米Microsoftは7月14日(現地時間)、Windows環境をクラウドで運用して端末にストリーミングする新サービス「Windows 365 Cloud PC」を発表した。企業・ビジネスを対象に8月2日に提供を開始する。ユーザーはクライアントに様々なデバイスを使って、場所を問わず自分のWindows環境を利用できる。Windows 10、そして年内に登場予定のWindows 11の体験を提供する新たなサービスであり、同社は「Cloud PC」を特にハイブリッドワークのニーズを満たす「パーソナルコンピューティングの新カテゴリー」とアピールしている。
テレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッド型のワークスタイルが日常化する中、オフィスワークにおけるテクノロジーや生産性をハイブリッド環境に対応させるニーズが高まっている。Work Trend Indexによると、73%のワーカーが柔軟なリモートワークのオプションの維持を求めている一方で、67%のワーカーが新型コロナ禍が収まったら対面でのコラボレーションを増やしたいと考えている。そのパラドックスを乗り越えるために、ハイブリッドな働き方においてどのように社員がつながり、オフィス以外の場所でも組織のリソースにアクセスできるようにするかが課題になる。
Windows 365は、デスクトップ仮想化を用いてWindows 10またはWindows 11のデスクトップ環境をクラウドからストリーミング提供する。ユーザーは、Windows PC、Mac、iPad、LinuxデバイスやAndroidデバイスといった様々なデバイスをクライアントに、クラウド上のWindows環境にアクセスする。
通常のパーソナルコンピューティングでは、作業中に使用しているデバイスを切り替えると、新たにアプリケーションを起動して作業していたファイルを開くといった手間が必要になる。クラウドにあるWindowsにアクセスするCloud PCなら、同じWindows環境で前回中断したところから再開できる(Instant-on boot体験)。ホテルの部屋のノートPC、移動中に使うタブレット、オフィスのデスクトップPCなど、どこにいても継続的に仕事を進められる。
Windows 365は、Azure Virtual Desktop(旧称Windows Virtual Desktop)をベースに構築されている。従来のデスクトップ仮想化ソリューションに対して、Windows 365は使いやすさと管理のしやすさで差別化を図っている。仮想化の導入を検討していても、複雑すぎたり、社内に専門知識がなくコストがかかるといった理由から実現に漕ぎつけていないビジネスをサポートするソリューションだ。
「シンプルさ」を徹底した設計になっており、ビジネスの規模に合わせてCloud PCのサイズを選択し、社員にCloud PCを割り当てて利用を開始する。物理的なハードウェアを設定・管理する必要はなく、Zero Trustに基づいて継続的に脅威から防御するクラウドセキュリティの安心感を得られる。
料金はコストを見通しにくい従量制ではなく、シンプルで分かりやすいユーザーごとの月額制を採用。仮想CPU×1/2GB RAM/64GBストレージ(フロントラインワーカーやCRMなど向け)から仮想CPU×8/32GB RAM/512GBストレージ(ソフトウエア開発やエンジニアリングワークステーション向け)まで幅広いライセンスが用意されており、組織向けに「Windows 365 Business」と「Windows 365 Enterprise」を提供する。料金は8月2日までに公表する予定。
ハードウェアの制限などから、デバイスによって利用できるWindowsの機能は以下のように異なる(Xは利用できる機能)。
Windows 365は、Microsoft 365、Microsoft Dynamics 365など、Microsoftのビジネスアプリケーションをサポートする。独立系ソフトウェアベンダ(ISV)が開発したWindowsアプリケーションをクラウドで提供することも可能。Cloud PCを活用した独自のソリューションを提供できるようにAPIを公開する。Tech Communityブログにおいて、Nerdio、UKG、Service Now、Net AppといったISVによるWindows 365の様々なユーザーシナリオをサポートするソリューションを紹介している。