7月15日にスタートするフジテレビ系ドラマ『推しの王子様』(毎週木曜22:00~)に主演する女優の比嘉愛未。当初主演を務める予定だった深田恭子の病気療養による降板を受け、まさに緊急登板となったが、それを“運命”と捉え、すぐにオファーを受ける覚悟を決めたと明かす。

そうした心境になれたのは、30代に入って変化を楽しめる自分になれたからなのだそう。そして、突然出会った男を理想の男性に育てるために奮闘する女性を演じるラブコメディの今作に、コロナ禍の今、エンタテインメントとして表現することの“運命”も感じていると語る――。

  • 『推しの王子様』に主演する比嘉愛未 撮影:蔦野裕

    『推しの王子様』に主演する比嘉愛未 撮影:蔦野裕

■最初は「どういう感情か言葉にできない気持ち」に

――緊急登板となった今作ですが、オファーを受けたときの心境からお聞かせください。

最初は驚きました。そのときはどういう感情か言葉にできない気持ちでした。でも、不思議と迷いはなかったんです。きっとこれは運命で、今、私がやるべき使命なんだと思ったときに「やり遂げよう」と覚悟を決めたので、いろいろ悩んだり考えたりするんじゃなくて、とにかく来たものに誠実にお応えしようという気持ちでお受けしました。

――6月からこちらも主演ドラマの『にぶんのいち夫婦』(テレビ東京)がスタートしていますが、撮影期間は重なっていないのですか?

お話を聞いたときはまだ撮影中だったので、少し感情的にも混乱はしましたけど、撮影自体重なることはなかったんです。その分、準備期間はすごく短かったんですけど、逆に前の作品からそのまま入れて良かったのかなと思います。1回気が緩んでしまうと、なかなかモチベーションも切り替えられないので、今思うとすべてのタイミングが不思議なくらい合った感じがするんです。実はこの期間に他の作品の予定があったのですが、それがずれたりして、次はどんな作品との出会いがあるんだろうなと思っていたところでの今回のお話でした。

――比嘉さんの代役が発表されると、大きな反響の声が集まりました。

自分以上に周りや世間の反応がすごすぎて、当初はそれに驚いていました。ただ、ドラマを作る側の気持ちも分かりますし、きっと私の想像以上に大変なことだと思うので、少しでもその不安要素に対して自分にできることがあれば助けられたらという気持ちはありました。本当に純粋な気持ちでこれも何かの縁だと思うので、おごらず誠心誠意やるしかないなという覚悟で、迷いはないです。

■『マルモのおきて』スタッフへの信頼

――インスタグラムでは「千変万化」(=事態が次々に変化していくこと)という言葉で決意を表明されていました。

30代に入ってから、その気持ちが強くなっているんです。自分の予想範囲を想定しながら動くより、何があるか分からないけど、それを楽しんで変わっていこう、進化していこうという気持ちがどんどん増えたんですね。20代の頃は、それこそ必死で周りのことも見られないくらい余裕がなかったんですけど、今はその変化を楽しめる余白ができたので、そうなると仕事もプライベートも、いろんなことがより楽しめるようになって、自分らしくいられるようになったんです。まさに今回はそういうめぐり合わせだなと思ったので、とにかく楽しもうという気持ちで「千変万化」と書きました。

――先ほど「作る側の気持ち」というお話がありましたが、今作は河野圭太監督や、脚本の阿相クミコさんなど『マルモのおきて』(11年)のスタッフもいらっしゃいます。その信頼も大きいですか?

それはものすごく大きいですね! 10年前ですが、『マルモのおきて』も撮影が始まってすぐ東日本大震災があったので、放送がどうなるのか不安な部分があったんです。でも、あの時代だったからこそ、家族の絆を描いた『マルモのおきて』という作品が響いたのだと思います。そういう意味では、今回の作品もメッセージ性があると思うんです。

コロナによって自粛自粛になってしまうと、どうしても気持ちを塞(ふさ)いでしまい、皆さんストレスを抱えていると思うんです。そんな中で、今回はどよんと沈むような作品ではなく、キラキラして「笑っちゃうなあ」とか「このキャラクターたちがなんか憎めないなあ」と思ってもらえるような話なので、今はそれがエンタテインメントとして表現する良い時期だなと思いました。

――そこも含めて、運命的な作品なんですね。

本当にそうです! すごく不思議な力で導かれたような感覚があります。