「資格取得のために頑張って勉強をする」といっても、いつも意欲的な状態でいられるわけではありません。疲れている日もあるし、なんとなく気分が乗らない日もあるでしょう。勉強するには、「ストレス」がつきものなのです。

  • “独学のスペシャリスト”が伝授する、勉強の「ストレスマネジメント術」 /学びのイノベーター・本山勝寛

勉強につきものであるストレスとどのようにつきあえばいいのでしょうか。高校時代にアルバイトで自活しながら東大に現役合格し、その後はハーバード大にも合格した「独学のスペシャリスト」、本山勝寛さんがストレスマネジメント術を解説してくれました。

■ストレスを避けるのではなく、「マネジメント」する

自分が興味を持っていることについて好きでやっている勉強とは異なり、仕事で迫られてやる資格試験などのための勉強にはストレスがつきものです。「やらなければならない…」「もうやめたい…」というふうな気持ちに伴って感じるストレスは、間違いなくネガティブなものです。

しかし、ストレスにはポジティブな側面もあります。資格試験の本番など緊張感が高まる場面では、受けるストレスも高まるでしょう。でも、「いい緊張感」という言葉もあるように、そのストレスがパワーになることもあるし、パフォーマンスを高めてくれるということもあるのです。

よって、「ストレス回避術」「ストレスを解消する」といったふうにネガティブなものととらえられがちなストレスですが、そうではなくて、うまく「マネジメント」することこそが、ストレスとつきあううえでもっとも大切なことだと考えます。

でも、ストレスに慣れていない人が、いきなり本番でストレスをパワーに変えてパフォーマンスを高められるかといったら難しいでしょう。ですから、ストレスに慣れていくことが大切です。

なんらかの資格試験を受けようとしている人なら、多くの模擬試験を受けることもそうするための方法のひとつでしょう。なるべく本番に近いシチュエーションに身を置き、ふだんの勉強の場にはない緊張感やストレスを感じることで、それらを徐々にパワーへと変えていくことができるようになります。

■停滞期のストレスを軽減する「成果の細分化と可視化」

また、勉強におけるストレスとして、先に挙げた「やらなければならない…」といった気持ちに伴うものとは別に、「思ったふうにいかない」という気持ちに伴うストレスも存在します。

勉強をはじめた当初は、すぐには目に見える成果が挙がらなかったり、最初はうまくいっても勉強しているうちに停滞期が訪れたりすることがあります。目標として掲げるような大きな成果を挙げるまでには、時間がかかるのが勉強というものです。

そのため、「これってやり方が間違っているんじゃないか…」「この勉強をやっていて意味があるのかな…」「これだけ頑張っても無駄かもしれない…」といったふうにストレスを感じます。こんなことを思いながら勉強していては、集中はできませんよね。いうまでもなく、成果を挙げることはますます難しくなってしまうでしょう。

そうならないためには、「成果を確認して実感する」ことがポイントになります。成果を細分化し、自分自身で成果を確認、実感する仕組みをつくるのです。

「資格試験合格」を目標にしている場合、その目標だけを意識していると、試験結果が出るまで成果を感じることができません。そのため、目標に向かう過程において勉強の成果を感じられず、「意味があるのかな…」といった不安やストレスを感じることになります。

そうではなく、1日、1週間、1カ月のあいだになにを達成したかという成果を可視化して、「目標達成につながる軌道にしっかり乗っているぞ!」と実感できれば、不要なストレスを感じることなく高いモチベーションを維持して勉強を続けられます。

仮に英語を学んでいて英単語を覚えようとしているなら、「今日は少なくともこの10単語を覚える」といった日々の目標を定め、「きちんと覚えられた!」「成長しているぞ!」と実感するわけです。そういう意味では、勉強時間を確保するときには、併せて1日の終わりに振り返りの時間を設定しておくことも重要です。

■ストレスフリーの勉強を可能にする「学習漫画」

働きながら勉強をする社会人にとっては、勉強時間の捻出はなかなか難しい問題です。そう考えると、勉強をしながらストレスを軽減するというような、なるべくストレスを感じずに勉強を続けられる方法も考えなければなりません。

子どもの頃のわたしにとっては、いわゆる「学習漫画」がそれにあたります。わたしが生まれ育った家庭は裕福ではありませんでした。でも、学習漫画の『日本の歴史』と『世界の歴史』だけは買ってもらえたのです。

それ以外の漫画は買ってもらえませんし、ゲーム機もありません。わたしにとっては、それらの学習漫画が最大の娯楽でしたので、何度も何度も読み返し、内容のほとんどを覚えてしまいました。もちろん、わたしにとっては娯楽でしたから、ストレスを感じることもありませんでしたし、勉強しているつもりもないほどでした。

活字離れが進んでいるといわれて久しいいまは、資格試験のための参考書やビジネス書など、書籍のほとんどのジャンルに、「漫画でわかる!」とうたわれた学習漫画・ビジネス漫画が数多く出版されています。それらを使って勉強することも、ストレスのマネジメントにおいては効果的だと思います。

もちろん、勉強から離れたストレス解消法も身につけておくといいでしょう。勉強では頭を使うのですから、身体を使う方法がいいかもしれません。

東大合格を目指していた高校生の頃、親がいなくて妹とふたりで暮らしていたわたしはアルバイトで自活する必要がありました。そのため、勉強の休憩を兼ねて行う食器洗いや洗濯といった家事も、当時のわたしにとってはストレスを解消してくれるものでした。

コロナ禍によってテレワークをしている人のなかには、運動不足解消のために散歩やジョギングをしている人も増えているでしょう。起床してすぐの早朝に行っているという人も多いと思いますが、運動不足解消だけでなく勉強のストレス解消も狙うのであれば、勉強の合間にそういった運動をすることを考えてもいいかもしれませんね。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人