ソフトバンクのサブブランド「LINEMO」が、新たな料金プラン「ミニプラン」を発表しました。月額料金は990円で、データ容量は月間3GBまで。従来プランと同様にLINEのデータ量はカウントしない「LINEギガフリー」にも対応しています。サービス提供は7月15日から。サービス提供に合わせて、ソフトバンクの常務執行役員であり、LINEMOを担当する寺尾洋幸氏がLINEMOの取り組みを説明しました。

  • LINEMO「ミニプラン」

    LINEMOを担当するソフトバンクの寺尾洋幸常務

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    新たな料金プラン「ミニプラン」。容量3GBながら月額990円を実現

LINEMOは、ソフトバンクがMVNOのLINEモバイルを取り込み、サブブランドとして提供している低価格ブランドです。政府の要請をベースとして携帯大手3社が提供しはじめた「20GBプラン」のソフトバンク版であり、月間データ容量20GBを月額2,728円で提供しています。

LINEMOの特徴は、ソフトバンクと同一品質のネットワークながら、オンライン専用で契約やサポートコストを削減し、20GB3,000円以下を実現したこと。LINEのトークやLINE電話をカウントしないLINEギガフリーも用意されているので、LINEをよく使うユーザーであれば、使用通信量を節約できるでしょう。

さらに寺尾氏は、特徴の一つとして、eSIMとeKYCでスタートした点も「大手キャリアでは初めてではないか」と話します。

  • LINEMO「ミニプラン」
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  • 3月17日からサービス開始したLINEMO。オンライン専用でコストを下げ、20GBで2,728円という料金を実現。加えてLINEの利用でデータ量をカウントしないLINEギガフリーも用意します。ソフトバンクと同一ネットワークで同一品質という点もポイント

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    大手初のeSIMとeKYCによる完全オンラインの契約を可能にしましたが、当初はトラブルが多かったといいます

LINEMOを20GBプランでスタートしたところ、LINEモバイルの契約数に対して前年の2倍以上という大幅な契約者増を実現しました。ソフトバンクからの移行も多かったそうですが、寺尾氏は一定の契約者を獲得できたとの認識。ただし、NTTドコモの同種プラン「ahamo」に比べると「まだまだこれから」という数とのことです。

また、LINEMOではサービス提供開始当初、さまざまなトラブルが発生しました。特に「eSIMは結構な問い合わせたきた」(寺尾氏)そうです。そのなかでも契約時の「APN」「プロファイル」「ネットワーク暗証番号」「SIMロック解除」といった項目に、多くの問い合わせがあったと言います。

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    問い合わせで特に多かったのがこの4項目

物理SIMではほとんどの契約者が引っかからずに済んでいることから、まだ新しいeSIMというサービスゆえの課題が表面化したのでしょう。ただ、サービス提供を急ぐあまり、ソフトバンク側の準備が整っていなかった問題もあり、同社では「アジャイル開発」として毎週改善を続ける作業を行ってきたそうです。

これまで400項目以上の改善を行ったことで、eSIMで契約したユーザーの継続意向(NPS)は順次上昇。物理SIMでの契約者の意向も上昇しており、「この先は別の手順に変えないと改善しないところまで来た」というレベルになったと寺尾氏は言います。ちなみに、LINEMOでeSIMを選択したユーザーは「現在は2割ぐらい」(同)とのことです。

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    満足度とは異なる指標ですが、NPSの調査では、契約プロセスの改善などでeSIMユーザーの移行が大幅に改善してきており、結果として物理SIMのユーザーの数値も上昇

結果として、特に30代以下のデジタルネイティブ世代では料金に対する満足度が93.3%まで上昇。ワイモバイルやドコモのahamoと同レベルまでこぎつけることができたと寺尾氏はアピールします。

ちなみにLINEMO契約者の7割近くが30代以下で、これに対してワイモバイルの契約者は、「日本の人口比よりも少し高い年代の人の割合が多い」(同)そう。これは、やはり店頭サポートの有無が影響しているとみられます。

料金の満足度も高く、LINEMOでは平均15GB使われるなど、データ利用の多い人も増えています。しかし、一般的なスマートフォンユーザーの「6割ぐらいが3GB以下しか使っていない」と寺尾氏。さらに、MVNOのLINEモバイルユーザーだと82%が3GB以下だったそうです。

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    若い世代の満足度が高く、料金の安さやLINEギガフリーなどが選択理由になっています

  • LINEMO「ミニプラン」

    市場全体では3GB以下のユーザーが多数

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    LINEモバイルだとさらに3GB以下のユーザーが多い

LINEモバイルは当面サービスを継続し、ユーザーの強制移行は行わない方針ですが、それでもLINEMOで低容量のニーズを吸収し、ユーザーの移行を促すための施策がミニプランの提供です。

これによってLINEMOの裾野を広げていきたい考え。LINEMOでは、LINEギガフリーに加えて、1年間は5分間かけ放題の通話準定額オプション(月額550円)を無料で提供しています。ワイモバイルのシンプルSプランは月額2,178円で容量3GBですが、家族割引サービスを併用することで月額990円になります。これに対してLINEMOのミニプランは前提条件なく3GB990円であり、そこが差別化になるとしています。

従来のプランは「スマホプラン」として変わらず提供。両者を比較すると、データ通信量超過時の制限速度が、スマホプランの1Mbpsから300kbpsと抑えられています。スマホプランではLINEスタンププレミアムが利用できるサービスもありますが、ミニプランにはありません。

  • LINEMO「ミニプラン」

    従来プランとの比較。従来のLINEMOのプランはスマホプランになります

ネットワークの性能は変わらず、5Gも利用できるので、LINEモバイルと同じ容量・料金であれば、通信品質の面でLINEMOのほうが有利になります。ちなみに、LINEモバイルには、LINE以外のSNSなども対象になったギガフリーのサービス「データフリー」がありますが、寺尾氏によれば「(LINE以外の利用は)そんなに多くない。LINEのギガフリーの需要が多い」そうです。

ミニプランの提供に当たっては、楽天モバイルが採用した階段型の料金プランも検討したそうですが、ユーザーが料金をコントロールできない面がある、として採用を見送ったとのこと。「1GBに収めて安くしたい」と思っていても気付いたらオーバーしていた、といったことが起こりえるからです。

そのため、ニーズの高い3GBの低容量プランで低価格化。LINEモバイルでも低容量で安く済ませている若い人は多く、そうしたユーザーの取り込みも狙いたい考えです。また、それは同時に他社MVNOからの取り込みにもつながります。

もちろん、「楽天モバイルも当然意識した」と寺尾氏。3GBで足りない人は、20GBのスマホプランへ移行できますし、さらに無制限のソフトバンクブランドでのサービスに移行することもできます。そうしたアップセルへのつながりも期待しつつ、基本的には低容量・低料金のニーズに対応するためのプランがミニプランです。

ソフトバンク、ワイモバイル、LINEMOという3つのブランドを提供する同社は、それぞれのブランドで差別化が必要で、3ブランドでニーズに応え切れていない部分として、今回ミニプランを提供。結果として「ワイモバイルのシンプルSプランには影響が一定数ある」と寺尾氏は推測しつつ、シンプルSは初めてスマートフォンを持つ高い年齢層の人が増えていることから、店頭サポートのあるワイモバイルのニーズがあり、すみ分けができると判断しています。

そのため、LINEモバイルに多い若者で3GB以下の人のニーズを取り込みますが、3GBでニーズを満たせるのか、今後さらなる容量が求められるのか、そうした点はサービス提供後に検討していきます。

低容量プランでは、ドコモが「エコノミー」としてMVNOと協業するプランを提供する計画ですが、サービス提供が遅れており、ソフトバンクがLINEMOで先行する形になりました。

MVNOの値下げも始まり、携帯各社のサービス・料金競争がさらに激化することになりそうです。