俳優の吉沢亮が主演を務める大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)。18日に放送された第23回「篤太夫と最後の将軍」では、徳川慶喜(草なぎ剛)が265年間続いた江戸幕府に終止符を打つ大政奉還が描かれ、日本の歴史が大きく動く重要なシーンを草なぎが見事に演じ切った。『青天を衝け』ならではの描き方となった大政奉還。第22~24回の演出を担当した田中健二氏が、演出の狙いや草なぎとのやりとりを明かした。

  • 『青天を衝け』で徳川慶喜を演じている草なぎ剛

前回に続いて、篤太夫たちがいるパリと、慶喜が大政奉還へ駒を進めた日本とが併行して描かれた今回。フランスからの借款は消滅したが、篤太夫が当面の資金繰りに奔走し、徳川昭武(板垣李光人)は留学を続けていた。そして、家庭教師のヴィレットのアドバイスで、篤太夫たちはまげを落として刀も外し、洋服を着ることに。

一方、日本では西郷隆盛(博多華丸)が軍備を整え、岩倉具視(山内圭哉)と大久保利通(石丸幹二)が王政復古への動きを進めようとするも、徳川慶喜(草なぎ剛)は先手を打って政権を帝に返上した。

田中氏は、大政奉還のシーンについて「慶喜公は、見方によって非常に評価が分かれる人物で、勉強すればするほどわからなくなっていくし、本当のところはどうだったのかもわかりかねますが、『青天を衝け』としては、なぜ慶喜公が、幕末にああいう手札に至ったのかという経緯を描きました」と解説し、「草なぎさんにも、そこに至った気持ちを軸にして演じてもらいましたが、いままでの幕末ものとはひと味違う感じの描き方になったと思います」と手応えを口に。

また、「徳川家康公とリンクさせるという隠し技も用意しました」とこだわりの演出に言及。「慶喜が大政奉還を宣言するシーンでは、史実として慶喜が家康公に関して言及したことが残っているので、草なぎさんに家康公への思いを馳せてほしいというオーダーをしたら、彼がすごくいいお芝居をしてくれました」と草なぎを称賛した。

さらに、「撮影後、草なぎさんに『感動しました』と伝えたら、草なぎさんが『台詞を言っているうちに、家康さまが降りてきたので、思わず感情移入してしまって、あんな感じになりました』と言っていて、草なぎ剛ってすごい!と思いました」と草なぎとのやりとりも明かし、「宣言はすごく難しい言葉なんですが、 “草なぎ慶喜”の気持ちをちゃんと出してくれたなと思いましたが、それは家康の言葉とリンクしたからこそ、湧き出た感情だったのかと感心しました」と、憑依的演技に魅了されていた。

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