「悪運が強い人」と聞くと、どのような人を思い浮かべるでしょうか。誉め言葉として「あなたは悪運が強い」と使っていたという方もいるかもしれません。しかし、「悪運が強い」は誉め言葉には使えない表現です。

本記事では、「悪運が強い」の正しい意味と誤用例について解説します。そもそも「悪運」にはどのような意味があるかについても触れつつ、「悪運が強い」の類語と対義語、英語表現を例文とともにまとめました。

  • 「悪運が強い」とは

    「悪運が強い」にはどのような意味が含まれているのでしょうか

「悪運が強い」とは

「悪運が強い」とは、悪事を働いてもその報いを受けることなく、かえって成功する・栄えるという意味を表す慣用句です。「悪いことをしている」ことが前提となるため、通常誉め言葉では使いません。

例えば陰口のような形で、「あの人は人の手柄を横取りしたのに発覚せず、手柄を認められて出世した、本当に悪運が強い」という使い方をします。

「悪運」の意味

そもそも、「悪運」には2通りの意味があります。1つめは「悪いことをした報いを受けずに、逆に栄えること」の意味、2つめは「運の悪さ・不運」です。意味的には真逆になりますが、1つめの意味は「悪運が強い」という慣用句で用いられるときのみ有効と考えてください。

単体で「悪運」と使われている場合は、単純に「不運」と解釈すれば問題ありません。「悪運を断ち切る」という表現なら、これまでの不運を断ち切る、という意味になります。

「悪運が強い」の誤用例

「悪運が強い」を誉め言葉として使用している場合は誤用です。例えば、「自動車と接触したのに傷一つないなんて悪運が強いね」というように、「悪運が強い」は「不運が訪れても危機一髪で回避できる」という意味では使いません。正しく言い換えると「自動車と接触したのに傷一つないなんて幸運だね」となります。

では、「私は悪運が強いので、ピンチに陥ってもどこからか援助の手が差しのべられて事なきを得ている」という使い方はどうでしょうか。この場合、前後の文脈を確認して「私は悪事をしている」という前提があれば、正しい表現となります。

しかし、特に悪事をしているという前提がないなら誤用です。その場合は「私は運に恵まれているので、ピンチに陥ってもどこからか援助の手が差しのべられる」などと言い換える必要があります。

悪運が強い人の特徴とは

悪運が強い人の特徴とは、以下の全てを兼ね備えていることです。

  1. 何らかの悪事を働いている
  2. 普通なら明るみに出て罰せられそうなのに、なぜか罰せられない
  3. それどころかますます栄えている

悪運が強い人は、何らかの悪事を働いていることが前提となります。そのため他人にこの表現を使うと相手を「悪人」と認定していることになり、大変失礼になるので注意しましょう。

以上で「悪運が強い」の基本的な意味について整理しました。次に、「悪運が強い」の正しい使い方と例文をいくつか紹介します。

  • 「悪運が強い」とは

    悪運が強い人は「悪いことをしても発覚せずにますます栄える」人のこと

「悪運が強い」の使い方と例文

「悪運が強い」は、悪事を働いている人が、罰を受けずに栄えている様子を表す際に使います。以下は、「悪運が強い」の例文です。

・悪運が強い人だが、このままずっと栄え続けるとは思えない。
・あの人は悪運が強くて、今では多くの不動産を所有するオーナーとなっている。
・彼の悪運の強さは本物だが、周囲が不幸になっている様子を見ると、できる限り関わりたくない。
・いくら悪運が強くても、いつかはしっぺ返しが来るのではないだろうか。

単純に運がいい場合には「悪運が強い」は当てはまらないこと、誉め言葉に使わないことの2点に注意して使いましょう。仕事上であまり使うことはない表現ですが、誰かが使っているときは、相手を褒めているわけではありません。解釈を間違えないように注意してください。

  • 「悪運が強い」の使い方と例文

    例文を確認することで「悪運が強い」の使い方を覚えよう

「悪運が強い」の類語

「悪運が強い」の類語は、「この手の賭けには強い」「こと悪だくみに関しては強運」などが適しています。これらの類語を使った例文は以下の通りです。

・この手の賭けには強い彼だが、ここのところ失敗続きで、いよいよ繁栄も終わりそうだ。
・こと悪だくみに関しては強運で、ここまで誰にも見つからずに悪事で貯めた財産を増やし続けている。
・一見すると普通の人に見える彼女だが、こと悪だくみに関しては強運でここまでのし上がってきた。

いずれも、悪事を行っていることを前提にして、運が強いことを示しているため、「悪運が強い」と言い換え可能です。

「悪運が強い」の対義語

「悪運が強い」の対義語は、単純に「幸運に恵まれる」という意味になります。「星の巡り合わせがいい」や「流れが来ている」なども、対義語として利用可能です。これらの対義語を使った例文は以下の通りです。

・ネコちゃんを飼い始めてから、転職が決まったり宝くじが当たったりと幸運続き。まさに、流れが来ているという感じだ。
・星の巡り合わせが良かったのか、私の落とし物を拾ってくれた人と意気投合して恋に落ちた。
・FX取引を開始して半年、ここのところ流れが来ているのか資産が順調に増えている。

いずれの例文も「悪事を働いている」という前提はなく、単純に幸運に恵まれていることを表現しています。

  • 「悪運が強い」の類義語と対義語

    「悪運が強い」の類義語と対義語を覚えれば誤用をせずに済みます

「悪運が強い」の英語表現と例文

「悪運が強い」の英語表現は、「thrive in spite of one's evil deeds(悪いことをしても成功する)」などです。この表現を使った例文を紹介します。

That guy took credit for someone else's work and it was never discovered, and he was promoted to a department director in recognition of his work. He has thrived in spite of his evil deeds.
あいつは他人の手柄を横取りして、それがばれないようにし、その功績を認められて部長に昇進したんだ。彼は悪運が強い。

単なる「悪運」の場合は「bad luck(不運)」とすればOKです。

I've been working hard, but I'm tired both physically and mentally from a string of bad luck.
努力を続けているが、悪運続きで私は心身ともに疲れた。

  • 「悪運が強い」の英語表現と例文

    「悪運が強い」と「悪運」では意味が真逆になるので英訳するときは要注意

「悪運が強い」を誉め言葉として使わないように注意

「悪運が強い」とは、悪いことをしても罰せられずにかえって栄えるという状況を指す言葉です。悪いことをしているという前提があるため、誉め言葉として使うのは誤用であり、会話などで使うときには注意しなければなりません。

「悪運が強い」の正しい意味を把握して、時と場合によっては類語でより分かりやすい表現に変えるように注意しましょう。