注目の戦型は両者得意の相掛かりとなった

第80期A級順位戦(主催:朝日新聞社、毎日新聞社)の1回戦、▲山崎隆之八段-△斎藤慎太郎八段戦が7月2日に関西将棋会館で行われています。山崎八段にとっては本局がA級デビュー戦。棋界有数の個性派棋士は、A級という舞台でどのような戦いを見せてくれるのでしょうか。


第80期A級順位戦リーグ表

山崎八段は17歳で四段に昇段し、27歳でB級1組に昇級。その実力、才能からA級昇級は時間の問題と思われていましたが、そこから苦戦が続きます。あと1勝で昇級という期もあったものの、なかなか突き抜けられません。

第78期順位戦B級1組では3勝9敗の成績であわや降級の危機。順位6位の山崎八段は助かり、順位7位で同成績だった谷川浩司九段は降級となりました。

ところが一転、翌79期では開幕から5連勝スタートを決め、9勝1敗の成績で12回戦の久保利明九段戦を迎えました。この対局では敗れたものの、競争相手の郷田真隆九段も敗れたため、苦節13期の末、ついにA級昇級を果たしたのでした。

山崎八段の将棋はまさに自由奔放。オリジナリティあふれる陣形を、力強い指し回しでまとめ上げてしまう剛腕の持ち主です。唯一無二の指し回しを魅せてくれる山崎八段にはファンが多く、A級での戦いぶりに注目が集まります。

その山崎八段のA級デビュー戦の相手は斎藤慎太郎八段です。斎藤八段はA級初参戦だった前期でいきなり8勝1敗の好成績を挙げ、名人への挑戦権を獲得。渡辺明名人との七番勝負では1勝4敗とふるいませんでしたが、順位が1位の今期も挑戦権争いに間違いなく絡んでくるでしょう。

リーグ戦のため先後はあらかじめ決まっており、山崎八段が先手番です。山崎八段は▲2六歩と飛車先の歩を突きました。斎藤八段も△8四歩と応じて、戦型は相掛かりになっています。

先日行われた、藤井聡太王位と豊島将之竜王による王位戦七番勝負第1局も相掛かりの将棋となりました。その将棋は両者飛車を中段に構える空中戦となりましたが、本局では両者とも飛車を自陣に配置しています。銀や桂を用いて戦う、じっくりとした戦いになりそうです。

とは言え、先手を持っているのは山崎八段その人です。見るものをあっと言わせる斬新な指し回しが、序盤から中盤にかけて飛び出すかもしれません。筆者もワクワクドキドキしながら観戦しようと思います。

唯一無二の個性派棋士、山崎八段
唯一無二の個性派棋士、山崎八段