ワークライフバランスという言葉が浸透し、働き方が多様化しています。なかでも始業・終業時刻を個人の判断に委ねられるフレックスタイム制度は、多くの企業が採用しています。
コアタイムとは、そんなフレックスタイム制度とセットで聞かれる言葉です。本記事ではフレックスタイム制度について説明しながら、コアタイムの基本知識を解説します。
コアタイム・フレックスタイム制度とは
まず、フレックスタイム制度について理解を深めましょう。
フレックスタイム制度とは
フレックスタイム制度は、「Flexible working hours system」のことです。
かつて日本では、社員が同じ時間に始業し、同じ時間に終業する定時勤務が一般的でした。始業・終業時刻は企業によって定められており、社員はそれを守ることが常識でした。
これに対しフレックスタイム制度は、始業・終業時刻を個人の裁量に委ねられています。ただし1カ月当たりの総労働時間は決められており、社員はその範囲内で仕事量や効率から好きな時間に働くことができます。
働き方が多様化し、ワークライフバランスが尊重される現代では、このフレックスタイム制度を導入する企業が増えています。
フレックスタイム制度のメリットとは
フレックスタイム制度のメリットは、1つ目に業務の効率化があります。例えば始業時刻を早めれば、通勤ラッシュを避けられてストレスなく業務がスタートできます。また取引先との打ち合わせ時間に合わせて始業・終業時刻をずらすこともでき、効率よく業務を進められます。
業務効率が上がれば残業や休日出勤が減ることにもつながり、企業にとっても人件費削減というメリットがあります。
メリットの2つ目はワークライフバランスの向上につながるという点です。終業時刻を早めれば、その分だけ育児や家事、趣味の時間にあてることもできます。プライベートの充実は仕事へのモチベーションアップにつながり、企業への満足度も上がることになります。
このように、フレックスタイム制度は社員と企業の両者にメリットのあるシステムです。
フレックスタイム制度のデメリット
一方で、フレックスタイム制度のデメリットも指摘されています。
フレックスタイム制度は社員の自主性に委ねられる部分が多く、企業側の管理が難しくなる恐れがあります。自己管理が苦手な社員にとっては、業務効率や労働意欲の低下を招きかねません。また社員によって始業・終業時刻が異なるため、社員同士がコミュニケーション不足に陥る可能性もあります。
またフレックスタイム制度は、業種や職種によっては導入が難しい場合があります。例えばサービス業や社員との連携が不可欠な工場の製造ラインなどには向きません。
仮にフレックスタイム制度を導入したとしても、クライアントの都合で勤務時間が変えられないなどの場合には、制度が形骸化する可能性もあります。企業は導入前に社員にヒアリングをし、勤務実態をつかむ必要があります。
コアタイムとは
こうしたフレックスタイム制度のデメリットをうまくカバーするのが、コアタイムです。コアタイムはフレックスタイム制度において、「社員が拘束される時間帯」を指します。
つまり始業・終業時刻は個人の自由に委ねられているものの、1日のうちで社員が就業しなければならない時間はあらかじめ企業が設定しているのです。社員全員がそろう時間を設けることで、コミュニケーションが活性化し、企業も社員を管理しやすくなります。
ちなみに、フレックスタイム制度を導入していない企業の「定時」はコアタイムとは呼びません。
コアタイムとフレキシブルタイムの違い
拘束されるコアタイムに対して、社員が自由に勤務できる時間は「フレキシブルタイム」と呼びます。
企業はコアタイムとともに、このフレキシブルタイムを設定しています。例えば1日の所定労働時間が8時間の場合、休憩時間1時間を含む10時~15時をコアタイム、その前後にあたる8時~10時、15時~19時をフレキシブルタイムと設定できます。社員はコアタイムを除く4時間分の労働をどこに充てるかを自由に選べます。
コアタイムを設定するには
コアタイムは社員との労使協定で合意されれば、企業が自由に設定できます。部署によって時間帯を変えたり、分割したりすることも可能です。
設定におけるいくつかのルールや注意点をみていきます。
設定は必須ではない
フレックスタイム制度において、コアタイムは設定が義務付けられているわけではありません。ただし、社内の連携を保つためにも人が集まりやすい時間をコアタイムに設定しているケースは多くみられます。
企業側はフレックスタイム制度のメリットとデメリットを把握して、バランスよくコアタイムを設定することが求められます。
コアタイムを設定する際の注意点
フレックスタイム制度は社員が自ら始業時刻と就業時刻を選択できる制度です。コアタイムの開始から終了までが1日の労働時間とほぼ同じ場合、または極端に短い場合は社員に決定権を委ねたことにはなりません。
例えばコアタイムが9時~17時に設定されている場合、これは通常の定時勤務と変わりがなく、個人の裁量に任せるというフレックスタイム制度の趣旨から外れてしまいます。
またフレックスタイム制度を導入するには、社員との間に労使協定を締結して就業規則に明記しなければなりません。
スーパーフレックスタイム制度とは
コアタイムを設けないフレックスタイム制度を「スーパーフレックス制度(フルフレックス)」といいます。個人の自由度が高く、柔軟な働き方として今注目が集まっています。
フレックスタイム制度の導入に必要なのは
フレックスタイム制度を導入するためには「労使協定の締結」と「就業規則の明記」の2つの手続きが必要です。
社員の業務効率とワークライフバランスの向上のためにも、制度に則った適正な導入を行いましょう。
労使協定を定める
労使協定には以下のように6つの定めるべき項目があります。清算期間とは「定めた総労働時間を達成しなければならない期間」のことです。
①対象の社員の範囲
②清算期間の長さ(1カ月以内)
③清算期間の起算日
④清算期間における総労働時間
⑤標準となる1日の労働時間
⑥フレキシブルタイム(任意でコアタイム)
他にも、コアタイムの遅刻・早退はどう扱うか、総労働時間に不足がある場合はどうするか、有給休暇の扱い方など定める項目は多岐にわたります。
就業規則へ明記する
フレックスタイム制度について記載した就業規則は、管轄の労働基準監督署へ届け出を行う必要があります。
フレックスタイム制度の目的を知ろう
この記事の読者のなかには、フレックスタイム制度を利用して働いている人もいるでしょう。そもそもなぜフレックスタイム制度が採られているのか、コアタイムを設定する目的は何なのか、きちんと理解できれば仕事への取り組み方も変わってくるかもしれません。
せっかくフレックスタイム制度が採られていても、うまくいかせなければワークライフバランスの向上にはつながりません。自分に適した働き方はどんなものなのか、じっくりと考えてみてもいいですね。