マセラティ初の電動モデル「ギブリ ハイブリッド」が日本上陸を果たした。2.0Lのエンジンに48Vのマイルドハイブリッド(MHV)システムを組み合わせる新しいギブリは、V6やV8のイメージが強いマセラティ車の中ではおとなしい存在なのかと思いきや、さにあらず。溜めた電気は走りに全て使い切る、いさぎよいクルマだった。
“過激”なマイルドハイブリッド車?
「ギブリ」(Ghibli)はマセラティのセダンで、2013年にデビューした現行モデルは3世代目にあたる。累計生産台数は10万台を超えている。
日本で買えるギブリのエンジンを確認してみると、「ギブリ」は3.0LのV6エンジン(最高出力350PS)、「ギブリ S」は同じく3.0LのV6(430PS)を搭載しており、2021年6月中に導入予定の「ギブリ トロフェオ」に至っては、最高出力580PSを発生する3.8LのV8エンジンを積んでいる。この並びでギブリ ハイブリッドの心臓部を確認すると、2.0Lの直列4気筒ターボエンジンにMHVの組み合わせというのはいかにも非力な印象だが、どうもそうではないらしい。「走りに振った“過激”な2.0Lです」というのが、マセラティ ジャパンの山本文悟さんによる紹介だ。
ギブリ ハイブリッドの動力性能は最高出力330PS、最大トルク450Nm。2.0Lでここまでの馬力を出せるのは、メルセデス・ベンツ「AMG」やボルボ「ポールスター」、スバル「STI」といった走りの精鋭たちくらい。ギブリの2.0Lエンジンはアルファロメオでも使われているものだが、「基本構造は一緒でも、中身は全く別物」(以下、カッコ内は山本さん)とのことだ。しっかりとコストをかけて高性能化を図ったらしい。
この高性能エンジンに組み合わせるのは、48Vのオルタネーター、eブースター、バッテリーからなるMHVシステムだ。MHVと聞いて、「マセラティも燃費向上を追求するようになったのかな?」と思ったのだが、実態は全く違った。「溜めた電気は全部、走りに使います」というのだ。
オルタネーターがベルト駆動スターター(BSG)としてクルマの走り出しをアシストするのはほかのMHVでも見かける仕組みだが、ギブリ ハイブリッドは「eブースター」で出足をさらに力強く後押しする。eブースターは電動モーターで空気を圧縮してエンジンに送り込む機構のこと。排気ガスでタービンを回すターボは走り出してから効力を発揮するが、電気で動くeブースターには走り出す前から動き出せるという特徴がある。
電気を使えば、走行状況に応じてエンジンを停止させるなどの仕組みを採用することにより、燃費効率向上を図ることもできたはずだが、ギブリ ハイブリッドはそうしなかった。電気は全て走りに使うというのがマセラティのやり方だ。ただ、エンジンに最も高い負荷のかかる走り出しを電気の力でアシストするので、ギブリ ハイブリッドはMHVなしの場合に比べ、11%程度の燃費向上も実現しているという。
ギブリではハイブリッドが最も安いモデルとなる。価格は「ギブリ ハイブリッド」が956万円、「ギブリ」が1,156万円、「ギブリ S」が1,331万円、「ギブリ S Q4」が1,411万円、「ギブリ トロフェオ」が1,801万円だ。山本さんによると、ギブリのグローバル販売に占める「ハイブリッド」の割合は2020年で10%程度だったが、2021年に入ってからは平均すると7割くらい、地域によっては8~9割がハイブリッドとなっているそうだ。
マセラティでは今後、SUV「レバンテ」のMHVを日本に導入する予定。エンジンはギブリ ハイブリッドと同じで、導入は2021年中を見込む。同社からは将来的に、100%電気自動車(ピュアEV)も登場する予定とのこと。マセラティでも電動化が加速しているようだ。