両端の攻防で豊島竜王がポイントを稼いだ
藤井聡太王位に豊島将之竜王が挑戦する、将棋のタイトル戦、お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負(主催:新聞三社連合)第1局が6月29、30日に愛知県「名古屋能楽堂」で行われています。本日は決着のつく2日目。王位と棋聖を持つ藤井王位と、竜王と叡王を持つ豊島竜王との二冠対決の初戦を制するのは果たしてどちらになるでしょうか。
藤井王位にとって「天敵」とも言える存在が豊島竜王。過去の対戦成績は藤井王位の1勝6敗となっており、全棋士中ただ一人、藤井王位に大きく勝ち越しています。通算成績が勝率8割4分を超え、数々の記録を塗り替えてきた藤井王位にとって、豊島竜王は最強の挑戦者と言っても過言ではないでしょう。
藤井王位は渡辺明名人と棋聖戦五番勝負を王位戦と並行して戦っており、現在2連勝で防衛に王手をかけています。棋聖を防衛した上で、この試練の王位戦七番勝負を藤井王位が制すれば、いよいよ将棋界は藤井時代の幕開けとなるでしょう。一方で、どちらかのタイトルを奪取されることになれば、まだまだ4強時代(渡辺名人・豊島竜王・藤井二冠・永瀬拓矢王座)が続く情勢となりそうです。大げさに言うのであれば、この王位戦七番勝負は将棋界の勢力図を占う天下分け目の番勝負といったところでしょう。
開幕局のため行われた振り駒で、先手番となったのは藤井王位でした。藤井王位が選択した戦型は相掛かり。かつては先手番の際には角換わりを主戦場にしていた藤井王位ですが、最近では相掛かりの採用が目立ちます。豊島竜王も相掛かりを得意にしている棋士の一人です。
序盤は両者飛車を中段に構え、細かく飛車の動きでジャブを繰り出す現代調の戦いになりました。先に大きな動きを見せたのは藤井王位。4筋の歩を突き捨ててから1筋の歩を突いて、仕掛けていきました。
これに対し、豊島竜王も9筋から反撃。両者端を取り込んで、盤面の両端で戦いが起こりました。
両者我が道を行く端の戦いで、ポイントを大きく挙げたのは豊島竜王でした。1筋で香を入手した藤井王位に対し、豊島竜王は9筋で取れる香を取らずに歩を垂らしたのが好手でした。豊島竜王は9筋でも香を取らせる代わりに、と金作りに成功。角の入手が約束されました。
いつでも取れる角を豊島竜王はすぐには取りません。飛車交換を誘ってから3筋に歩を打って攻めていきます。この手は自陣の桂を働かせようという狙い。自軍の駒を全て活用しようとする王道の指し回しです。
豊島陣は金銀の連結が良く隙がありません。苦しい形勢ではありますが、藤井王位はしばらく受けに回って、反撃のチャンスを伺う展開となりそうです。
本日は勝負のつく2日目。12時半から1時間の昼食休憩に入り、そこからは決着の時までノンストップで対局が進行します。