コアコンピタンスは、企業が最も得意とする分野のことで、その分野においては他社の追随を許さないほど突出した能力を指します。1990年ごろに提唱された比較的新しい言葉ですが、経営にかかわる人にとっては避けて通れない概念です。

本記事ではコアコンピタンスについて解説し、企業の具体例などをご紹介。ケイパビリティについても説明しますので、最後まで読んで理解を深めましょう。

  • コアコンピタンスとは

    コアコンピタンスについて解説します

コアコンピタンスとは

ビジネスシーンでコアコンピタンスという言葉が出てきた時、瞬時に意味を理解できるよう、まずは言葉の意味を把握しましょう。

コアコンピタンスの意味

「コア(core)」は「核となる」、「コンピタンス(competence)」は「能力」という意味です。つまりコアコンピタンスとは「ビジネスにおいて企業の中核となる強み」のこと。競合他社の追随を許さないほどの独自性にあふれた技術やノウハウを指します。

コアコンピタンス経営

コアコンピタンスを取り入れた経営手法を「コアコンピタンス経営」と言います。これは、市場に総合的に受け入れられる企業を目指すのではなく、自社の得意分野に人や資金を集中させ競争力を高めるという手法です。

代表例としてトヨタの生産管理方式(かんばん方式)や、ソニーの小型化技術などが有名です。

企業は自社の得意分野をより研ぎ澄まされたものにすることで、競合他社が真似することのできない、強固な競争力を維持することができます。

コアコンピタンスをどう見極めるのかは、留意すべきポイントがあります。これについては後ほど詳しく触れます。

企業の成功例

コアコンピタンス経営を取り入れた企業の例をもう少し見てみましょう。

・ホンダ
優れたエンジン技術を活かし、二輪車や四輪車、除雪機や草刈り機など幅広い製品でシェアを広げました。

・セブン&アイ・ホールディングス
巨大な流通と店舗によるネットワークを活かし、銀行事業を展開。セブン銀行のATMを各店舗に設置して、そこから手数料を得る事業の仕組みを創出しました。

コアコンピタンスとケイパビリティの違い

コアコンピタンス経営と一緒に用いられる言葉に「ケイパビリティ(Capability)」があります。意味は「能力、才能、可能性」です。

ビジネスにおいてケイパビリティとは、企業の組織そのものの能力や強みを指します。資本や技術、設備などに頼るのではなく、それらを生み出したり活かしたりするアイデアを生み出すための「能力」のことです。

前述したセブン銀行を例に挙げると、巨大なネットワークを銀行事業に活かすというアイデアの源がケイパビリティと言えるでしょう。

一見すると外部からは分かりづらいですが、ケイパビリティも企業が競争を勝ち抜くうえで欠かせないものです。

  • コアコンピタンスとは

    コアコンピタンスは企業の核となる独自の能力です

コアコンピタンス経営の実践方法

コアコンピタンス経営とは、具体的にどのように進めるのでしょうか。

コアコンピタンスを見極める

まずは自社のコアコンピタンスは何のか、それを探る必要があります。下記に、いくつかのポイントを紹介します。これらのポイントが網羅できていれば、それはコアコンピタンスと呼べるでしょう。

真似・代替できるものでないか

ビジネスで大きな存在となるのが競合他社。いくらコアコンピタンスを注力しても、他社が簡単に真似できるものでは意味がありません。コアコンピタンスには独自性が求められます。

汎用できるかどうか

コアコンピタンスが1つの製品だけにとどまらず、他の製品や分野にも展開できるかどうか。汎用性が高いほうが、絶え間なく新しい製品やサービスが提供でき、確実な利益を生み出します。

新しさがあるかどうか

市場に新しい価値を与えるものでなければ、その市場で優位に立てたことにはなりません。コアコンピタンスは市場に新たな風を吹き込むものである必要があります。

長期的に有効かどうか

いくら新しい製品やサービスを生み出しても、あっという間に競合他社に取って代わられては意味がありません。バージョンアップなどを繰り返しながら、長期的なスパンで使えるものかどうか。先を見越しておく必要があります。

消費者の利益となる製品・サービスに結びつける

上記のポイントでコアコンピタンスを見極めたら、それが消費者にとって利点となるかどうかを考えます。

いくらコアコンピタンスを持ち合わせていても、それが消費者にとって価値のある製品やサービスに活かせなければ意味がありません。消費者のニーズをつかむには、スピード感のあるマーケティングが重要です。

自社について深く知り、コアコンピタンスを掴もう

製品やサービスが多岐にわたり、企業の生き残り競争も熾烈化する現代、注目されているのがコアコンピタンスという概念です。

コアコンピタンス経営というのは、特定の分野をさらに研ぎ澄まし、製品やサービスに応用することで競争力を高めるという手法。私たちの身近なところにも展開されていることを紹介しました。

コアコンピタンスを探るには、自社について深く知ることが第一歩。本記事で挙げたポイントを念頭に、まずは自社について理解を深めましょう。