クリティカルマスは、マーケティングの専門用語で、社会人であれば押さえておきたい言葉のひとつです。この記事では、「クリティカルマス」の意味や使い方を解説。関連語との関係や違いなども紹介します。
クリティカルマスとは
「クリティカルマス」は下記のような意味を持つ、使用シーンによって意味が異なる言葉です。
- 臨界質量(核分裂の連鎖反応を維持するために最低限必要な質量)
- 広告で商品やサービスが普及するのに必要とされる供給量
- 自転車利用の促進を目指す市民運動のひとつ
クリティカルマスはマーケティング用語
ビジネスにおいて「クリティカルマス」は、マーケティング用語として用いられます。商品やサービスの普及率が一気に跳ね上がる分岐点となる普及率のことがクリティカルマスです。
アメリカの社会学者であるエベレット・ロジャースの著書で、1962年に初めて提唱されました。
英語表記は「critical mass」
「クリティカルマス」は、もともとは英語の「critical mass」からきています。「critical」は「臨界の」「きわどい」「分離」などの意味があり、「mass」は「集団」「質量」「集合体」などの意味があります。
そのため、「critical mass」は「限界質量」や「結果を得るために必要とされる量」などの意味で用いられる英語表現です。
物理化学用語が由来
マーケティングで使われる「クリティカルマス」は、物理化学用語の「臨界質量」が由来とされています。「臨界質量」とは、核燃料が核分裂をし続けるために最低限度必要となる質量のことです。
マーケティングにおいては、商品やサービスが世の中への感度が非常に高い人から一般に広がっていく分岐点があります。その分岐点のことを核分裂になぞらえて「クリティカルマス」と表現するようになりました。
クリティカルマスの例文
ビジネスシーンで聞かれる、クリティカルマスを使った例文を紹介します。
・タブレット市場は、しばらく前にクリティカルマスに達している。
・このアプリは、新機能の搭載をきっかけにクリティカルマスを一気に超えた。
・まずは新製品のクリティカルマスへの到達を目指して展開していこう。
上記のように、「クリティカルマス」はマーケティングで使われる機会がある表現として覚えておきましょう。
イノベーター理論とキャズム理論とは
クリティカルマスを理解するために押さえておきたいのが「イノベーター理論」です。「イノベーター理論」はエベレット・ロジャースが提唱した言葉で、消費者を「イノベーター」「アーリーアダプター」「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」の5種類に分類しています。
それぞれの特徴を、くわしく見ていきましょう。
イノベーターとは
「イノベーター」とは導入されてすぐの製品を最初に購入する層のことで、日本語で表すと「革新者」です。今までの市場にはなかった概念を持つ製品やサービスに反応して、積極的に取り入れます。しかしイノベーターは商品の真新しさを重視しており、有用性などの性能面をさほど重視していません。
市場の約2.5%がイノベーターにあたると言われています。
アーリーアダプターとは
「アーリーアダプター(初期採用者)」は、新しく登場した商品やサービス・ライフスタイルなどを、比較的早く利用する層のことで、市場の約15%弱と言われています。新しい製品やサービスのベネフィットがいいものかどうかを判断して取り入れ、発信力もあることから、ほかの人への影響力もあるのが特徴です。
いわゆる「オピニオンリーダー」や「インフルエンサー」はアーリーアダプターにあたります。アーリーアダプターに商品やサービスを受け入れられることで、世の中に浸透していきます。
アーリーマジョリティとは
「アーリーマジョリティ(前期追随者)」とは、アーリーアダプターに追従して受容しはじめる利用者層です。アーリーアダプターの製品に対する評価や使ったかどうかを信頼して、購入や利用を行います。
いわゆる「ミーハー」と言われる、芸能人やインフルエンサーに影響されやすい層がアーリーマジョリティにあたります。
レイトマジョリティとは
「レイトマジョリティ(好機追随者)」とは、アーリーマジョリティに追随して商品やサービスを利用しはじめる層のことで、市場の約35%弱と言われています。新製品やサービスの利用に対しては慎重であり、誰かに強く勧められたり必要だと判断したりしないと利用には至りません。
そのため、レイトマジョリティに広がった商品やサービスは、市場に広く浸透していると言えます。
ラガードとは
「ラガード」とは、新しい商品やサービスが広く普及しても、最後まで受け入れない層のことで、市場の約15%強を占めます。周囲が持っている製品でも自分に取って必要なければ利用することはありません。イノベーションが伝統化するまで利用しないため、伝統主義者と言われることもあります。
例えばスマートフォンをまだ持ったことがない人はラガードにあたります。
キャズム理論との違い
「キャズム理論」とはアーリーアダプターとアーリーマジョリティとの間に大きな隔たりがあることから、ここを超えないと新商品やサービスが普及されないという理論です。
イノベーター理論をもとにしたクリティカルマスの場合は、イノベーターとアーリーアダプターに普及すれば自然と普及していくと考えられていますので、異なる考え方と言えます。
どちらを利用する場合も、「みんな使っている」という安心感を与えるなど、アーリーマジョリティやレイトマジョリティへの訴求は必要です。
クリティカルマスに達するための施策例
新しい商品やサービスの普及がクリティカルマスに達するためには、さまざまな施策が必要です。ここでは、具体的な施策例を紹介します。
販促キャンペーンや値引き
いくら新しいものが好きな人であっても、いきなり新しい製品に手を出すのは躊躇してしまうこともあります。そこで、値引きや既存商品とセットで売り出すなどのキャンペーンで、購入しやすくするのが有効です。
「試してみようかな」という気持ちを刺激して、試しやすい状態にしていきます。
イノベーターやアーリーアダプターへのアピール
アーリーアダプターが新しい商品やサービスを使うと、自分が支持している人が使っている安心感や、商品の性能に対する信頼感が増します。
商品の利用を多数派であるアーリーマジョリティに広げていくためには、アーリーマジョリティに影響力が大きいアーリーアダプターや、そのアーリーアダプターに影響を与えやすいイノベーターへのアピールが重要です。
クラウドファンディングや商品展示会などイノベーターやアーリーアダプターが多い場所でアピールしていきましょう。
クリティカルマスはマーケティングに欠かせない言葉
クリティカルマスは英語の「critical mass」が語源のマーケティング用語です。もともとは物理化学用語で「臨界質量」を表す言葉として使われていましたが、マーケティングにおいては「広告で求める結果を得るために必要な数量」という意味で使われています。
クリティカルマスを理解するためには「イノベーター理論」も重要です。「イノベーター」や「アーリーアダプター」など関連する言葉とともに、押さえておきましょう。
商品やサービスの普及率を上げたい時に「クリティカルマス」を意識して販促活動を行ってみてください。