持続可能な社会の実現に向けて、小学生と一緒に課題解決に取り組む「小学生SDGsサミット2021」が26日、オンラインで開催された。主催は朝日小学生新聞、読売KODOMO新聞、共催は伊藤園。今年のテーマは『SDGsの目標期限となる2030年の夏に、みんなが快適に暮らすためのアイデア』だ。当日は、小学5~6年生から集められたアイデアのなかから優秀賞に選ばれた小学生3名によるプレゼンテーションが行われた。
「このまま紙面で使いたい」
小学生SDGsサミット2021には、国内外から500件を超える応募があった。その冒頭、朝日小学生新聞 編集部長の清田哲氏は「今日は全国の皆さんと一緒に、環境のために何ができるのか考えていきたい」と挨拶。また読売KODOMO新聞 編集長の新庄秀規氏は「応募作品を拝見しましたが、小学生たちが一生懸命、自分で考えて伝えようとしている姿が垣間見れて良かった。発想、ビジュアルともによくできていた。このまま紙面で使いましょうよ、という声が出たくらいです」と社内の反応を明かした。
基調講演は、SDGsの第一人者である慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科の蟹江憲史教授による「SDGsってなんだろう」。まず「SDGsの目標期限は2030年、小学生の皆さんが成人される頃です。皆さんが社会に出て活躍するときに、現在の達成目標が、世界の常識になっていなければならない。そこに向けて、いまから世界を大きく変えていく必要があります」と説明。そして、いま世界はどんな課題を抱えているのか、小学生の身の回りの事象と照らし合わせて分かりやすく解説し、SDGsが掲げる17目標169ターゲットをどのようなアプローチで実現していくべきか、問題提起した。
「答え(目標)はあります。どうやったら、そこにたどり着けるか。大人にはしがらみがあり、余計なことを考えてしまう。だから小学生の素直な発想が大事になります」と蟹江教授。最後に「大人も子どもも、お互いに学びながら取り組んでいければ良いと思います」とまとめた。
また、イベントに連携協力している一般社団法人アツいまち 代表理事の中島雄平氏が登壇。例年、気温が40度にまで達するような暑さが厳しい国内の各都市において、空中スイカを栽培して「グリーンカーテン」で暑さをしのぐ取り組みを実施していることなどを紹介。「SDGsの17の目標を一気に達成することは難しいけれど、『目標11.住み続けられるまちづくり』を中心にして、今後も1個ずつ達成していけたらと思っています」と説明した。
イベント共催の伊藤園 マーケティング本部の相澤治氏は「伊藤園でも『健康ミネラルむぎ茶』の提供などを通じてSDGsに取り組んでいます。汗をかいたらミネラル ゴクゴクということで、美味しく健康に過ごしてもらえたら」と挨拶。SDGsの目標としては『3.すべての人に健康と福祉を』、また暑さ対策の啓蒙活動・ミネラル補給の大切さを通じた『4.質の高い教育をみんなに』をはじめとして、各目標に意欲的に取り組んでいると説明する。
最近では、環境への配慮から飲料生産後のむぎ茶殻を緩衝材に練り込んだ製品を開発。「お~いお茶」の製造工程で排出される茶殻も再利用しているほか、ペットボトルの全製品は2030年までにリサイクル100%を達成する、といった目標も紹介した。
アイデア満載のプレゼン
そして優秀賞作品に選ばれた小学生のプレゼンが始まった。黒木秋聖さんはTV番組で”人工的なクモの糸”をつくる企業の取り組みを見てアイデアを発想したという。「クモの糸は1kgあたり鉄の340倍、炭素繊維の15倍の強度を持つ素材です。この環境に優しい人工的なクモの糸で円錐形のポッドをつくり、なかに土、水、木の種を入れたものを、人が行けないような砂漠化した場所にドローンや小型飛行機で落とします。そうすれば、砂漠化した土地に緑が復活するはずです」。このほか、植物を育てていない人に税金を科すことで、人々の意識改革を促すアイデアなども発表した。
小泉英太郎さんは、空気から水をつくる装置を砂漠地帯に設置することで、オアシスをつくるアイデアを紹介。また「世界中の都市の窓ガラスに『透明酵母菌熱吸着シート』を貼ることで熱対策をします。貼るだけなので、世界中の人が参加できます。目に見えない細菌の力をかりて、温度の調節、空気の浄化をします」と説明した。
山田遥斗さんは『5』にちなんだルールを紹介。マイボトルに5度のドリンクを入れて持ち運ぶ、週5日は牛肉をたべない、シャワーは1回5分までとするなど、明日から取り組めるルールを設定。多くの人が実践すれば、SDGsの目標に近づけると説明した。
主催側の講評は?
小学生たちのプレゼンを聞いた新庄氏は「審査時の内容をあますところなく伝えたばかりか、+アルファの説得力があり、本当に感心することばかりでした。個人的にSDGsにおいて大事だなと思うことは、みんなが参加することにあります。色んな良いアイデア、方法があっても、どう提案していくかが難しい。でも黒木さんは税金で人の意識改革を行う、小泉さんはキャッチーなキーワードでみんなに参加したいと思わせる、山田さんは5つのルールとして分かりやすく伝える、そうした手法で『自分にもできる」と思わせてくれました』と講評。
また清田氏は「私も聞き入ってしまいました。行間から読みとける以上のことが伝わってきた。日頃からSDGsのことを考え、まとめる力がついているんだと思います。聞いていて、とてもドキドキしました」。
蟹江氏は「すべてが小学生らしい自由な発想に基づいたプレゼンで、とても良かった。目標達成に向けて何が大事なのか、素直にアイデアが出ていました。大人も、こういう考え方を学ぶべきですね。未来のあるべき姿を考えて、現在とのギャップを考慮する、この未来から現在に発想を戻していく思考方法をバックキャストと言いますが、まさにそんなシナリオが描けていると思いました」。
最後にイベントを後援する環境省から、深澤友博氏、小川咲季氏が登壇。「いまから誰でもできる環境対策」として、移動にできるだけ公共交通機関や自転車、徒歩を使うsmart move、冷房や暖房に頼り過ぎないクールビズ、ウォームビズといった取り組みを紹介した。