秋に正式リリースを予定する次期OSのiOS 15/iPadOS 15、macOS Montereyでは、アップルのOSが標準搭載する純正「マップ」アプリの地図表示が一段とリッチになるほか、新しい機能やユーザーインターフェースを追加する大型アップデートが予定されています。生活に欠かせない存在となったアップル純正マップアプリの進化を解説します。
今回は、iOS 15/iPadOS 15のパブリックベータ版をインストールした端末でマップアプリをテストしています。本稿の画面キャプチャは、取材に基づく特別な許可を得て掲載しています。
マップアプリの情報量が豊かに、表示が見やすくなる
アップルのマップは、現在世界の200を超える国と地域で、iPhoneやiPad、Mac、Apple Watch、CarPlayまで、アップルのさまざまなデバイスとサービスのユーザーに利用されています。アップルが公開するMapKitのフレームワークにより、サードパーティが自社のアプリやサービスにアップルのマップを組み込めるようにもなっています。
アップルでは、マップ情報の精度をさらに高めるため、自動車や人間が装備できるバックパックシステムを使ったデータ収集を独自に行っています。細かいエリア単位の地図情報は日々のアップデートによりブラッシュアップされていますが、秋の新OSの公開に伴うアップデートはより規模の大きなものになりそうです。
“触れる地球儀”からズームイン
マップは、画面のピンチイン・アウト操作によるズーム表示に対応しています。最もズームアウトした状態にした時に、指でスワイプ操作ができるインタラクティブな地球儀表示になります。
地球儀表示からズームインすると、地表は山脈の高低などが色分けされた状態になります。iOS 14まではフラットな水色で表示されていた海も、海溝の深さまでが描き分けられます。
例えば、アフリカ大陸の名峰キリマンジャロを3D表示に切り換えると、美しくディテールに富んだグラフィックスには、山肌の凹凸が細かく再現されます。ランドマークをタップすると、山の標高以外にも関連する写真や観光情報などをガイドから参照できます。
美しい3D表示。サンフランシスコのベイエリアを散策する
市街地の地図情報も精度がアップします。iOS 15のパブリックベータでは、米サンフランシスコのベイエリアにいち早く詳細な地図情報が追加されていました。
街の地図をズームインしていくと、各所に主要なランドマークのアイコンが表示されます。ランドマークの3D表示は、形状や色も実物により近くリアルになります。サンフランシスコの街は坂道が多く、移動する際には高低差にも気をつけなければならないことが、アップデートされたマップの表示を見てもよく分かります。
緑の多いエリアでは、樹木が生い茂る様子も再現されています。樹木の立体画像は1本ずつ手で描き込むのではなく、収集した画像データを元に近い形状の樹木を、立つ場所や本数もなるべく近づけながら配置しているそうです。
街の観光スポットにもなっているビルディングや公共施設、商業施設をタップすると、場所の説明や営業時間、関連する写真などが参照できます。そのまま双眼鏡のアイコンとサムネールが表示されている「Look Around」をタップすると、周囲360度の景色が見渡しながら、マップの画面タップ操作により近くを移動できます。
「Flyover」アイコンをタップすると、リアルな3Dイメージで街の上空を眺める“空の散歩”も楽しめます。
マイカーや公共交通機関による移動もマップがアシスト
マップの右上に表示されている乗り物のアイコンをタップすると、地図の表示をドライブマップや交通機関の表示に切り替えられます。
ドライブマップには、通りの名称や自動車用レーンの進行方向表示だけでなく、横断歩道やバス専用レーンなど、さらに詳細な情報がiOS 15以降から加わります。複雑に交差する立体ジャンクションの3D表示も圧巻です。
交通機関マップでは、目的地に到着したい時間、または出発時間を入力すると、現在の交通状況を反映したうえで最適な交通手段を提案してくれます。
日本の主要都市がアップルマップの詳細表示に対応する時点では、交通機関マップから鉄道・地下鉄の最寄り出口表示ができるようになりそうです。
サンフランシスコのベイエリアやニューヨーク、ロサンゼルスは、目的地の最寄り駅から最終目的地まで、ARを使ったナビゲーションがマップに組み込まれます。筆者も、地下鉄を降りて駅から地上に出た時に、目的地まで歩くべき方向が分からなくなることがあるので、この機能にとても期待しています。
コロナ禍により、国内外の街へ自由に旅立つことが難しくなってしまいましたが、代わりにアップルマップで旅気分を味わうのも良いかもしれません。アップルマップの情報量が増えることは、その街を訪れる人だけでなく、我が街として暮らす人にも多くのメリットをもたらしてくれるでしょう。マップアプリの新機能が日本の街でも早く使えるようになってほしいと思います。