アルプスアルパインがカーオーディオ「AlpineF#1Status」(アルパイン エフナンバーワン ステータス)を開発した。業界初となる384kHz/32bitのハイレゾ再生を実現した同商品は、アルプスアルパインによれば「世界最高峰のカーオーディオ」であるとのこと。2021年秋からグローバルで販売を始める。
音の情報量はCDの17.4倍!
「AlpineF#1Status」はアルプスアルパインにとって久しぶりとなるプレミアムカーオーディオ商品だ。どちらかというとカーナビに注力してきた同社だが、代表取締役副社長執行役員の米谷信彦さんによると、「なんちゃってハイレゾだと、マニアは納得しない」という販売店からの声をきっかけに、開発体制を見直して3年前に新商品のプロジェクトをスタートさせたそうだ。この商品で同社は「音のアルパインの復活」(米谷さん)を目指すという。
384kHz/32bit再生で伝えることができる音の情報量は、実にCDの17.4倍。アルプスアルパインの話だと、「ハイレゾ」をうたうカーオーディオは一般的に96kHz/24bitがほとんどで、一部の高級品でも192kHz/24bitにとどまるそうだ。
カーオーディオ作りは家でオーディオを組むのと違い、さまざまな制約を受ける。クルマにオーディオを入れ込むにはスペースが限られるし、スピーカーを理想的な配置とすることも難しく、さらに走行中には振動や騒音がノイズとなって音楽の邪魔をする。
例えばスペースの問題を取り上げると、カーオーディオでは設置場所が限られるため、音源再生などを操作する「ヘッドユニット」とチューニングを担う「オーディオ・プロセッサー」を分けて組み込む必要がある。これらの機器がそれぞれに水晶(クロック)を持ち、それぞれのタイミングでデジタル信号を処理することで音をならすそうなのだが、これが原因で「ジッター」という信号のズレが発生し、音のひずみを生み出してしまう。
ジッターの問題を解消するため、アルプスアルパインではカーオーディオで初となる「マスタークロック・マネージメントシステム」を開発。システムの心臓部には水晶発振器として世界最高の周波数精度を誇るパーツを採用し、ヘッドユニット―オーディオ・プロセッサー間の車載伝送システムを1つのクロックで完全にシンクロさせることに成功した。
そのほかにもさまざまな新技術が入っているという新商品「AlpineF#1Status」だが、肝心の音はどうなのか。この点については素人がどうこうリポートするよりも、新商品の発表会に登場したミュージシャンの声を引用するのが一番だと思う。
発表会に駆け付けたクラブジャズバンド「JAABBERLOOP」(ジャバループ)のメンバーは、「AlpineF#1Status」を装着したクルマに試乗し、実際に音楽を聴いてみたとのこと。感想としては「目の前に楽器があるみたい」「ライブ音源を聴いたら、拍手まで近くに聞こえた」「演奏中の細かい音まで音源に収録されていると改めて気づかされた」「オーディオリスニングルームが移動式になったような感じ」といった声が聞かれた。
日本国内では今後、アルパインの直営店「アルパインスタイル」にて「AlpineF#1Status」搭載のフルコンプリートカーを販売する。ベースとなる車両はトヨタ自動車「アルファード」の「エグゼクティブラウンジS」というグレード。価格などの詳細は2021年初秋までに発表する。ほかのクルマに同システムを組み込みたい場合は相談に応じるとのことだ。