フィジビリティスタディ(Feasibility Study)はビジネス用語としてよく使われており、「FS」「F/S」とも表記されています。新規事業や新しいサービスの提案・企画の会議などで耳にしたことがある方もいるかもしれませんね。

この記事では、フィジビリティスタディの意味や活用方法について、実例とともにわかりやすく解説していきます。

  • フィジビリティスタディとは?

    フィジビリティスタディの意味、説明できますか?

フィジビリティスタディとは?

フィジビリティスタディには、計画や新規事業、新しい商品開発など事前に調査したり、検証したりする意味があります。「実行可能性調査」とも呼ばれるビジネス用語です。「フィージビリティスタディ」と表記することもあります。

フィジビリティスタディの期間は、プロジェクトや企画によりますが、革新的なシステムの改変や技術開発が伴う場合は数年かかる場合もあります。調査範囲は幅広く、企業の理念と一致しているか、技術的にも価格的にも実現可能かどうか、市場や社会面はどうかなど、あらゆる立場や視点で調査しなければなりません。

フィジビリティスタディは、プロジェクトの成功に大きく関わります。事前に調査し、計画内容を練り直すことでリスクを回避できるからです。

フィジビリティスタディの歴史

1933年当時のアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトが世界恐慌の対策とし、テネシー川流域開発公社(TVA)を設立した事例がフィジビリティスタディの最初といわれています。以降ダムや空港、ごみ処理場などの公共事業の開発に多く実践されています。

フィジビリティスタディの会話での使用例

フィジビリティスタディは、ビジネスシーンはもちろん日常会話でも使える用語です。

会話例1:フィジビリティスタディを入念に行った結果、この新規事業は売り上げを伸ばしている。

会話例2:今回の新規プロジェクトは業界の競合が多いので、フィジビリティスタディを繰り返し行う必要がある。

フィジビリティスタディの進め方

フィジビリティスタディは4つのステップを踏んで実行するのが一般的です。ここではフィジビリティスタディの進め方を紹介します。

1.課題を明確化する

はじめに、プロジェクトや新規事業の課題を明確にするのが大切です。新しい技術の実現性や予算、業務について具体的に問題点や起こりうる問題を明確にします。

この時点で起こりうる問題やリスクを把握しておくことで、解決方法をあらかじめ探すことができます。

2.要求・制約事項をリストアップする

課題を明確にできたら、課題を解消するためのプロセスや必要事項をリストアップしましょう。その課題を解決するまでにかかるプロセスやコストを特定できます。

3.代替案を用意する

検証により、案が実現不可能になる場合があります。そのため、複数の実現可能な代替案を用意しておきましょう。そうすることで効率的に進めることができるようになります。代替案ができたらフィジビリティスタディの実行、つまり調査や検証を実行しましょう。

4.結果を評価する

フィジビリティスタディの実行に移ったら、結果を評価することが重要です。フィジビリティスタディの結果は、プロジェクトの関係者や融資している企業・投資家の意思決定に大きく関与する部分です。評価し報告書にまとめましょう。一時的なリスクがあったとしても、最終的に利益が得られるかが評価を行う時の重要ポイントです。

  • フィジビリティスタディとは?

    フィジビリティスタディは結果を評価するまでが一連流れです

フィジビリティスタディを用いた実例

食品製造業の新規事業でフィジビリティスタディを活用した例を紹介します。アジア・アフリカにある現地のネットワークを活用し、フィジビリティスタディの実行・評価レポートの作成を支援しているイースクエアです。

プロジェクト概要は、タンザニアにて干し芋を製造・販売する事業が実現可能かどうか調査することで、クライアントはタンザニアの市場での干し芋の受容性・タンザニアで美味しい干し芋が製造できることを検証したい、という要望を持っていました。

イースクエアはフィジビリティスタディとして、まずさつまいもの種類や産地、価格を調べ、国際見本市に出展して干し芋のテストマーケティングを行います。そして、現地の小規模小売店やスーパーでテスト販売を行い、干し芋が市場に受け入れられるかも調査しました。さらには現地で製造設備を持ち込み試験生産を実施。工場が実際に設立できるか適地を特定することに成功しました。

このフィジビリティスタディから、干し芋をタンザニアで製造・販売することが実現可能であることや市場にも受け入れられることを検証することができました。また、検証の結果をもとに、工場の設置適地を決定することが可能になったのです。

この例からもわかるように、フィジビリティスタディを行うことによって、製造の実現性や採算性・市場の受容性などが把握でき、新規事業を進めていくことができます。

  • フィジビリティスタディを用いた実例紹介

    フィジビリティスタディを用いた実例

フィジビリティスタディとPoCの違い

フィジビリティスタディとPoCは、時に同じように使われることもありますが正確には別の意味です。違いを理解して使用しましょう。

PoCとは

PoCとは、「Proof of Concept」(概念実証・実験)のことです。新しい技術や製品を導入する場合、導入する前に技術・コスト・運用面などにおいて実効性があるかどうかを検証します。

PoCによって、プロジェクト実行中に「こんなはずじゃなかった」というリスクを未然に防ぐことが可能です。

フィジビリティスタディとPoCの使い分け

PoCの意味だけ聞くと、フィジビリティスタディとの違いはないように感じますが細かく定義した場合、フィジビリティスタディを行ったあとにPoCに移るのが正しい順序です。

フィジビリティスタディでまず、新規事業や企画の課題を明確にし、解消したい課題の優先順位や実行のための仮説をたてます。その際の検討内容は、市場調査やコスト面・経済分析などさまざまです。

その後PoCにて課題が解消するかどうか検証を行っていきます。PoCでは主に技術的・費用的に実現できるかどうかを判断します。

  • フィジビリティスタディとPoCの違い

    フィジビリティスタディとPoCの違いを理解しよう

フィジビリティスタディは新規事業やサービスの企画に必要

フィジビリティスタディとは、サービスやプロジェクトの実現可能性、利益や採算を調査検討することです。英語表記「Feasibility Study」の頭文字をとって、「FS」「F/S」とも呼ばれています。

フィジビリティスタディを行うことで、課題が明確になり起こりうるリスクを排除することができます。中長期的プロジェクトや事業を行う場合は、特にフィジビリティスタディが重要です。ビジネスシーンで使われることが多い言葉なので、正しい意味や使い方を知っておきましょう。