最近、「フリーアドレス」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。オフィス形態の関連用語であり、文字通り「住所のない、自由なアドレス」という意味です。簡単に言ってしまうとオフィスにおいて各々が使用するデスクが固定されていないことを指します。
自由で近代らしささえ感じさせるフリーアドレスですが、その特徴やメリット・デメリットを理解せずそのまま導入してしまうのは危険です。今回は実際にフリーアドレスを導入した実例も含めて、ポイントや注意点も解説します。
フリーアドレスとは
政府が掲げる「働き方改革」をはじめとした、日々変化する社会情勢に合わせて導入する企業多くなったフリーアドレスについて解説します。
フリーアドレスの意味
フリーアドレスとは、オフィス内に設置されている椅子やデスクの中から自由に場所を選んで着席し仕事をすることです。
フリーアドレスでは各社員にそれぞれのデスクが決められており、個人専用の場所が与えられているわけではありません。ノートパソコンやケーブルさえあれば、誰がどのデスクに座っても仕事をすることができることに加え、急な会議やグループディスカッションなど、さまざまなビジネスシーンにすぐに対応できます。
フリーアドレスと聞くとベンチャー企業や中小企業などを中心に導入されていると考える方もいることでしょう。ですが、フリーアドレスというオフィス形態は大手企業でも幅広く活用されており、ヤフーやカルビーなどの企業も導入しています。
テレワークとフリーアドレスによるオフィスの変化
新型コロナウイルスが流行してからは働き方の多様化が急激に早まり、さまざまな工夫がされるようになりました。コロナ禍で誕生した新しい働き方の代表的なものとして「テレワーク」が挙げられます。
実はフリーアドレスとテレワークは相性がいいとされています。テレワークは日ごとに出社するメンバーが異なるので、デスク場所が固定されていると社員同士の距離ができてしまったり、空席が目立ってしまったりします。
ですが一方で、フリーアドレス化することで、デスクを柔軟に変更できたり移動しやすくなったりするので、出社メンバーが日ごとに替わってもコミュニケーションが取りにくくなる心配が少なくなります。
フリーアドレスの過去と現在
「フリーアドレス1.0」とは
フリーアドレスという言葉は最近注目されるようになりましたが、実は1980年後半から2000年代にかけて導入されていたことがあるのです。この時期に取り入れられていた従来のフリーアドレスを「フリーアドレス1.0」と呼んでいます。
フリーアドレス1.0はコスト削減を目的としたもので、デスクを共有化することで空席の回転率を上げたりオフィス内のスペースを節約したりすることを指しています。
「フリーアドレス2.0」とは
その後に登場したのが「フリーアドレス2.0」でした。フリーアドレス2.0は、コスト削減ではなく「働き方改革」の考えの下、自由で主体性を重視する目的で導入されています。
フリーアドレス2.0が登場した背景にはインターネットの進化が挙げられます。書類で管理していたものはクラウドに保存ができ、遠隔操作でビデオ通話をつなぐことができるようになったことも大きな理由の一つです。
フリーアドレスのメリット
フリーアドレス導入のメリットをご紹介します。
コミュニケーションの活性化
フリーアドレスの最大のメリットは、コミュニケーションの活性化です。フリーアドレスは決まった席がないことから、いつでも他部署の人たちと気軽に接することができます。
情報交換や共有はもちろんのこと、組織全体で横のつながりが生まれやすくなります。今まで関わることのなかった部署のメンバーとコミュニケーションを取ることで、これまでにないアイデアの多様性にも期待ができます。
独創的なアイデアや多様なコラボレーションは、1人だけの思考ではなく複数人の会話の中から創られます。従来の日本社会では、会社の指示通りに働き続けることが「良し」とされていました。
しかし、近年では自主性を重視し、協調性や社会性、場面によって柔軟な対応ができる優秀な人材が求められるようになりました。新型コロナウイルスの影響でその考えは急速に進み、会社に頼るのではなく個人としていかに優秀かどうかが判断される傾向がより一層強くなりました。
副業やフリーランスなど柔軟な働き方が「普通」になりつつある今、コミュニケーションの活性化を図るフリーアドレスは以前にも増して注目を集めているのです。
整理整頓が進みやすい
さらに、整理整頓に関しても大きなメリットがあります。座席が決まっていないことからも、自分自身が今使っているデスクは自分1人だけが使うものでなく、「みんなで共有している場所」という意識が生まれます。私物がデスクに散らかるリスクが少なくなるので、オフィス全体を比較的綺麗な状態に保つことができます。
その他、人員変更や急なチーム編成にもすぐ対応できる点もフリーアドレスのメリットとして挙げられます。
フリーアドレスのデメリット
部署内のコミュニケーションが希薄になる可能性
フリーアドレスにはメリットがある一方でデメリットもあります。上記で述べたように、フリーアドレス化することによって、他部署とのコミュニケーションは活性化します。ですが同時に、部署内のコミュニケーションが少なくなるということも頭に入れておいてください。
同じ部署のメンバーが散り散りに着席してしまうことで、部署内での個々の作業内容や進行度合いも把握しにくくなります。個々の業務内容の把握が難しくなるということは、全体のマネジメントもよりハードルが高くなるのも事実です。
自由で新しい働き方としてメリットばかりに目がいきがちですが、業種や職種、仕事内容によって向き・不向きがあるということも必ず覚えておいてください。
フリーアドレス導入に失敗しないよう、知っておきたいポイント
メリット、デメリットについて解説しましたが、実際にフリーアドレスを導入する際にぜひ知っておいてもらいたいポイントを2つご紹介します。
フリーアドレスに不向きな仕事もある
1つ目は、デメリットでも述べたように業種や職種によっては不向きな仕事もあるということです。
例えば、経理部で考えてみましょう。経理部は他部署よりも部署内での会話や情報交換が多く、事務作業中心ということもあり固定席が適していると言えます。また、お金を扱っているため、フリーアドレスを導入すると周囲の喧騒が気になり、集中の妨げにもなりかねません。
フリーアドレスへの「慣れ」に時間が必要
2つ目は日本人の傾向として、仕事をするうえでの「自由」に慣れていないことが挙げられます。これまでは席が固定されているのが当たり前で、会議などは会議室で行うというのがメジャーでした。
こういった型にはまった働き方が当たり前だった日本人にとって、いきなりフリーアドレス化による「自由」を与えられても慣れない人や居心地が悪いと感じてしまう人も少なくありません。
フリーアドレスの課題解決策
フリーアドレスにはメリットがある一方で、デメリットとしてあげたような課題もあることをご紹介しました。その課題に対してどのような対策や解決策があるのか考えてみましょう。
集中スペースの確保
フリーアドレス化すると、仮に周囲が営業職の場合、どうしても取引先との会話が多くなりがちですがら、その声量が気になってしまい集中力を保つことが難しくなります。
ですので、フリーアドレス化するデスクとは別に「集中スペース」を別に作っておくことをおすすめします。そうすると、コミュニケーションを積極的に行う場面と1人で一気に集中する場面の両方があることで、メリハリを付けることができます。
簡単にレイアウトが変更できるデスクを用意する
デスクを簡単に動かせるものにすることも非常に重要なポイントです。フリーアドレスのメリットとして急な人員変更や会議などにすぐ対応できる点を挙げましたが、人が動くと同時にデスクも柔軟にレイアウトを変更する必要があります。
デスクも固定されてしまうものよりも、タイヤ付きなど簡単に動かせるデスクのほうがフリーアドレスに適していると考えられます。
個人ロッカーの設置、フリーアドレス用バッグの導入
最後にご紹介するのが個人ロッカーの設置です。デスクが自分のものではない以上、デスク上に私物を置くことができまでん。オフィス内を綺麗に保つという点では大きなメリットになりますが、同時に個人の荷物や私物の置き場に困るというデメリットもあります。対策としては、個人ロッカーを設置することです。
ロッカーを設置することで、自分専用のデスクがなかったとしても私物をきちんと管理し、整理整頓ができます。近年はPCや文房具が入れられるフリーアドレス用のバッグも各社から発売されているので、用意しておけば小物をまとめてその日のデスクに持ち運ぶことができます。
フリーアドレスのメリット、デメリットを把握しよう
今回は新しいオフィス形態であるフリーアドレスについてご紹介しました。在宅勤務やテレワークなど次々と新しい働き方が登場する中で、多くの企業や会社が導入しているフリーアドレス。メリット・デメリットや特徴を理解した上で導入することで、コミュニケーションの活性化や、業務の効率を図れます。
これからオフィスのフリーアドレス化を目指す方々にぜひ参考にしていただきたいです。