新種目初代王者の誕生、夏季五輪史上初のきょうだい同日金メダル、強豪撃破――25日の『東京2020オリンピック』は日本勢の歴史的快挙が続いたが、それを伝える実況はいずれも、この日中継のなかったフジテレビのアナウンサーたちだった。SNSでは、聞き覚えのある声が他局の放送から流れることに違和感や不思議に思うコメントも見られたが、これは「ジャパンコンソーシアム(JC)」という枠組みで中継されているためだ。
NHKと民放の放送局で構成するJCは、オリンピックやサッカーワールドカップなど、大型国際スポーツ大会が開催される際に、放送権を獲得。そして大会が始まると、各局から派遣された、いわば“放送の日本代表”のスタッフ・アナウンサーたちによる混成チームで中継を行い、それが各局の放送に割り当てられることから、放送局と実況アナが異なる場合が多いのだ。
25日に行われた、今大会新種目のスケートボード・男子ストリートで堀米雄斗が金メダルを獲得した瞬間を放送したのはNHK総合だったが、実況はフジの倉田大誠アナ。解説の瀬尻稜氏が「鬼ヤバい!!」と興奮するのとは対照的な、落ち着いた状況説明がハマった。
柔道・阿部一二三が金メダルを獲得し、妹・詩とともに夏季五輪日本勢初のきょうだい同日金メダルの瞬間を伝えたのは、NHK BS1とテレビ朝日の放送で、フジの竹下陽平アナ。長年『世界柔道』を放送してきたフジで豊富な経験を持ち、「やっぱりお兄ちゃんも強かった!」の実況を生んだ。ちなみに竹下アナは、柔道・渡名喜風南の今大会日本初メダルの実況も担当している。
そして、男子サッカーグループA最強と言われたメキシコに勝利した試合は、NHK BS1とテレ朝の放送で、フジの西岡孝洋アナが実況。SNSでは「西岡孝洋アナは安心して見れる」「テレ朝放送で実況がフジテレビの西岡孝洋さんなのがなんだかオリンピック感」といった感想も見られた。
ちなみにJCは、前身のJP(ジャパンプール)を含めると、夏季大会は1976年のモントリオールから、冬季大会は1998年の長野から始まった方式。オリンピックについては、2032年の夏季大会までの放送権を獲得することについて、IOCと合意している。