の味をスッキリ爽やかに引き締めるので、夏にピッタリな爽快感を感じながら食べられるのだ。

こってりとした濃厚ごまだれ、食べごたえのあるうどんと豚しゃぶ、そして爽やかな薬味……この三つ巴が絶妙なパワーバランスを成立させているので、ガッツリしたものが食べたい日はもちろんのこと、食欲のない日でもサッパリと美味しいご飯として味わうこともできるようになっている。

つまり、全方位的に死角なし。これはハッキリ言って、100点をあげても文句は出ないだろう。

アスパラガス、ナスといった旬の野菜の天ぷらも美味いこと美味いこと。特にサクサクの衣とシャキシャキのアスパラガスは食感のコントラストが絶妙で、これを脇役となど甘く見ては罰が当たりそうなほどのハイクオリティである。

お察しのとおり、久兵衛屋は天ぷら類も充実している。

この「穴子天盛り」を単品オーダーできるのはもちろんのこと(しかも429円という破格のコスパ!)、テイクアウトでも天重弁当(540円という安さ!)、海老のかき揚げ弁当(海老入りで590円!)、特選海老天重弁当(海老が5本も入って853円!)などがラインナップ。

どれも贅沢感を味わえるうえにコスパにも優れているので、武蔵野うどん以外のメニューにも引き続き注目していきたい。