ファシリテーターは、会議がスムーズに行えるよう、司会進行や時間管理などを担う人のようなイメージを持っている方は多いでしょう。ビジネスにおける会議などでは、特に重要視されるファシリテーターですが、一人にかかる負担が大きいため、いざやってみようと思ってもなかなかうまくいきません。
そこで本記事では、ファシリテーターをする人に向けて、ファシリテーターの役割やコツ、注意点などを紹介します。
ファシリテーターとは?
ファシリテーターとは、グループや会社の組織で会議や研修などを行う際に、場がスムーズに進むよう、客観的な立場で議論の進行や舵取りをしたり、参加者に意見を求めたり、決められた時間内に議論を収束させるなどのファシリテーション能力を発揮させる人のことをいいます。
ファシリテーターが広まったわけ
ファシリテーターが広まる以前は、「司会進行役」が会議に置かれ、議論を進める役割を果たしていました。
しかし司会進行役では、意見が対立したときや議論がこじれてしまった場合に、次のアクションに議論の矛先を向けられず、そのまま会議が時間切れになってしまったり、話がまとまらずに終わってしまったりといった状況がよくありました。
そのため、マルチタスクなファシリテーション能力をもつ「ファシリテーター」に近年注目が集まっているのです。
ファシリテーター・司会・ネゴシエーターの違い
ファシリテーターと司会、またネゴシエーターにはそれぞれ違いがあります。
議論の中でさまざまな役割を担うファシリテーターとは対照的に、司会は議論の進行のみを担当しています。そのため、参加者の意見を引き出したり、意見をまとめたりすることは基本的にありません。
一方で、ネゴシエーターは「交渉人」とも言われており、意見が対立した際に交渉術を使って相手を説得させる役割を持つ人のことを指します。
ファシリテーターの役割
ファシリテーターには主に3つの役割があります。
司会進行をする
1つ目は「司会進行」の役割です。ファシリテーターはまず、会議の目的やゴール設定、議論全体の流れや議論の仕方を定めます。会議の中では、参加者の意見をうまく引き出す役目や、意見の絞り込みや整理、そして結論をまとめるところまでを一貫して担うのです。
タイムマネジメントをする
2つ目は「タイムマネージャー」としての役割です。意見が上手くまとまらない会議では、会議がぐだぐだと長引いてしまいます。決められた時間内にきちんと会議を終わらせるためにも、議題の配分を考え、時間を管理する必要があります。
会議の雰囲気を作る
3つ目は「会議の雰囲気を作る」役割です。いい会議とは、意見や議論が活発に行われる会議のことをいいます。その場に参加している誰しもが、リラックスして思っていることを気兼ねなく発言できるような場を提供することもファシリテーターの大事な役割のひとつです。
ファシリテーターをする上でのコツ
マルチタスクでさまざまなことを考えなくてはいけないファシリテーターを任され、自分にそんな大役ができるのかと不安な方も多いでしょう。ここでは、そのような方に向けてファシリテーターをする上でのコツを4つ紹介します。
有意義な会議の進め方
ファシリテーターをする上で知っておきたい1つ目のコツは、有意義な会議にするために、まずしっかりとゴールを設定し、共通認識されたゴールに向かって議論を進めていくことです。 議論の目的やゴールが共有できていない会議は、議論が徐々に議題から脱線してしまったり、意見が散らかってしまったりと、結論を出すのが難しくなります。
会議の場の雰囲気を良くする
2つ目のポイントは、会議の場の雰囲気を良くするコツです。会議の場の雰囲気を良くするコツは、なんといっても「アイスブレイク」が上手くなされたかどうかにかかっています。
そもそもアイスブレイクとはなんなのでしょうか。アイスブレイクを直訳すると「氷を壊す」という意味で、初対面で緊張している状態から、場を和ませて緊張を解くといった意味合いで使われる単語です。
会議においては参加者同士の緊張が解け、リラックスした状態で意見を言い合える環境が大事ですので、会議の頭に自己紹介の時間などを取り入れるなどして、議論をよい雰囲気で始められるようにしましょう。
話し合いをうまく広げる
ファシリテーターをする上で知っておきたい3つ目のポイントは、話し合いをうまく広げるコツです。議論を活発化させるには、意見をたくさん引き出す必要があります。
行き詰まってなかなか意見が出てこない場合には、ブレインストーミングの表を用いたり、ホワイトボードに意見を書き出して目に見える形にしたり、また状況によっては紙に意見を書いてもらうといった手段もよいかもしれません。
話し合いをうまく整理する
4つ目のポイントは、話し合いをうまく整理するコツです。話し合いを広げたくさんの意見が出てきたら、意見を分類ごとに整理していくことが大切です。同じジャンルに分けたり、共通性で分けたりして、意見の選択肢を絞っていきましょう。
最後の1つに絞るには、多数決や、アイデアを点数化して投票する方法を用いるとよいでしょう。
ファシリテーターとしての注意点
仕事の多いファシリテーターですが、注意しなければいけない点もあります。
それは、ファシリテーター自身の主観や意見を介入させないようにすることです。ファシリテーターの目的は、中立的な立場で議論を導いていくことですので、個人の意見や感情と議論を切り離して考える必要があります。
また、ファシリテーターに決定権はないということも覚えておきましょう。議論が白熱していると、そのままの流れでファシリテーターが解決策までまとめて決めてしまうという事態に陥ることがあります。
しかし、ファシリテーターはあくまで中立的な人なので、結論を勝手に決めてしまわないよう注意が必要です。
ファシリテーターの課題
近年、有意義な議論をするために注目されているファシリテーターですが、もちろん課題もあるのが現状です。
司会進行だけでも大変な役割なのにも関わらず、ファシリテーターは、その何倍もの仕事を一人で背負っています。例えば、タイムマネジメント、会議の進行、参加者からの意見出し、出た意見を絞っていき最終的に結論を導きだす、といった役割を全て一人で行わなければいけません。
ただでさえ負担が大きい状況なのに、会議の参加者のスタンスが協力的でなく、全てファシリテーターに責任を丸投げという状況では、いくら腕のいいファシリテーターでも結論に導くのが難しくなってしまいます。また、ファシリテーターが入ることによって、会議全体がファシリテーター1人のスキルに影響されてしまうという問題点もあります。
円滑な会議を行うためにも、タイムマネジメントは別の人が担うなど、ファシリテーターの負担が重くなりすぎないよう可能な範囲で参加者もサポートするようにしましょう。
ファシリテーターの役割をしり会議をうまく進めよう
ファシリテーターは、ファシリテーションの能力を必要とする責任重大で負担の大きい役割ですが、会議の参加者の協力があって初めて成り立つ役回りとも言えます。
ファシリテーターをする際には、自分の意見と感情を切り離し、常に客観的な立場で議論を進めるようにしましょう。また、一人にかかる負荷が大きいので、その場にいる人の協力も必要に応じて仰ぐことが大切です。