新GPUの発表に伴って各メーカーから矢継ぎ早に製品が登場しています。そんな折、今回はPalitから「GeForce RTX 3080 Ti GamingPro」をしばらくお借りすることができました。普段は機材手配の都合でなかなか短期試用でのレビューが多くなってしまうところ、ご厚意でしばらく使っていてもいいとのこと。というわけで今回は、猛烈な性能の最上級グラフィックスカードを実際にPCに組み込んで、ゲームや在宅勤務などの普段使いをしてみたインプレッションについてお届けします。

ガッチリした外観を眺める

Palitからはド派手なイルミネーションを備えたハイエンドモデル「GameRock」シリーズも販売されていますが、本製品はシンプルなデザインの「GamingPro」シリーズに属しています。クーラーはなかなか大規模で、ヒートパイプは6本搭載。そのうち2本を大きくヒートシンク内で折り返すことで、6+2本ぶんの冷却効果を実現するという新開発の「ダブルUヒートパイプデザイン」を採用しています。ファンには何やら溝が設けられており、冷却効果を高めてくれていそう。さっそく写真で見ていきましょう。

  • Palit「GeForce RTX 3080 Ti GamingPro」全景。シンプルなデザインです

  • 3つめのファンを覆うように、金属素材のフレームが装着されています

  • 補助電源は8pin×2。電源ユニットは750W以上を推奨しています

  • 映像出力端子はDisplayPort 1.4a×3、HDMI 2.1×1で、4画面同時出力に対応します

  • 裏側は分厚いバックプレートに覆われており、基板はほとんど見えません。GPUの裏側にはホコリが積もりがちなので、バックプレートで隠れている仕様は大歓迎

  • 3つめのファンに吹かれた風が通り抜けるようになっています。個人的にはなぜバックプレートをベージュにしたのかが気になりました

  • 付属品には分厚いアクリル製のサポートステイを同梱しています

  • 使い方のシールを見てみると、必ず使うように推奨されていました

シンプルなデザインながらチープさは全くなく、3つめのファンをカバーする金属製のフレームなどによってかなりしっかりした印象。バックプレートとクーラーで基板をほぼ完全に覆い隠していることや、GPUの裏側を完全にカバーしている点も気に入りました。バックプレートのカラーがなぜかベージュになっていることが気になりますが、これはNoctua製ファンとの組み合わせを想定したものなのでしょうか。

全面にクリスタルのような装飾を備えて光りまくるGameRockシリーズよりは控えめですが、それでもライティングはかなり立派。クーラーを斜めに大きく横切るように発光部があしらわれており、強力に発光します。イルミネーションのパターンはさまざまな色が遷移していくという一般的なものですが、その移り変わりがかなり高速。実際に見てみると下の写真よりちょっと派手かもしれません。まあケースに組み込めば発光部は下を向くので、そう目立たないかなと思いきや、意外な仕掛けが。

  • 作業台の上に組み込んだ様子。発光色がどんどん変わっていき、光量も大きめなので刺激的です

  • 透明なアクリル製サポートステイに光が乱反射し、きらびやかになるではありませんか(画像下部)

そう、重いグラフィックスカードを支えるために装着したサポートステイ。これにライティングが当たることで、なかなか賑やかなイルミネーションを楽しめるというわけ。価格差から「GameRock」シリーズの購入を見送ったユーザーも、これならイルミネーションに不足を感じることはないでしょう。

超ハイエンドGPUの常用やいかに

すみずみまで眺めたとことで、ケースに組み込んでいきます。このグラフィックスカードは全幅294mmという堂々たるサイズを誇りますが、奥行きがコンパクトなPCケース「NZXT H510 Elite」にもすんなり収まりました。ただ若干、水冷チューブの取り回しが腕の見せ所になるかも。サポートステイも取り付けてみたところ、ケースの拡張カードスロットを埋めることができてなかなか好印象です。構成は以下のようになりました。

  • CPU:AMD Ryzen 9 3900XT
  • CPUクーラー:NZXT Kraken X53
  • マザーボード:ASUS ROG Crosshair VIII Hero
  • メモリ:Corsair DDR4 2666MHz 8GB×4(32GB)
  • グラフィックス:Palit GeForce RTX 3080 Ti GamingPro
  • ストレージ:Samsung 970 EVO Plus 500GB、850 EVO 500GB
  • ケース:NZXT H510 Elite
  • 電源ユニット:Corsair 750RM

性能は全く驚くべき高さ…と言いたいところですが、前からGeForce RTX 2080 Tiを使っていたため、常用シーンではそう体感できるものでもありません。性能よりも気になるのは、とにかく消費電力と発熱が大きいところ。暑くなってくる季節ということもあり、GPUはアイドル中でも60度寸前に。

  • 何もしてないにしては熱すぎる(GeForce RTX 3080 Tiそのものがこういう製品なので仕方ない)

この画像をよく見ると、アイドル時にGPUだけで40Wも消費しているところも見逃せません。「ちょっと調べ物がしたい」「動画 / 配信を見たい」「データを整理したい」というような軽すぎる用途では、PCを使うのをはばかられる気がしてきます。

どんなにヘビーなゲームもバリバリ遊べる圧倒的な“余裕”がある

超ハイエンドGPUにつきものの消費電力には少し困らされていますが、それでもゲーミングにおける圧倒的な性能には本当に驚かされました。これまでGeForce RTX 2080 Tiを使ってきたところ、WQHD解像度での高設定ゲーミングには若干力不足かな…と感じる場面も多くありましたが、もはやどんなゲームでも完全に余裕のある動作に。今はずっと前に買ってから放置していた『ウォッチドッグス レギオン』を楽しんでいます。

  • 設定はもちろん“最高”。ウォッチドッグスレギオンのベンチマーク結果です

  • GeForce RTX 2080 Ti比でもこれだけ性能が向上したとのこと(NVIDIAの発表資料より抜粋)

個人的にとても嬉しかったのは、これまでオンにするのをためらっていた「リアルタイムレイトレーシング」をためらいなく有効化できるようになったところ。描画遅延を低減する「NVIDIA Reflex」や、高解像度での描画に役立つ「DLSS 2.0」ももちろん使えます。NVIDIAの最新技術がゲーム体験に活きてくる…という、機能美を全面に感じられるところが素晴らしく思いました。

  • リアルタイムレイトレーシングによるグローバルイルミネーションによって、ハイディフィニティなグラフィックスを楽しめます

また、超ヘビーなゲームのプレイ時でも動作音は至って一般的なレベル。さすがに「何やらPCががんばっているな」と感じるほどにはファン音は大きくなりますが、ファン音そのものも不快なタイプではなく、コイル鳴き等もないように思います。ただ、ケース内のエアフローには要注意。給排気をしっかりと行い、350Wを消費するモンスター級GPUの冷却に努める必要があります。

余談ですが、強力すぎるGPUの使いこなしは「フレームレート制限」がポイントかも。筆者はWQHD(2,560×1,440ドット)の165Hzディスプレイを使っているので、FPSゲームは170fps、そうでないゲームパッド操作のタイトルは60fps(垂直同期オン)に設定してプレイしています。ここまで強力(かつ高価)なPCパーツを躊躇なく購入するヘビーゲーマーはあまり気にしないのかもしれませんが、個人的には描画の無駄が減って快適になりました。

  • とても軽い点が特徴のVALORANTには細やかなフレームレート制限の設定項目が用意されています

欲しいぜ、Palitの超ハイエンドグラフィックスカード

PCパーツメーカー各社からさまざまなGeForce RTX 3080 Ti搭載製品が展開されている上、下位モデルや上位モデルの価格も目まぐるしく変動しています。そんな中、本製品はドスパラで175,000円(記事執筆時点)という手の届きやすい価格で取り扱い中。もちろん安い買い物ではありませんが、限られた予算の中で限界まで性能を重視するとなると、Palitの「GeForce RTX 3080 Ti GamingPro」はきっと魅力的な選択肢になってくれるに違いありません。