育児休業を取得するにあたり、心配になるのが金銭面です。通常通り働けない分に代わり、何の手当てがどれくらいもらえるのかと不安な方も多くいることでしょう。給与面で言えば、いくつかの条件に該当すれば「育児休業給付金」(育休手当)が支給されます。
本記事では、気になる育児休業給付金の支給額や支給条件をはじめ、申請方法や実際の支給時期など、給付金に関するあれこれをまとめてご紹介します。
育児休業給付金とは
育児休業給付金とは、母親もしくは父親が子どもを養育するにあたり仕事を休まなければいけない期間(育児休業期間)に、手当てとして給付されるお金のことです。労働者が育児を終えても同じ事業主のもとで継続的に働けるよう援助、促進することを目的として作られました。
育児休業と育児休暇の違い
育児休業(育休)と似た言葉に「育児休暇」があります。前者は「育児・介護休業法」(「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)という法律に定められている制度ですが、後者は事業主が独自に設置する休暇制度の一つです。
2017年に改正された育児・介護休業法では、事業主に向けて「育児目的休暇の設置」が努力義務として課されました。ただ、企業ごとにその導入の有無は異なり、名称も会社によって異なるようです。
勘違いしないでいただきたいのは、育児休業に給付金は支給されても育児休暇に対して給付金は一般的に支給されないという点です。「育児休暇給付金」という言葉は誤りで、「育児休業給付金」が正しいと覚えておきましょう。
育児休業給付金の給付条件
育児休業給付金は、一定の条件を満たされなければ給付を受けることができません。詳しく見ていきましょう。
受給資格のある者
・1歳未満の子どもがいる母親または父親
・育児休業を取得後、会社に復帰する意思のある者
・雇用保険に加入していた者(※育児休業を取得する直近2年間で、11日以上働いた月が12カ月以上ある)
「雇用保険に加入しており、保険料を払っていること」「過去2年間の中で11日以上労働した月が12カ月以上ある」という条件を満たさないと、育児休業給付金を申請できません。
そして育児休業給付金は、原則として育児休業終了後に職場復帰することを容易にしたり、促進させたりするための制度なので、勤務していた会社を退職する予定がある人は給付対象外となります。
育休中の給付条件
・育休中の給料が、育休手当が支給される前の給料の80%未満であること
・育休中の労働は月10日以内であること
育児休業給付金の給付中に就労した場合、育児休業前にもらっていた賃金の8割以上の金額を会社から受け取ると支給停止となります。また就労しながら給付を受ける条件収入以外に、労働日数が月に10日以下である(80時間を超えなければ10日以上労働可能)ことが定められています。
育児休業給付金の支給期間
ある程度まとまった期間会社を休むとなると、心配になるのが金銭面です。労働の対価として支払われるお給料ですが、休暇中は労働をしないため、原則として会社から支払われることはありません。しかし、それでは子供を養育しなければいけないのにも関わらず生活に支障をきたしてしまいます。そこで登場するのが育児休業給付金です。
育児休業給付金の支給期間は性別で異なる
この育児休業給付金は、雇用保険から給付されるもので、支給期間は性別によって異なります。
【男性】
男性は原則として配偶者が子どもを出産したその日から、子どもが1歳の誕生日を迎える前日までの1年間となっています。
【女性】
一方の女性は、出産後8週間は産休扱いになるので、9週目から子どもが1歳の誕生日を迎える前日までの10カ月となっています。
育児休業給付金の支給期間の延長条件
原則、子どもが1歳の誕生日を迎える前日までとされている「育児休業給付金」の支給期間ですが、以下の条件を満たせば支給期間の延長が可能です。
- 1歳(1回目)と1歳6カ月(2回目)まに保育所などが見つからず、働きに出られない
- 配偶者が亡くなった
- ケガや病気、精神上の問題により、育児が困難な状態である
- 離婚や育児に関わる配偶者の不在
- 6週間以内に出産、もしくは産後8週間以内
これらの条件に当てはまる場合は引き続き子どもの養育や休養が必要なので、最大で子どもが2歳の誕生日を迎える前日まで育児休業給付金の支給期間を延長することができます。
育児休業給付金の支給額の計算方法
育児休業給付金をもらえるとなっても、はたして手当てだけで生活できるものなのかと心配している方も多くいることでしょう。
実際いくら受給できるのかが気になる方は、以下の算出方法で受け取れる金額を計算できます。ただし、6カ月目までと7カ月目からで支給される金額が変わるので注意が必要です。
・6カ月目まで
育児休業が始まる前の6カ月間にもらったお給料の総額から賞与を除いた額÷180×67%×支給日数
・7カ月目から
育児休業が始まる前の6カ月間にもらったお給料の総額から賞与を除いた額÷180×50%×支給日数
このように、6カ月目までは、育児休業取得前にもらっていた金額の67%がもらえますが、7カ月目からは、育児休業取得前にもらっていた金額の半分に減額されます。
育児休業給付金の申請方法
ここからは育児休業給付金の申請方法について詳しく見ていきましょう。
育児休業給付金の申請の流れ
まず、育児休業給付金の申請の流れをご紹介します。
1.育児休業給付金の申請を会社の管轄部署(総務/人事部など)に報告
育児休業給付金の申請をするにあたり、まずは社内の従業員の育休を管轄している部署に連絡をとり、育児休業給付金の給付を受けたい旨を伝えましょう。一般的には人事部や総務部などが担当しています。
2.管轄のハローワークに書類を申請
担当部署の指示に従い、個人で直接ハローワークに申請するか、会社を通して申請するかを決定します。ただ、本人が希望する場合を除いて、勤め先の事業主が本人の代わりに申請するのが一般的です。
必要書類をそろえて必要事項を記入した後、会社を介して提出する場合は、担当部署に書類を提出。個人で提出する場合は、勤務先である会社の所在地を管轄しているハローワークに必要書類を提出という流れです。
【必要書類】
- 育児休業給付受給資格確認票
- 育児休業給付金支給申請書
これらの書類に加え、母子健康手帳と受取口座の通帳の写しを会社側に提出するのも忘れないようにしておきましょう。
2カ月ごとに追加申請の必要あり
育児休業給付金の申請は、1度手続きしたら終わりというわけではありません。継続して手当てをもらい続けるためには、原則として初回の申請以降は2カ月ごとに2カ月分をまとめて申請していく必要があります。
育児休業給付金が実際に支給される日
初回の育児休業給付金が実際に入金されて使えるようになる時期は、申請してからおよそ2カ月と言われています。その後は、2カ月おきの決められた日に2カ月分まとめてもらうようなかたちです。
育児休業給付金は受け取れるまでそれなりに時間がかかってしまうので、この手当がなくても生活していけるだけの貯蓄は育休取得前に準備しておいたほうがいいでしょう。
育休前にもらえる育児休業給付金の額を計算しておきましょう
育児休業給付金として自分がいくらもらえるかは、誰でも簡単に算出できます。時期によって育休前のお給料の50%から67%が支給されますが、すぐに入金されて使えるようになるというわけではありません。事前に貯蓄をしっかりとしておき、育休に向けて計画的に準備をしておくようにしましょう。