「会社都合退職」と「自己都合退職」では退職金や失業給付金に差が生じます。自分にとってどちらを選択するべきなのかを知っておかないと、退職後に思わぬ損をしてしまうこともあるので注意が必要です。

本記事では、会社都合退職のメリットやデメリットなどについて、くわしくご紹介します。「自己都合退職にしてほしい」といわれたときの対処法も解説しますので、ぜひ参考にしてください。

  • 会社都合退職とは?

    会社都合退職の失業保険やデメリットなどについて解説していきます

会社都合退職とは?

会社都合退職とは、会社側の都合で雇用契約が終了して退職することです。下記のような事例は会社都合退職に該当します。

  • 倒産やリストラ
  • 職場の上司や同僚からのパワハラ、セクハラ
  • 賃金の継続的な未払い
  • 退職勧奨

など

働く意思があるにもかかわらず、会社の都合で退職を余儀なくされるケースは、基本的に会社都合退職となります。

「会社都合退職」と「自己都合退職」との違い

個人的な事由で退職するのは「自己都合退職」です。結婚や親の介護、病気療養、自ら希望した転職なども含まれます。問題を起こして免職や懲戒解雇となった場合も自己都合退職の扱いです。

コロナの影響による離職は「会社都合退職」になる可能性がある

新型コロナウイルスの影響による経営破綻や業績悪化で退職した場合は、基本的に会社都合退職になります。

失業給付金の受給内容が大きく変わってくるので、新型コロナウイルスに関わる退職と考えられるときには、会社都合退職になるのかどうかを事業主に確認しましょう。

  • 会社都合退職とは?

    会社都合退職と自己都合退職には大きな違いがあります

会社都合退職のメリットとデメリット

ここからは、会社都合退職のメリットとデメリットについて、くわしく解説していきます。退職事由によって失業保険の給付や転職に与える影響も異なるので要チェックです。

会社都合退職のメリット

会社都合退職の大きなメリットは、失業保険が給付されるまでの期間が短いことでしょう。自己都合退職の場合は、失業給付金が支給される前に「原則2か月間の給付制限期間」があります。

会社都合退職には、給付制限期間がありません。ハローワークに失業保険の申請をすれば、最長7日間の待期後に失業給付金を受け取ることができます。給付期間は最大で330日です。

会社都合退職のデメリット

履歴書に「会社都合による退職」の記載があると、転職の面接で確認事項が増える可能性があります。よほどの事情がない限り、会社が従業員を退職させることはありません。優秀な人材であればなおさらでしょう。そのため、会社都合で退職していると「マイナス要因で解雇されたのかもしれない」という疑念を持たれる恐れがあります。

新型コロナウイルスによる業績悪化であれば問題なく退職理由を明示できますが、トラブルを起こしたうえでの会社都合退職は、デメリットの方が大きいかもしれません。

  • 会社都合退職のメリットとデメリット

    会社都合退職には、転職で不利になるというデメリットがあります

自己都合退職のメリットとデメリット

自己都合退職にもメリットとデメリットがあります。個人的な理由で転職を検討している人は、しっかりと確認しておきましょう。

自己都合退職のメリット

自己都合退職をした場合は、履歴書の退職理由欄に「一身上の都合」と記載するだけで構いません。転職回数の多さや在職期間の短さが目につかなければ、面接官も退職理由を深く追及しないでしょう。

自己都合退職のデメリット

自己都合で退職した場合は、失業給付金が支給される前に「原則2か月間の給付制限」があります。ハローワークでの申請後は7日間の待期期間が設けられるため、給付金の支給開始は最短でも2か月と7日以降です。給付期間は最大150日と短く、退職金が支給されたとしても、会社都合退職に比べると支給額は大幅に少なくなります。

なお、新型コロナウイルス感染症に家族が罹患し、看護等が必要になった等、新型コロナウイルスの影響により自己都合で退職する場合は、正当な理由のある自己都合退職として、給付制限が適用されません。

いずれにしても、ハローワークでの判断になるため、上記に該当しそうな場合はハローワークに対して申し立てを行ってください。

  • 自己都合退職のメリットとデメリット

    自己都合退職には、失業保険や退職金の額が少なくなるというデメリットがあります

会社都合退職と助成金問題

厚生労働省は、民間企業の事業を支援するために助成金を支給しています。助成金の支給対象になるには一定の条件を満たさなければいけませんが、その条件に「過去6か月以内に会社都合退職を行っていない」というのがあるのです。

企業によっては会社都合での退職でも自己都合退職にさせようとしてきますが、その背景には助成金が絡んでいるのかもしれません。

「自己都合退職にしてほしい」と要求された場合

退職理由が会社都合退職に該当するのであれば、自己都合退職にしてほしいと要求されても受け入れる必要はありません。

会社都合退職は退職届や退職願を提出する必要がないので、会社側から提出を要求されても安易に了承せず、話し合いに持ち込みましょう。

  • 会社都合退職と助成金問題

    自己都合退職にしてほしいと要求されても、会社都合退職であることが明確なら受け入れる必要はありません

自己都合退職を会社都合退職等にする方法

退職時に自己都合退職として扱われても、次のような事例に該当すればハローワークで会社都合退職や正当な理由のある自己都合退職と認められることがあります。なお、正当な理由のある自己都合退職と認められれば、給付制限が適用されません。

  • 離職の直前6か月間のうちに、いずれか連続する3か月で45時間を超える時間外労働が行われたため退職した
  • 結婚に伴う居住地の変更で退職した
  • 通勤困難な場所に事業所が移転したので退職した

など

自分の意思に反して離職票に自己都合退職と書かれている場合は、離職票の「具体的事情記載欄(離職者用)」に必要な情報を記載してから、不当だと証明できるものと合わせてハローワークに提出しましょう。

  • 会社都合退職と助成金問題

    自己都合退職の扱いでも、ハローワークで会社都合退職あるいは正当な理由のある自己都合と認められることがあります

会社都合退職のメリットとデメリットをよく考えて決断を!

会社都合退職は失業保険や退職金といった金銭面で有利ですが、転職時にデメリットとなるケースがあります。とはいえ、明らかに会社都合であるにもかかわらず「自己都合退職にしてほしい」と要求された場合は拒否できるので、安易に承諾しないようにしましょう。

いずれにしても、自分にとって会社都合退職と自己都合退職のどちらがよいのかをよく考えてから決断することが大切です。

厚生労働省「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準
厚生労働省職業安定局「記入例:雇用保険被保険者離職票-2