マーケティングでは、市場や顧客について把握するためのリサーチも重要です。リサーチなきマーケティング施策では、顧客のニーズ・ウォンツに応えることができません。
リサーチは主に定量調査や定性調査などがあり、目的に応じて最適な手法を選ぶ必要があります。今回はマーケティング・リサーチの概要や具体的な方法について解説します。
マーケティング・リサーチとは主に情報の収集と分析
マーケティングにおける課題や仮説に対して、データの収集や分析を行うことをマーケティング・リサーチと呼びます。調査結果をマーケティングの意思決定に活用します。
マーケティング課題は多種多様ですが、例として以下のようなものが挙げられます。
・ターゲット顧客とすべきなのはどのような人なのか知りたい
・既存製品やサービスに対する不満、要改善点を把握したい
・製品コンセプトがターゲットに合っているのかチェックしたい
・価格が高すぎるか、競合と比べてどうなのかを確認したい
たとえば価格が高すぎるか調べたいときは、対象者に価格をいくつか提示して質問したり、実際の売上データが価格帯別にどう変化するか分析したりする方法が考えられます。
似た言葉に「市場調査」があり、市場調査は「これまでの傾向」、マーケティング・リサーチは「これからどうするか」をテーマとするのが違いと言われています。
ただし筆者の経験した現場ではそれほど明確に区別していませんでした。「これまで」「これから」の両方ともテーマとする分析が多いこと、どちらとも同じ部署が担当するケースが多いことが要因と考えられます。
マーケティング・リサーチの方法は主に3種類
マーケティング・リサーチを実施する方法は、大まかに下記の3種類に分けられます。
1.定量調査
定量調査は、結果を数値やパーセントなどの数字で表現される調査のことです。たとえば「商品Aの使用満足度は、10点満点中8点である」といった調査です。
市場の現状を把握すること、マーケティングに関する仮説を検証するために行われます。具体的な手法として、ネットリサーチ・会場調査・郵送調査などがあります。
2.定性調査
定量調査とは対照的に、数値化されないデータを収集するのが定性調査です。たとえば、商品を購入した理由、商品についての不満点などが挙げられます。
定量調査では判断しにくい、心理的な要素を探れるのがメリットです。
定性調査は対象者へのインタビューで行われます。1:1のデプスインタビュー、複数の対象者が参加するグループインタビューなどの形式があります。
3.パネル調査
定量・定性は、その時1回きりの調査設計であるのに対し、パネル調査は同じ調査設計で継続的に調査する手法です。
たとえば消費者パネル調査は、誰が・いつ・どこで・何を・いくらで買ったのか調べます。対象者にバーコードスキャナーを渡して、購入した商品を毎日スキャンしてもらい、価格なども入力してもらいます。
パネル調査は定点・継続であるため、調査結果のトレンドを把握できるのがメリットです。
定量調査の代表的な手法
定量調査の手法について、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
1.WEBリサーチ
WEB上で実施するアンケート調査で、現在最も主流な定量調査です。早く結果が出ること、コストが安いこと、多くの回答結果が得られることが主なメリットです。
その一方で謝礼が安いことから、回答が適当になってしまう恐れもあります。対策として、謝礼と回答負荷とのバランスを考慮すること、対象者を定期的に入れ替えることなどが必要です。
2.郵送調査
質問票・回答用紙を郵送し、用紙を返送してもらう調査です。インターネットに不慣れな高齢者でも回答しやすく、コストも比較的安く済みます。
郵送調査の注意点として、回答方法を間違える、未回答の欄が発生するケースがあることが挙げられます。解答用紙を分かりやすくすると同時に、丁寧で分かりやすい説明書を同封することが必要です。
3.会場調査(CLT)
対象者に特定の会場に来てもらい、商品やサービスの情報を提示して、その場で回答してもらう調査のことです。実際に商品サンプルを食べたり飲んだりしてもらった上で回答を得ることもできます。
ただし会場の設営やサンプル品の準備などのコストや手間がかかること、回答者が当日欠席する恐れがあるのが注意点です。会場調査の実績が豊富な調査会社に依頼することがおすすめです。
4.ホームユーステスト(HUT)
商品を対象者の自宅に送り、試してもらったうえで回答してもらう調査です。調査員が近くにいないので、本音に近い意見が得られやすいです。
その一方で商品の利用状況を監視できないため、モニターが取扱いを間違えてしまうことも。不適切な回答につながらないよう、丁寧で理解しやすい説明が必要です。
定性調査の代表的な手法
定性調査の具体的な手法について、メリット・デメリットを解説します。
1.グループインタビュー
回答者を5~6人程度集め、司会者が対面で会話をしながら行うインタビュー調査です。新商品・サービスを実際に目にしたり、情報を知ったりしたときの回答者のリアルな反応も観察できます。
商品やサービスについて、自由な発言を得られるのが最大のメリットです。複数人で話すことにより、会話が盛り上がると得られる情報も多くなります。
ただし、声の大きい特定の回答者が、他の回答者に影響を及ぼす恐れに注意しないといけません。各回答者の特徴をすばやく判断する、話が長引かないよう調整する、平等に話を振るなど、司会者の力量も問われます。
2.デプスインタビュー
深層面接法とも言い、インタビュアーと回答者が1対1で行うインタビュー調査のことです。
回答者の生活や行動実態を、より深く詳細に聞くことができるのがデプスインタビューのメリットです。グループインタビューと違い、他の回答者の意見に左右されることもありません。
しかし1人ずつ実施するため、グループインタビューよりも時間とコストが多くかかるのがデメリットです。聴取結果の情報量も多くなり、分析・レポート作成にも時間がかかります。
またグループインタビューよりも回答者の話す時間が長くなるので、体力・精神的な負担を軽減するような工夫もするのが望ましいです。
マーケティング・リサーチの手順
マーケティング・リサーチを進める具体的なSTEPについて見ていきましょう。
STEP1.調査目的の明確化
まずは調査を実施する目的を明らかにします。たとえば「お酒の新商品Aのコンセプトが、30代~40代でお酒を週に3回以上飲むヘビーユーザーに受け入れられるかどうかを調査する」といった具合です。
STEP2.調査の設計
具体的な調査の設計を行います。調査手法の決定、対象者の条件、聴取する期間、質問票の作成、集計の形式、報告・レポートの期限、調査費用など、リサーチ会社とも連携して進めます。
STEP3.調査の実施
作成した質問票や準備した会場・商品サンプルなどを使い、対象者に対して調査を実施します。回答を済ませた対象者には、ポイントや現金などで謝礼を支払います。
STEP4.結果の分析
調査が終了したら、収集したデータの整理や分析に移ります。たとえば定量調査ではクロス集計などでデータを集計していくことが多いです。パワーポイントなどでレポートとしてまとめます。
STEP5.意思決定
集計データやレポートから、マーケティング課題についての検証結果を関連メンバーで共有します。現状把握に加え、今後取るべきアクションも定めることが大切です。
以上、マーケティング・リサ―チについての3つの調査方法とその具体的な手法や手順をご紹介しました。
市場や顧客のニーズ・ウォンツは時代とともに少しずつ変化していきます。マーケティング・リサーチで顧客から情報を収集して分析し、仮説や課題をクリアにしながら商品やサービスづくりに活かしていきましょう。