「王道(おうどう)」は日常生活からビジネスシーンまでさまざまな場面で使われる言葉です。使用され始めたのは意外と昔で、古代中国にまでさかのぼります。また「王道」は、本来の意味と異なる使い方が現代語として広まった言葉です。

この記事では「王道」の意味や由来、使用例から類語や対義語、英語表現などを紹介します。言葉本来の意味を理解して、正しい言葉遣いを心がけましょう。

  • 「王道」の意味と由来

    「王道」の意味や由来・類語や対義語などを紹介する記事です

「王道」の意味と由来

「この話はヒーロー物の王道だ」など、「王道」は日常生活でもよく使われる表現です。しかし、「王道」には複数の意味があります。ここでは、「王道」の意味や由来を紹介するので理解した上で活用しましょう。

「王道」には二つの意味がある

「王道」には二つの意味があります。

一つは「儒教で理想とされていた、徳がある君主が仁義によって国を治める政治」のこと、つまり「仁徳による政治」です。民に対して慈しむ気持ちで国を統治することを意味しています。

もう一つは「遠回りせずに済む最も適した方法」のことで、「近道」「安易」などと似た意味です。

「王道」の意味ごとの由来

「王道」は、使う意味によって由来が異なります。

政治的な意味で「王道」を用いる場合、由来は中国の儒教で、中国戦国時代の学者である孟子(もうし)が唱えた説です。王道とは力で統治する覇道とは対照的な、仁愛によって統治する政道のことを表します。

「近道」を意味する「王道」の場合、語源は英語の「royal road」。エジプトの王が問いかけたことに対する数学者の答え、「There is no royal road to learning」(学問には王道はない)という言葉が由来です。そこから「royal road」が「近道」として使われるようになりました。

「王道」は現代では「定番」という意味でも使われる

「王道」はもともと「安易な道」「近道」などの意味でしたが、現在では「物ごとが進む場合によくある定番の方法」「正攻法」などの意味でも使われることが多くなりました。

例えば「王道的サスペンス」「恋愛漫画の王道」などといった表現は、「正統派」「定番」などという意味で使用されているケースです。

「王道」本来の意味とはずれていますが、日常生活での使用頻度が多いので、この意味での使い方も認識しておきましょう。

「王道」の使用例

「王道」は現在、「正攻法」や「定番」などの意味で使われることが多いです。具体的な使用例を紹介します。

・王道なやり方に慣れきってしまうと、応用がききにくい面がある
・自体が複雑になりすぎてしまったら、一旦王道に立ち返るべきだ
・あの大ヒット漫画は学園ものの王道だ
・王道なデザインの服は、毎年ある程度の売り上げが見込める

上記の例を参考に使っていきましょう。

  • 「王道」の意味と由来

    二つの意味がある「王道」は、現代では「定番」という意味でも使われます

「王道」の類語

「王道」は似た意味を持つ言葉で言い換え可能です。ここでは、「王道」の代表的な類語を紹介します。

早道(はやみち)

「早道」には「目的地へ早く行ける道」「近道」「手間をかけずに目的に到達できる簡単な方法」などの意味があります。「王道」が「royal road」由来の意味で使われる場合、「早道」と言い換えても問題ありませんので、覚えておきましょう。

定石(じょうせき)

「定石」には、「物ごとを行う時に、一番いいとされる方法や手順」といった意味があります。由来は囲碁において最善とされている決まった石の打ち方を「定石」と表現したことです。

「王道」が「正攻法」や「定番」などの意味で使われる場合、「定石」に言い換えできます。

近道

「近道」には「目的地に早く到達できる道」や「目的に早くたどり着く方法」などの意味があります。「王道」を「royal road」の日本語訳として使用する場合は「近道」と同じ意味ですので、類義語のひとつとして覚えておきましょう。

定法(じょうほう)

「定法」は、「このような場合にはこうするなど決まった方法」「公に決まった規則」などの意味がある言葉です。「王道」の「正攻法」などの意味と共通しています。

「解決方法がわからなくなったら一旦定法に立ち戻ろう」など、「王道」と似たような状況で使える言葉ですのです。

定番

「定番」には「流行に左右されない普遍的な商品」「どこにでもあるようなありふれたこと柄」などのような意味があります。よく使われる「王道」と意味が似ていますので、「王道」の言い換え表現として覚えておきましょう。

  • 「王道」の類語表現

    「王道」の類語はいくつかありますので意味によって使い分けましょう

「王道」の対義語

「王道」の類義語をいくつか紹介します。

覇道(はどう)

「覇道」は儒教の政治的な考え方で、「武力や権謀で支配や統治を行うこと」という意味があります。由来は中国の春秋時代までさかのぼり、覇者が行った武力での権力政治のことです。ちなみに、最初の覇者は春秋斉の桓公(かんこう)です。

孟子は覇道の対極として、道徳政治である「王道」を上げました。「王道」では人民が経済的に安定することを重視しています。

このように、政治的な意味での「王道」の対義語は、「覇道」であることを覚えておきましょう。

苦難

「苦難」は「苦しい状況や困難があること」という意味がある言葉です。

「楽な方法」「近道」などの意味をもつ「王道」とは反対の意味を表す言葉として、「苦難の道」などと表現します。

「王道」の英語表現

「王道」を英語で表す場合、意味によって用いるべき表現が異なりますので気を付けましょう。ここでは、「王道」のもともとの意味での英語表現を紹介します。

rule of right

「right」には「正しい」「正当な」などの意味があり、「rule」は「法則」「方法」などを意味します。「王道」を「正当な方法」という意味で使う場合、英語表現として「rule of right」が使えます。

royal road

「royal」には「国王の」という意味があり、「royal road」を日本語訳したものが「王道」です。「royal road」は「楽な方法」「近道」などの意味で使われます。

right

政治的な意味で「王道」を使う場合、英語表現として「right」が用いられることがあります。

関連して、「right and might」は直訳すると「正義と力」ですが、「王道と覇道」の英語表現として使われることもあるので覚えておきましょう。

  • 「王道」の英語表現

    「王道」の意味によって異な英語表現を覚えておきましょう

「王道」のいくつかの意味を知って正しく使いわけよう

現代において「王道」は、「物ごとが進むべき正当な道」や「定番」という意味でよく使われます。しかし、由来は中国の春秋時代までさかのぼり、本来は政治的な意味などをもった言葉です。

会話の中において、相手が使う「王道」の意味を正確に理解できるよう、それぞれの意味を知っておきましょう。