自分の選んだ地方自治体に寄付する「ふるさと納税」。自治体を応援できるだけでなく、寄付のお礼として返礼品を受け取ることができる人気の制度です。しかし、ふるさと納税は、「確定申告の手続きが少し面倒」というデメリットがありました。それが、令和3年分から申告手続きが簡素化することになったのです。変更点や、新たな手続き方法をチェックしてみましょう。

  • ふるさと納税が簡素化、変更内容を分かりやすく解説します

    ふるさと納税が簡素化、変更内容を分かりやすく解説します

■ふるさと納税とは

ふるさと納税とは、自分が応援したい都道府県や市区町村などの自治体を選び、寄付ができる制度のこと。寄付を行うと、寄付先の自治体の特産品などを「返礼品」としてもらうことができます。返礼品は、肉や魚、果物やお米などのほか、工芸品や旅行、イベントやチケットなど自治体によって多種多様。こうした返礼品が受け取れることは、ふるさと納税の大きな魅力の一つと言えるでしょう。

さらに、ふるさと納税を利用して自治体に寄付を行うと、寄付金額から2,000円を差し引いた金額が、翌年の住民税から控除されるというメリットもあります。ふるさと納税は、返礼品がもらえることで注目を集めがちですが、返礼品はあくまで自治体からの「お礼」。「ふるさと納税を通して自治体に寄付をすることで、住民税・所得税の控除対象となる」という前提のある制度なのです。

なお、ふるさと納税自体は誰でも行うことができますが、控除については、受けられる人と受けられない人に分かれます。原則的に、控除を受けるには、寄付をする人が納税者であることが求められます。専業主婦が自分名義でふるさと納税を利用しても控除は受けられませんし、給与所得が103万円以下のアルバイト学生やパート主婦なども、同様です。

反対に、所得が多くたくさん税金を納めている人ほど、一般的に、ふるさと納税のメリットは大きくなります。ふるさと納税には、控除される金額に上限がありますが、収入が高く納税額が高額なほど、控除上限額も高くなるためです(控除上限額は、家族構成等によっても異なる)。

■ふるさと納税の何が変わった?

返礼品についてのトピックが取り上げられやすいふるさと納税ですが、最近話題になっているのは、「ふるさと納税の手続きが簡素化したこと」です。では、具体的にはどのような点が変更となったのでしょうか。

<手続きの変更点>

これまで、ふるさと納税の確定申告では、寄付ごとに「寄付金受領証明書」が必要でした。これは、寄付先の自治体が発行するものですが、申告の際には、これを1枚ずつ貼り付けて郵送したり、何度もデータを入力したり……という手間が発生していました。しかし、令和3年分の確定申告からは、特定事業者(国税庁指定のふるさと納税サイト)ごとに発行される「寄付金控除に関する証明書」が1枚あれば、手続きができるようになったのです。

さらに、これまでのように、個々に発行されていた寄付金受領証明書を見ながら、寄付額の合計を自分で計算する必要もなくなりました。確定申告書には、ふるさと納税した額(寄付額)の合計を記入する欄がありますが、今後は、特定事業者発行の証明書に書かれている合計額をそのまま転記するだけでいいのです。

<「寄付金控除に関する証明書」の入手方法>

「寄付金控除に関する証明書」は、特定業者のサイトからXMLファイルをダウンロードすることで手に入ります。確定申告をe-Taxで行う場合、このデータを税務署に送付します。e-Tax以外の方法で手続きを行う場合は、まず、ダウンロードしたXMLファイルを、国税庁が提供する「QRコード付証明書等作成システム」で読み込んでPDFに変換し、これをプリントアウトして書類にします。この書類を郵送または持参にて提出することで、手続きができます。

<手続きが簡素化するふるさと納税サイトは?>

「寄付金控除に関する証明書」を発行できる特定事業者は、国税庁によって定められています。特定事業者として指定されているふるさと納税サイトを以下にまとめてみました(令和3年3月31日現在)。

  • 手続きが簡素化するふるさと納税サイト一覧(令和3年3月31日現在)

    手続きが簡素化するふるさと納税サイト一覧(令和3年3月31日現在)

・ふるなび
・さとふる
・楽天ふるさと納税
・ふるさとチョイス
・ふるさとパレット
・ふるさとプレミアム
・ふるさとぷらす
・セゾンのふるさと納税
・ANAのふるさと納税

<手続きが楽になる人とは>

今回の手続き簡素化で恩恵を受けるのは、特定事業者のサイトからふるさと納税をしていて、複数の自治体に寄付を行い、自分で確定申告をしている人となります。ちなみに、複数のふるさと納税サイトで寄付を行っている場合は、サイトごとに証明書が必要となりますが、それでも、これまでと比べればずいぶんと手間が省けるはずです。

<ワンストップ特例制度を利用の場合は変更なし>

一方、「ワンストップ特例制度」を利用している人も多いでしょう。ワンストップ特例制度とは、確定申告の必要ない給与所得者等で、1年間の寄付先が5自治体以内である場合に利用できる制度です。ワンストップ特例制度を利用している場合はそもそも、確定申告は不要ですので、今回の手続き簡素化において変更点はありません。

■複数の自治体に寄付しやすくなったふるさと納税

手続きが簡素化するふるさと納税。いろいろな自治体に寄付しやすくなりましたね。ふるさと納税未経験の人も、これを機に、まずはふるさと納税サイトを覗いてみてはいかがでしょうか。