アフターサービスと聞くとなんとなく、製品を購入した後に何か問題があれば連絡して解決するサービスと理解している人も多いかもしれません。しかし詳しい内容や、実際にどのような例があるかご存じでしょうか。
本記事では、アフターサービスの基礎知識を整理して解説します。また、経営戦略上アフターサービスが重要視されている理由や、企業の提供するアフターサービスの成功事例についてもまとめました。言葉としての意味や使い方、英語表現も紹介します。
アフターサービスとは? 基本的な意味を解説
アフターサービスとは、商品を購入した後に提供されるサービスの総称です。一般的なサービス内容としては、一定の保証期間内に発生する、商品の不具合に対する無償修理と保証期間を過ぎた後の有償修理、商品の使い方に関する啓発などがあります。
アフターサービスは、小売・卸店や製造業者のカスタマーサポート部門などに連絡することで利用できます。販売者がアフターサービスを提供する理由は、商品やサービスの販売を促進するためです。
アフターサービスの一般的な内容・メニュー構成
アフターサービスの一般的なメニュー構成は以下の通りです。
メニュー名 | サービス内容 |
---|---|
クレーム処理 | 苦情の受付と対応 必要に応じて修理や取り換え(有料)にも対応 |
無料修繕 | 一定の保証期間内での無償修理・取り換えなどの対応 |
点検、巡回 | 定期的な点検・巡回 |
取り付け | 取り付けに工事が必要な場合の対応 |
部品や消耗品の交換 | 破損した部品や消耗品を交換 |
商品によって細かいサービス内容は異なりますが、上記のサービス内容は概ね共通しています。
住宅におけるアフターサービス基準書とは
新築の戸建て住宅や分譲マンションを販売するハウスメーカーや工務店は、独自の基準で住宅の「アフターサービス基準書」を作成します。
販売する住宅に瑕疵(かし)が発見された場合、売主または施工業者は買主(注文者)に対し、民法などに定められた瑕疵担保責任を追わなくてはなりません。アフターサービス基準書は、瑕疵担保責任とは別に、対象物件に一定の問題が発生した場合に、ハウスメーカーや工務店がどこまで無償対応するかを定めています。
アフターサービス基準書は業者によって内容が異なります。住宅は高価な買い物であるため、事前にアフターサービス基準の有無や内容は確認しましょう。一般的なアフターサービス基準については、「一般社団法人 不動産協会」に戸建て用とマンション用があるため参考になります。
アフターサービスが経営戦略的に重要視される理由
近年、アフターサービスは経営戦略上も重要視されつつあります。その理由について順番に見ていきましょう。
顧客満足度の向上が図れる
アフターサービスに力を入れることは、顧客満足度の向上につながる可能性があります。最近はアフターサービスも浸透し、ユーザーが製品を購入する際の判断基準として、アフターサービスの有無や充実度を重要視するケースも増えています。
また、もしも製品にトラブルやわかりづらい点があった場合、通常であればマイナスイメージとなります。しかしそれに対しスピーディーで丁寧に対応することで、ユーザーの不満が抑えられるだけでなく、逆に企業への信頼度が増す場合もあるのです。これらが結果として、顧客満足度の向上に寄与すると考えられます。
IoTなどデジタル化によるアフターサービスの高度化
技術的な面でも、アフターサービスをより高度なサービスに変革できるだけの最新技術が台頭してきたことが、アフターサービスの広がりを後押ししています。
IoTやAI技術を利用して商品の稼働情報を収集・デジタル化し、故障予測やサービスの最適化が可能な段階に来ています。これらの技術を活用することで、事前に故障する可能性のある商品を察知して故障前にメンテナンスを行うことも可能になります。
能動的なサービスが定期的売り上げと競争優位性につながる
従来のアフターサービスは、故障してから修理するという、受け身でピンポイントの対応しかできませんでした。
しかし、前述のIoTなどの技術を活用することで、事前に故障を予測して修繕を行う、という能動的なアフターサービスも技術的に可能となりつつあります。ユーザーからすると何もアクションを起こさなくても適切なタイミングで商品がメンテナンスされ、長く使い続けられるようになってきています。
より魅力あるアフターサービスなら、定額のサブスクリプション型での提供も可能です。従来は収益面で厳しかったアフターサービス事業も、サブスクリプションでの提供により収益構造の改善が期待できます。
サブスクリプション型での提供が難しい場合でも、魅力のあるアフターサービスはリピート購入につながり、定期的な売り上げにつながる可能性があります。
SDGsの広まりによる「大量生産・廃棄」からの脱却
SDGs(Sustainable Development Goals)とは、地球上の人類を誰も取り残さず、持続可能かつ多様性・包摂性のある社会の実現を目指す17の国際目標のことです。持続可能な社会を目指すためには、従来の大量生産・廃棄からの脱却が求められます。
こうした社会の流れの中で、購入した商品を長く使い続けるための有効な手段のひとつとして、アフターサービスが注目を集め始めています。
これらの理由から、アフターサービスは今後ますます重視されると考えられています。
アフターサービスの成功事例
他社とは違う魅力あるアフターサービスを提供して成功した事例として「レクサス」の例を紹介します。
トヨタは、高級車「レクサス」のブランド戦略として、オーナー専用のアフターサービスを提供しています。
オーナー専用のサポート窓口は、24時間365日対応です。トラブルや故障対応はもちろんのこと、商品をより楽しく使うための情報提供や予約サービスなど、ホテルのコンシェルジュサービスと同等のサービスを提供しています。
このオーナー専用のアフターサービスは非常に高い人気を博し、顧客の満足度が高いとの評価を得て、商品のブランド価値を高めました。
アフターサービスの使い方と例文
アフターサービスは、どの分野で利用しても意味合いは変わらず利用できる言葉です。以下に例文を紹介します。
・ 商品の訴求ポイントのひとつとして、アフターサービスの内容を改善しよう。
・アフターサービスの収益性を改善するには、定額のサブスクリプション型サービスへの移行が重要だ。
・これからのアフターサービスは、故障予測を行い壊れる前に修理をすることが求められるだろう。
アフターサービスの類語表現
アフターサービスと同じく、商品の販売後に提供するサービスを表す類語としては、「アフターフォロー」と「アフターケア」があります。
アフターフォロー
アフターフォローとは、商品販売後に、顧客の問い合わせや相談などを受け付ける企業のサービスを指します。アフターサービスと同義であり、そのまま言い換え可能です。
アフターケア
アフターケアは、アフターサービスやアフターフォローよりも一歩踏み込んだ、顧客への積極的な対応を表す言葉です。商品購入後も顧客の質問に答え、「面倒見のいい販売店」といった印象を与え、顧客のファン化を促します。
また、アフターケアは医療分野においては、手術後や病気の回復期の患者に対する病後追跡・リハビリテーション・管理などの意味を持ちます。
アフターサービスの英語表現
アフターサービスは和製英語のため、そのまま「after service」としてもうまく伝わりません。英語でアフターサービスを表現するには、「after-sale service」「repair service」などが適切です。「customer service」も使えますが、この場合は、商品の購入前サービスも含まれる場合があります。
アフターサービスを含む英語の例文は以下のとおりです。
・Before buying a new camera, I checked the after-sales service.
(新しいカメラを購入する前に、アフターサービスの内容を確認した)
・The washing machine I just bought broke down, so I immediately used the after-sales service to request a free repair.
(買ったばかりの洗濯機が故障したため、早速アフターサービスを利用して無償修理を依頼した)
時代の流れに合わせて進化するアフターサービス
アフターサービスも時代の流れに合わせて変わりつつあります。故障や問い合わせの連絡に対応する受け身の姿勢から、製品の仕様率などをモニタリングし、呼称が予測される場合連絡して対応する、といった能動的なアフターサービスも登場しているほどです。
アフターサービスが提供する一般的なサービス内容と新しい動きを把握し、自社が提供するアフターサービスの強み・弱みを知っておきましょう。