自身の健康管理に対して意識を高める人が増えるなか、アップルのApple Watchがアクティビティトラッカーやヘルスケアデバイスとしても注目されています。
この秋、Apple Watch向けの最新OSである「watchOS 8」が正式リリースを予定しています。7月から先駆けて配信が始まったパブリックベータ版のwatchOS 8を試して、便利に、あるいは楽しく使えそうな新機能を紹介したいと思います。
なお、アップルの最新OSのパブリックベータ版はその画面を公開することは禁じられていますが、今回の記事では取材に基づく特別な許可を得て掲載しています。
Series 3から対応するも、使える機能が限定される場合も
はじめに、秋にリリースされるwatchOS 8が導入できるApple Watchの対応機種を確認したいと思います。ラインナップは下記の通りです。
- Apple Watch Series 6
- Apple Watch SE
- Apple Watch Series 5
- Apple Watch Series 4
- Apple Watch Series 3
2017年モデルのApple Watch Series 3は、2021年7月現在も21,780円から買える“最も安価な現役のApple Watch”として人気のモデルです。watchOS 8の新機能の中には、新しいモデルにしかないハードウェアを利用するものや、コンプリケーションがたくさん配置できる文字盤など、一部利用できない機能もありますが、ともかくSeries 3もwatchOS 8の対応機種に含まれているのはうれしいポイントといえます。
ポートレートが動く! 写真系の新文字盤が充実
まずは、Apple Watchを楽しくカスタマイズできる「文字盤」の新機能から試してみます。watchOS 8では、iPhoneで撮影した写真が、Apple Watchの動的な文字盤として設定できるようになります。
特に面白いのが、iPhoneの「ポートレートモード」で撮影した写真を文字盤として使えること。デジタルクラウンを回すと、被写体の人物がグンと前に迫り出してくるような効果が楽しめます。
ひとつの文字盤に最大24枚のポートレート写真を設定しておけば、手首を上げたり、Apple Watchの画面をタップするタイミングで写真が切り替わります。時刻表示は3種類から選択でき、コンプリケーションは2つ配置できます。
iPhoneの写真アプリの「メモリー」と「おすすめ写真」にまとめられた写真が、watchOS 8では「写真」の文字盤を選択した時に同期できるようになります。iOSのWatchアプリから写真の文字盤を設定する際、コンテンツの指定は「ダイナミック」を選びます。iOSの写真アプリのメモリーが追加されると、文字盤の写真にも反映されます。
このあとでまた詳しく触れますが、watchOS 8から「マインドフルネス」という新機能が加わり、従来は「呼吸」アプリとして切り出されていた機能がマインドフルネスの中に統合されます。合わせて、呼吸アプリのデザインも新しくなりました。新デザインの「呼吸」文字盤もデザインが変わります。
メッセージアプリでお気に入りの楽曲を共有
「メッセージ」関連の機能では、まずwatchOSに標準搭載されている「ミュージック」アプリから、お気に入りの楽曲をメールやメッセージを使って共有できる機能が追加されます。ジョギングのペースメーキングにぴたりとハマった楽曲を見つけたら、ふだんからアクティビティリングの達成競争で励まし合っている仲間に教えてあげることもできます。
また、Apple WatchのメッセージアプリにGIFアニメーションのライブラリが対応しました。
Apple Watchから「集中モード」をセットする
iOS 15、iPadOS 15の新機能でもある「集中モード」がApple Watchとスムーズに連携します。
iPhoneの集中モードの設定から「デバイス間で共有」をオンにすると、切り替えたモードがiPhoneとApple Watchのそれぞれに素速く反映されます。設定から「集中モード状況を共有」の項目をオンにしておけば、ユーザーがいま通知を受け取りたくない集中モードに入っていることをメッセージアプリが伝えてくれます。
例えば、「パーソナル」モードの設定から、指定した連絡先とアプリ以外は「1時間」のあいだ通信を絶つようにあらかじめカスタマイズしておき、オンラインミーティングやお稽古ごとの時間に集中する、といった便利な使い方が考えられそうです。
「マインドフルネス」アプリで心のケアも万全
Apple Watchは“カラダの健康”に気を配るための機能を多数揃えるスマートウォッチですが、watchOS 8には“ココロの健康ケア”にも最適な新機能「マインドフルネス」が追加されます。
マインドフルネスは、まだ聞きなじみのない言葉かもしれませんが、いま欧米を中心に多くのビジネスパーソンやアスリートが心と身体のバランスを整えるための瞑想法としてこれを採り入れています。
watchOS 8は、簡単に1分間から実践できる瞑想エクササイズとして、このマインドフルネスをアプリ化して搭載しました。マインドフルネスは、コンプリケーションとして文字盤に置くこともできます。実践成果は、Apple WatchをペアリングしているiPhoneのヘルスケアとフィットネスの両アプリから履歴を見ることができます。
マインドフルネスアプリには、2016年に登場したwatchOS 3から標準搭載が始まった「呼吸」と、新設された「リフレクト」を合わせた2種類のセッションが含まれています。呼吸はその名前の通り、深呼吸による瞑想をサポートしてくれるセッションです。Apple Watchの画面に表示されるアニメーションと触覚フィードバックがペースメーキングを助けてくれるので、オフィスや通勤電車、キッチンなど場所を選ばずに実践できます。筆者も原稿を書きながら、集中力が落ちてきたときによく呼吸を立ち上げています。
新しいリフレクトは集中力を高めたり、心を落ち着かせて前向きな気持ちに切り替えたりする時に効果が期待できるセッションです。呼吸と同様に、リフレクトもセッションのスタート前に長さを1~5分まで1分間隔で選択ができます。Watchアプリの設定で定時にリマインダーを仕掛けておけば、毎日忘れずに実践できます。
リフレクトのセッションを開始すると、Apple Watchの画面に気持ちを落ち着かせたり、自分の心の内面と向き合うように促すメッセージが表示されます。続いて、画面に表示されるきれいなアニメーションに視線と精神を集中させることにより、いつでも手軽に良質な瞑想が行えます。アップルでは、リフレクトと呼吸のセッションはどちらも科学的な知見をもとに作られたものであるとしています。まめに毎日セッションを続けることでココロの平安を獲得できれば、Apple Watchユーザーとして冥利に尽きると思います。
呼吸とリフレクトは、1分以上のセッションの記録がiOSのヘルスケア、またはウェルネスアプリに残ります。あとから履歴を辿りたい時に役立ちます。
睡眠アプリは呼吸回数の記録にも対応
watchOS 7から新しく加わった「睡眠」アプリは、watchOS 8では寝ている間に1分あたりの呼吸回数が記録できるようになりました。
さらに、ヘルスケアアプリに新しく加わる「トレンド」の機能からは、睡眠の記録を過去のデータと並べて、長期にわたる健康状態の変化が見られます。ヘルスケアのトレンドは、Apple IDとiOS 15を入れているiPhoneのユーザーであれば、離れて暮らす家族や友人に「共有」もできるので、工夫次第で家族の見守り用途などさまざまなことに役立つかもしれません。
楽しみなスマートホームとデジタルキーの機能も
HomeKitに対応するドアベルと玄関のスマートライトを連動させてホームセキュリティに役立てたり、動作状況をwatchOS標準のホームアプリからモニタリングできるようになったり、スマートホームのリモコンとしてApple Watchが便利になります。「ウォレット」アプリに車や家のデジタルキーを登録すれば、Apple Watchをタッチして施錠・解錠の操作もできるようになります。ホームとウォレット、各アプリの新機能はまた使い勝手を報告できる機会に紹介したいと思います。
最後に、ほかのアップルデバイスのパブリックベータ版OSと同様に注意事項があります。watchOS 8のパブリックベータ版は、機能がまだ安定して動作しないものや、バグが含まれているものがあります。そのため、これを試す際には現在メインで使っている端末以外に、サブのApple WatchでwatchOS 8に対応するものを使って試すことをおすすめします。