フォルクスワーゲン(VW)で最もカッコいいクルマといえば、異論はあるかもしれないが「アルテオン」で決まりなのではないだろうか。2017年の「東京モーターショー」で日本に上陸したアルテオンは「ファストバック」というボディタイプで、スポーツカーのようでもありセダンのようでもある格好に渋い黄色(黄土色や金色のニュアンスを含む)の組み合わせが実にシックだった。
そんなVWのビジュアルリーダーがマイナーチェンジし、新たにワゴンタイプの「シューティングブレーク」が追加となったというので、さっそく試乗し、フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)商品企画課の沢村武史さんに気になる点を聞いてきた。ボディタイプが2つになったら、アルテオンの商品力は倍増するのだろうか?
荷室容量に大差なし! 何が違う?
アルテオンは「パサートCC」「フォルクスワーゲンCC」の流れをくむクルマだ。日本で年間を通じて販売した最初の年である2018年には、VGJの見込みを超える1,600台強が売れる人気ぶりを示した。
沢村さんによるとアルテオンが成功した主な理由は3つある。まずはデザイン、そしてパワートレインの選択、さらにはトータルとしてのパッケージングのよさだ。
パワートレインについていえば、アルテオンのルーツともいえるフォルクスワーゲンCCが1.8LのFF(前輪駆動)だったのに対し、アルテオンはよりスポーティーかつパワフルな構成となり、「グランドツーリングカー」(GT)としてのキャラクターを明確に打ち出せたことが功を奏した。パッケージングでいえば室内の広さ、荷室の大きさなど、使い勝手や居住性の面が高く評価された。
このサイズ、荷室で同じくらいの動力性能・駆動方式のクルマを探すと、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディであれば、アルテオンよりも100万円くらいは高価になる。「600万円前後でこの内容か!(いい意味で)」という驚きを与えられたところが、「アルテオン」が成功した要因だったのだろう。つまり、コストパフォーマンスに優れたクルマなのだ。
そのアルテオンに新登場したシューティングブレークは、ルーフがファストバックのようになだらかに下降していかず、ほぼ水平に後ろに伸びてから下に下がるボディタイプだ。ステーションワゴンのような形である。ワゴンタイプであれば荷室がかなり広くなっていそうなものだが、荷室容量はファストバックが563L~1,557L、シューティングブレークが565L~1,632Lなので、そこまで大きな差はない。
シューティングブレークの導入により、アルテオンの商品力はどう変わるのだろうか。極端にいえば、ファストバック1種類で年間1,600台の販売が、2種類になったことで3,200台に増えるような効果は見込めるのか。沢村さんの答えはこうだ。
「正直、倍になるとは思っていません(笑)。荷室についても、ファストバックもパッケージングに優れたクルマなので、容量はそこまで変わりません。ですから、積載性にひかれてシューティングブレークを購入するという方も、そこまで多くはないと思います。いざとなればファストバックより多くの荷物を積めますが、どちらかというとシューティングブレークは『ライフスタイル商品』といいますか、あえてこのクルマに乗ることで得られるもの、デザインを含めた所有する楽しさ、そのあたりが魅力の商品だと考えています」
荷物が多く積めるから欲しい、というよりも、カッコいいから欲しいと思ってもらうための新しいボディタイプ。それがシューティングブレークなのである。確かに、ファストバックよりシューティングブレークの方が好みという人は一定程度いそうだし、こちらに乗っている方が、周囲にはよりアクティブな印象を与えられるかもしれない。
ただ、一般論として、セダンとワゴンではワゴンの方が購入者の年齢層が低いというデータはあるそうなので、シューティングブレークの登場により、アルテオンがより若いユーザーの目にとまる可能性は上がるはずだ。