「サステナビリティ」とは「持続可能性」という意味の言葉です。具体的には「将来にわたって続けられるシステムやプロセス」のことを指します。近年では、国内でもサステナビリティ活動に取り組む企業が増えてきました。
そこで本記事では、サステナビリティの意味や浸透が進んでいる理由、国内企業の取り組み事例などについて詳しくご紹介します。
サステナビリティの意味
サステナビリティとは「持続可能性」を意味する言葉です。ビジネスシーンにおいては「人間活動や自然環境の多様性と生産性を失うことなく、将来にわたって続けられるシステムやプロセス」を指します。
サステナビリティの考え方
たとえば、石油資源に頼っているビジネスは、石油が枯渇した時点でビジネスも終わりです。このような事態を防ぐため、人間活動や自然環境の観点から長期的にビジネスを継続させようというのがサステナビリティの考え方です。
なお、サステナビリティという概念は、1987年開催の「環境と開発に関する世界委員会」において公表された報告書「Our Common Future」の中心的な考え方です。「将来の世代の欲求を満たしつつ,現在の世代の欲求も満足させるような開発」を意味するこの概念は、環境と開発の共存・共生、すなわち「環境保護を考慮した節度ある開発が重要」ということを示した考えです。
サステナビリティが浸透した理由
サステナビリティの認知度を高めた背景にあるのは、2015年の国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals)です。SDGsとは、持続可能な17の目標を掲げて「2016年から2030年までの間に、環境破壊や貧困などの問題を解決していこう」とする取り組みです。
2017年の政治経済のリーダーズ会議「ダボス会議」では、SDGsへの取り組みで12兆ドルを超える経済価値と3億8,000万人の雇用創出という推計が発表され、民間企業参入の大きなきっかけとなりました。
ワールドクラスのセレブ達による取り組みも、サステナビリティが浸透した理由のひとつです。たとえば、ハリウッドのセレブでファッションリーダーとしても知られているエマ・ワトソンは、オーガニックな方法で生産された衣服や、生産過程で余った生地を使ったアイテムを身につけています。
また、デザイナーとしても活躍しているヴィクトリア・ベッカムは2019年、自身が設立したブランドで「エキゾチック・スキン」の不使用を発表して、サステナブルなファッション活動の幅を広げました。
サステナビリティは広範囲の概念
} サステナビリティの概念は、環境・社会・経済の広範囲に及びます。
環境・資源
資源のリサイクルやCO2の削減も、サステナビリティな活動です。近年では森林伐採や海洋汚染といった多くの課題が挙げられているため、企業活動を通じた自然環境の保護に注目が集まっています。
経済
経済におけるサステナビリティとしては、フェアトレードや労働環境、社会保障などが挙げられます。企業が経済活動を行うのは当然ですが、そのためには、従業員が安心して働ける環境づくりが欠かせません。
社会
社会におけるサステナビリティは「人間社会に関するもの」が該当します。ジェンダーや教育、健康などのテーマが主な課題です。
なお、サステナビリティの範囲を知るときには、サステナビリティ活動の報告に用いられる基準「GRIスタンダード」が役立ちます。
GRI(Global Reporting Initiative)とは持続可能な経済への変化を促進し、管理することに貢献するような、サステナビリティ報告書の標準的な慣習を作ることを目的としたものです。そしてGRIスタンダードとは、組織が経済や環境、社会に与えるインパクトを報告する際の、グローバルレベルにおけるベストプラクティスを提示するための規準です。
GRIスタンダードでは、環境、経済、社会の観点から34テーマを挙げていますが、すべてのテーマを同等に扱うのではなく「企業にとって重要なテーマを特定すること」がサステナビリティ活動のポイントです。
サステナビリティとCSRの違い
サステナビリティと同様に注目されているのが「CSR(Corporation Social Responsibility)」です。CSRは「企業の社会的責任」という意味があり、「企業がガイドラインやコードを守っているかどうか」という視点で語られます。安心安全な製品の提供や働きやすい職場環境の整備、法令の遵守といった責任も含まれるのが特徴です。
一方のサステナビリティは、環境や経済、社会などにおいて「安定しているか」「持続可能かどうか」という視点が求められます。サステナビリティとCSRの方向性に違いはありません。異なっているのは対象となっている範囲です。
近年では、企業が社会貢献の責任を重視するようになったため、サステナビリティを念頭に置いた活動をしながら社会的責任を果たしてCSRを達成します。逆に、CSRを意識した経営を実現すれば、サステナビリティも向上させられます。
サステナビリティを取り入れている企業の経営視点
企業が環境や経済に与える影響を考えながら長期的な運営を目指すことを「コーポレート・サステナビリティ」と呼びます。コーポレート・サステナビリティで重要になるのは、次の2つです。
CSRをコストとして考えない
日本では長年「CSRはコストである」と考えられてきましたが、欧米では「環境や社会に対する価値提供は財務リターンと矛盾しない」という考え方が浸透しています。単に社会的責任を果たすというだけではなく、「長期的には自社の利益につながる」といった視点が求められるのです。
長期的な計画を立てる
従来のように短期的なリターンを追求すれば自然環境との共存が困難になり、長期的な財務リターンも減少してしまいます。そのため、企業は数十年先を見越したうえで、環境や社会と向き合いながら事業を継続させる方法を模索しなければいけません。
サステナビリティに取り組む日本企業の事例
ここからは、国内3社の取り組み事例をご紹介します。CSRをコストと考えず、長期的なプランを立てている点にも注目してみましょう。
日産自動車
日産自動車では、2050年のビジョンを見据えた「ニッサン・グリーンプログラム」を実行しています。すでに2022年度に向けた第4次計画に移行しており、「気候変動・資源依存・大気品質・水資源」の環境課題に取り組みながら社会に価値を提供しています。
また、先進的な安全技術や自動運転技術を導入して、日産車が関わる死者数を実質ゼロにすることも目標にしています。
ユニクロ
ユニクロでは、「プラネット(Planet)・ピープル(People)・ソサエティー(Society)」を柱とした活動を行っています。
環境負荷を軽減する取り組み「プラネット」では、エコバッグの普及や素材の選定における持続可能性を追求しています。「ピープル」は働きやすい環境の確保、「ソサエティー」は社会との関わりを重視した取り組みです。近年では、廃棄されたダウンやフェザーを最新アイテムに変える「服から服へのリサイクルプロジェクト」も推進しています。
大林組
大林組では2050年の「あるべき姿」を定義し、2040~2050年の目標と事業展開の方向性を定めた中長期環境ビジョン「Obayashi Sustainability Vision 2050(OSV2050)」を策定しています。
社長を委員長とする「CSR委員会」の下に「環境マネジメント専門委員会」を設置し、環境活動の基本方針や方策を決める「環境マネジメントシステム(EMS)」を運用しているのも特徴的です。また、事業に関わるすべての人々の安全と健康を確保して、快適な職場環境の形成促進も図っています。
サステナビリティの意識を広めることが大切
サステナビリティとは、「将来にわたって続けられるシステムやプロセス」を指す言葉です。「持続可能性」という意味で知られていますが、ビジネスシーンでもその考え方が浸透し、長期的な視点で取り組む国内企業も増えてきました。
自然環境と共存しながら事業を継続させていくためにも、サステナビリティへの理解を深めていきたいところです。