コネクテッドコマースは7月1日、AI技術を取り入れた未来型のカフェ「AZLM CONNECTED CAFE 渋谷地下街店」をオープンした。ICT環境はNTT東日本がバックアップし、オンラインのみの接客や、AIカメラによる来店者データの出展者フィードバックなど、新たな小売店のスタイルを体現している。オープンにかける両者の思いや、これまでの経緯を伺った。

時代に呼応した、新しい小売店をつくりたい

今回オープンした「AZLM CONNECTED CAFE」は、全国から寄せられた、あらゆるモノ・ヒト・コトを展示し、来店客が出会いを知られざる良品との楽しみながら、オンラインショッピングを楽しみ、マーケティングできる場。AIカメラやweb通話、オンライン決済などデジタル技術により買い物時の情報をデータ化し、出展者に還元される。

  • (左から)コネクテッドコマースの中村武治代表取締役社長、NTT東日本 経営企画部営業戦略推進室の田中恵士氏

コネクテッドコマースの中村武治代表取締役社長は、「ここには3つのハッピーが生まれるシステムがある。1つは、訪れたお客様がカフェという日常空間でおいしいものや素敵なものに偶然出会えること。2つ目に、出展された事業者様がわずかなコストでリアル店舗でのマーケティング等ができ、データをとれること。そして3つ目はフランチャイズとして展開する企業にとっての利益となることです。オープンからまだ数週間ですが、かなりの問い合わせをいただいております」と、順調なスタートを語る。

  • 「AZLM CONNECTED CAFE 渋谷地下街店」

商業コンサルのバックグラウンドがある中村社長は、こういったデジタル環境による商空間の構想をかねてより思い描いていたが、後押しとなったのがコロナ禍だった。2020年6月に、「研究所」としてカフェ機能を含む施設を東京・江東区に設立し、実証実験を開始。心臓部となるICT環境に課題を感じた矢先に、NTT東日本 経営企画部営業戦略推進室の田中恵士氏と出会い、想いに共感した両者での連携がスタートした。

「NTT東日本は、例えば日本酒の酒蔵での醸造工程スマート化など、ICT技術で各地域の事業者の方々と彼らの問題解決に取り組んでいます。AZLMは地域の事業者の方々にとても必要とされる存在であり、私たちにとっても連携していくことでNTT=光回線だけでなく、NTT=地方創生といったイメージを持ってもらえる存在だと感じました」(田中氏)

同年11月から2021年1月までストア機能に特化したポップアップストアを神奈川・横浜にオープンし、実証実験。2021年4月にはフードに特化したカフェ機能をもつ研究所を東京・渋谷スペイン坂にオープンし、ブラッシュアップを重ねて、今回のオープンに至った。

地方創生のためにできることが大きく広がった

NTT東日本は、店舗のICT環境構築、セキュア環境下でのデータ解析、インフラなどを一手に担う。ツールの目利きや費用とのバランス、どういったデータが必要とされているかなどを見極め、運用している。

  • NTT東日本のICT技術によって来店者の店内行動データや購入情報を解析

「技術面では我々にもわからないことが多い。お客様や事業者様の大切なデータがしっかり守られ、役立つシステムを作るには、NTTさんなら間違いないと思いました。作り手の想いをいかにデジタルを介して伝えるかなど、私たちのこだわりに応えてくれています」と中村社長。NTTはコールセンターの歴史も長く、音声認識やコミュニケーションに強みがあり、今回のデータ解析等でもNTTならではの力を発揮している。

田中氏も、「私たちは、日頃から事業者様のお悩みを聞くこともよくありますが、実店舗やフードメニュー開発などの販売支援はとても必要とされていることです。先日も、コロナ禍でイベントが中止になってしまった影響で行き場を失った茨城県産メロンが大量にあったのですが、スペイン坂のカフェで提供いただけることになりました。『茨城名物のメロンまるごとクリームソーダが東京でも食べられる!』と大変好評です。副産物でオリジナルメニューも作っていただき、生産者の方や茨城県の方にも、とても喜んでもらえました」と、連携による手応えを感じているようだった。

利便性をより良くし、全国展開へ

新商品のPR、新たな顧客層の獲得、テストマーケティングなどさまざまな要素を担う「AZLM CONNECTED CAFE」。今後はフランチャイズや直営店で、全国に2,000店の展開を目指す。

  • 「AZLM CONNECTED CAFE」展開イメージ

「お客様の日常の一部になれるような、毎日来られる場所を目指しています。素敵な商品についてデジタルを介してたくさん会話をして、もっと出会いを楽しんでもらいたい。決済方法の幅を広げるなど、これから利便性をもっと上げていきます」と中村社長。

オープンから2週間ほど経ち、新たな課題も見えてきた。地下街はよく音が響くために音声認識の調整が必要であることなど、出てきた課題に対してもアップデートが続く。

田中氏は「必要とされているデータやツールなど、店舗・出展者・消費者のニーズに応えられるものを引き続き見極めていきたい。地域の事業者様には、通信以外でもお困りごとがあれば私たちに相談してもらいたいです」と話した。