仕事でお客様と接する機会が多く、コミュニケーションがなかなかスムーズにいかないとお悩みではありませんか? アクティブリスニングは、そんな悩みを解決する手段のひとつです。

本記事では、アクティブリスニングの概要と、初心者におすすめの本の紹介、学習メリットや具体的な手法について解説します。コミュニケーション力をもっと高めたい方は、ぜひ参考にしてください。

  • アクティブリスニングとは

    アクティブリスニングとは?

アクティブリスニングとは

アクティブリスニングとは、日本語で「積極的傾聴姿勢」と訳される心理学用語でのひとつで、アメリカの臨床心理学者カール・ロジャース博士が提唱しました。カウンセリングの場で使われるコミュニケーション技法として用いられ、相手を受容し、共感することで相手を理解するよう努めます。

アクティブリスニングの種類

アクティブリスニングの手法は、大きくわけて「ノンバーバル(非言語)コミュニケーション」と「バーバル(言語)コミュニケーション」の2種類があります。

ノンバーバルとはしぐさや表情、声の大きさなど、言葉以外の情報からコミュニケーションを図る方法です。バーバルとは言語のことで、言葉を利用してコミュニケーションを図ります。

マクドナルドでも取り入れられている

アクティブリスニングは、カウンセリングだけでなくさまざまな場面で役立ちます。例えば、大手外食チェーン店のマクドナルドでは、アルバイト・パートの研修にアクティブリスニングを取り入れています。このように接客業で働く人はもちろん、子育て中の保護者も身に付けておいて損はありません。

アクティブリスニングの基礎がわかる本

アクティブリスニングの基礎を学びたい人には、『アクティブリスニング なぜかうまくいく人の「聞く」技術』(谷本 有香 著)がおすすめです。

本の中では、ジャーナリストとして多くの取材をしてきた著者の経験をまとめた聞く技術を48のテクニックにまとめています。ビジネス上でも役立つテクニックが多くわかりやすい解説なので参考にしてみてはいかがでしょうか。

英語のトレーニング方法としても使われる

アクティブリスニングという言葉は、相手の話をアクティブに聞くことで、英会話の上達を目指す方法のひとつとして使われる場合もあります。ここまで解説してきた心理学の「アクティブリスニング」が由来です。

アクティブリスニングでは、相手の話を聞きながら先の流れを予測し、聞き取れた部分から話の全容を把握します。そして会話の途中で相槌や質問を適度にはさんで、会話をコントロールすることを意識するというものです。

  • アクティブリスニングとは

    アクティブリスニングは相手の話を傾聴することでコミュニケーションを円滑に進める手法

アクティブリスニングを学習するメリット

アクティブリスニングを学習すると、ビジネス上でどのようなメリットがあるかを解説します。

社内のコミュニケーション活性化

アクティブリスニングは、相手を受容し、共感する姿勢で行います。さらに、適切な質問や相槌により、相手が自分の内面を整理するサポートも可能です。ポイントは、自分の価値観を押し付けるのではなく、相手を肯定して問題解決をサポートするということです。

話し相手は自分を肯定してもらえるという安心感の中で、今抱えている課題を話せるようになり、結果として自分自身で問題を整理し、解決の糸口に気づけるようになります。そして話し相手は自分で問題を解決できたことにも自信を持てるのです。

このようなコミュニケーションを繰り返すことで、社内コミュニケーションの活性化が期待できます。

人間関係がスムーズになる

相手を理解しようとする姿勢が話し相手に伝わると、相手は安心して会話ができます。どの人に対しても同じ姿勢を続けていくことで、周囲の人々との関係がスムーズになるでしょう。特に、相手よりも自分の方が強い立場の場合、アクティブリスニングは相手の心を開くのに役立つ技術です。

風通しのいい職場環境になる

部下が仕事上の悩みを抱えたままで解消できないでいると、職場の生産性は低下します。そのような状態を解決するために、上司がアクティブリスニングを使って部下とコミュニケーションできるようになると、職場の風通しがよくなり、生産性の向上も期待できるでしょう。

  • アクティブリスニングを学習するメリット3つ

    上司から率先してアクティブリスニングを活用することで職場は活性化する

アクティブリスニングの手法

アクティブリスニングの手法「バーバルコミュニケーション」と「ノンバーバルコミュニケーション」の種類別に、具体的な手法をいくつか紹介します。

バーバルコミュニケーションによる手法

バーバルコミュニケーションの手法としては、以下の5種類があります。

■単純な受容
相手の立場に立ち、相手の気持ちに共感し、受容する姿勢をうなずきと「うんうん」などのごく簡単な言葉で返す方法です。相手の話に共感して耳を傾けているという姿勢を示すことで、相手はより安心でき、話を深めていけます。

■オウム返し
相手の言葉をオウム返しにする手法です。パラフレージングとも呼ばれ、相手が自問自答をするサポートをします。この場合、相手の言葉を自分なりに言い換え、相手に自然と振り返りのきっかけを与えられるように意識することが重要です。

相手は話を聞いてもらえたと感じると同時に、自分の言葉を振り返り、新たな発見を見出せることもあります。

■反射
「悔しかったですね」「〇〇が悲しかったのですね」など、相手の感情を鏡のように「反射」して、相手の感情を受け入れ、寄り添う姿勢を伝える手法です。

■明確化
相手の中であいまいになっている感情や事実に気づいたときに、気づいた内容を伝えて、相手の中で明確化する手法です。相手が忘れていた感情や見過ごしていた事実を認識できるようサポートします。

■質問
質問には、「はい」「いいえ」で答えられる「クローズドクエスチョン」と、「はい」「いいえ」では答えられない「オープンクエスチョン」があります。

アクティブリスニングの場合は、話が広げられる「オープンクエスチョン」が向いています。質問ばかりでは相手もストレスを感じるため、適切なタイミングを見て質問することが重要です。

ノンバーバルコミュニケーションによる手法

ノンバーバルコミュニケーションによる手法について、よく知られる4種類の方法を紹介します。

■体勢
体勢は、相手の話に対し、真摯に耳を傾けているという姿勢を示すために意識したいノンバーバルコミュニケーションです。お互いのパーソナルスペースを保ち、リラックスして相手の方に身体と顔を向けて話に耳を傾けます。

腕や足を組む姿勢や手遊びは、相手に悪い印象を与えるので避けるようにしましょう。

■表情
表情はノンバーバルコミュニケーションの中でも重要で、非常に多くの情報を相手に与えます。聞き手は、相手の話に合わせて表情に変化を持たることで、共感を示すことが可能です。また、話し手の表情から、感情の動きを読み取り、気遣いをすることもできます。

■アイ・アクセシング・キュー
アイ・アクセシング・キューとは、視線解析とも呼ばれる手法で、相手の視線から施行を読み取ります。例えば、視線を左上に動かす場合、相手は.記憶された視覚イメージ、右上に動かす場合は、構成された(想像した)視覚イメージを思い出していると言われています。

■ミラーリング
ミラーリングとは、相手のしぐさや行動を真似することです。ミラーリングを行うことで、相手は聞き手に親近感を覚え、心を開きやすくなる効果があると言われています。

このようにアクティブリスニングの手法はたくさんあります。簡単に取り入れられる手法から試してみて、自分に合った手法でコミュニケーションを円滑に進めましょう。

  • アクティブリスニングの手法

    アクティブリスニングの手法をできるところから取り入れてみよう

アクティブリスニングの姿勢のポイント

アクティブリスニングの手法を実践する前に、聞き手にはどのような姿勢が必要なのか、そのポイントを解説します。

自己一致

聞き手は、誠実でありのままの状態である「自己一致」の姿勢で話を聞く必要があります。相手の価値観や感情を否定せず、自身の本音をごまかすことなく相手と向かい合うことが大切です。

自己一致の姿勢を続けることで、相手との間に信頼関係が生まれ、よりスムーズなコミュニケーションにつながります。

無条件の肯定的配慮

相手の話を聞く中で、自身の価値観とは違う相手の一面に気づくこともあります。しかし相手の考えを否定するような言動をしてしまうと、相手は安心して話せません。

相手の話がどのような内容であれ、無条件に肯定するよう配慮しましょう。つい自分で善悪の判断を下してしまいそうになりますが、自分は自分、相手は相手と割り切り、「相手はこう考えるのだ」と受け入れます。

共感の姿勢

相手の話を聞いているときは相手の立場を想像し、相手への理解を深めましょう。共感の姿勢を示すと、相手も心を開いてさらに深い会話ができるようになります。

  • アクティブリスニングに必要となる3つの姿勢

    アクティブリスニングの基本姿勢を心がけ、よりよいコミュニケーションを目指そう

アクティブリスニングを学んで仕事を円滑に進めよう

アクティブリスニングは、傾聴の姿勢を身に付けるための一手法です。傾聴は、コミュニケーションの基礎であり、接客業や子育てなどあらゆるコミュニケーションの場において役立ちます。

アクティブリスニングは本などを読み、独学でもある程度は学べます。しかし社内外の研修を受けてグループワークを行うなど、より実践的な方法でトレーニングすることも重要です。アクティブリスニングを学び、仕事を円滑に進めましょう。