ビジネス用語としての出没頻度は少ないかもしれませんが、会社としての利益を追求するのであれば知っておきたいのが「デファクトスタンダード」というワードです。

本記事ではデファクトスタンダードの正しい意味やメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。実際にビジネスシーンで活用されている事例についても紹介していくので、どのように活用するかについて理解を深めていきましょう。

  • 「デファクトスタンダード」の意味とは?

    「デファクトスタンダード」って一体なんなのか

デファクトスタンダードの意味とは

「事実上の標準」のことを意味しており、市場における競合との競争によって作られた標準規格や商品のことです。公的な機関や団体によって決められた標準ではなく、利便性や支持率によって評価されたものを指しています。

例えば、ある商品が大人気になって、誰もが当たり前に使うようになったとします。その後に販売される商品はその商品を参考にしたり、比較されたりすることになるでしょう。そのようにある商品が市場の中で「標準」となっていくのです。

  • デファクトスタンダードの意味とは?

    公式な機関で定められている基準ではなく、市場における標準のことを意味します

デファクトスタンダードの特徴

デファクトスタンダードはどのようにしてできるのでしょうか。ここではデファクトスタンダードの特徴を紹介します。

市場競争に勝利したら獲得できる

デファクトスタンダードは国際機関や団体など公的に認められているわけではなく、あくまで市場競争の勝利によって獲得できる基準です。そのため、市場競争の中で競合に勝利しなくてはならず、他の商品よりも支持されなくてはなりません。激しい競争に勝ち抜いた商品や規格だけが、デファクトスタンダードとして認められるのです。

複数の企業が連携して規格を作る

市場競争に勝ち抜くことで獲得できるデファクトスタンダードですが、必ずしも技術の高さが要求されるわけではありません。もちろん技術も大事にはなりますが、多くの消費者を獲得することが重要なのです。

また、公的な機関による市場競争の結果を待っていると、市場の移り変わりに乗りきれないということもあるため、複数の企業が連携を取って規格を作ることもあります。市場競争に勝ち抜かなくてはなりませんが、1つの企業でなし得なくてもいいのです。

デファクトスタンダードの事例

自由競争の中でその規格が市場に受け入れられ、結果的に標準化した規格を意味するデファクトスタンダード。文章だけ見てもややイメージがわきにくいため、実際に市場で認められているデファクトスタンダードの事例を見ていきましょう。

Windows OS

パソコンを使ったことがある人なら「Windows」の存在を認識しているはずです。パソコンのOSとして世界的な認知を獲得しており、ビジネスシーンには欠かせないエクセルやワードなどもデファクトスタンダードに含まれています。まさに国際的なデファクトスタンダードだといえるでしょう。

LINE

今や世界的に使われている「LINE」もその例です。家族や友人などとコミュニケーションを取るのに使われるツールとして当たり前になり、メールをしのぐ勢いを見せています。

携帯を持っている人であれば大抵の人が活用していますから、通信アプリのデファクトスタンダードと言って間違いないでしょう。

ZOOM

新型コロナウイルスの影響で、テレワークなど在宅勤務が浸透してきました。自宅にいながら会議や打ち合わせをするのに、「ZOOM」を使ったことがある人は非常に多いのではないでしょうか。

ビジネスシーンだけでなく、「ZOOM飲み会」などが流行したこともあり、日常生活でも活用されているのです。今後もオンラインサービスが充実していくことを考えると、ZOOMのデファクトスタンダードとしての立ち位置はもっと高いものになるでしょう。

QWERTY配列

キーボードの配列もデファクトスタンダードを獲得しているのです。文字列最上段の「QWERTY配列」は、タイプライター時代から確立された基準の配列です。タイプライター用に開発された配列でしたが、パソコンでも導入されたことで世界的なデファクトスタンダードになりました。

USB

電子機器を周辺機器につなぐ際に必要なUSB端子もデファクトスタンダードの一例として挙げられます。規格にはいくつかの種類がありますが、パソコンで使われる「Type-A」と、スマートフォンで使われる「Type-C」が現在の主流です。元々はパソコンと周辺機器をつなぐために作られたものですが、現在はスマートフォンやゲーム機・テレビなど、さまざまな電子機器で使われています。

DVD・ブルーレイ

動画配信サービスの普及により、以前ほど見かけなくなりましたが、DVD・ブルーレイもデファクトスタンダード。テレビ番組などを録画するときや映像作品を販売するときはDVD・ブルーレイを使うのが一般的です。

デファクトスタンダードに関連する言葉

デファクトスタンダードの対義語

市場競争の中での標準を意味しているデファクトスタンダードの対義語に当たるのが、「デジュールスタンダード」です。意味としては、国際機関など公的な組織によって「標準・基準」と明確に決められていることです。

公的な機関が標準を設けたとしても市場に影響が出にくく、消費者のためにもなる場合に定められることが多く、乾電池などがその例です。

デファクトスタンダードの英語表現

「de facto standard」が英語表現に当たりますが、語源としてはラテン語になります。「de facto」は「事実上の・実際には」という意味を表し、「standard」が「標準・しきたり」といった意味を持っています。これらを組み合わせて、「事実上の標準」という意味を持つ熟語ができ上がりました。

  • デファクトスタンダードのメリット

    技術の向上が期待できたり、利益を安定させたりできるのがデファクトスタンダードのメリットでしょう

デファクトスタンダードのメリット

それでは、デファクトスタンダードを獲得することのメリットにはどのようなものがあるでしょうか。市場競争に勝ち抜かなくてはならず、労力のかかることではありますが、デファクトスタンダードを狙っているメーカーは非常に多いのです。その理由にもなる獲得することのメリットについて解説していきます。

安定した収益を狙える

最も大きなメリットとして、デファクトスタンダードの獲得による利益の安定が挙げられます。自社の商品や規格が市場の中で基準となってしまえば、消費者は自然とその商品や規格を手にするはずです。消費者の選択に食い込むことができるので、収益が安定することが考えられるでしょう。

また、市場の基準となることで、他の規格や商品が参入しづらくなります。そうなると、価格を自由に決められるというメリットも生まれてくるのです。

消費者に選ばれやすくなり、価格設定も自由にできるのですから、デファクトスタンダードとして認められれば利益を安定させられるでしょう。

コストの削減

市場において標準を獲得したということは、ビジネスの世界や消費者の間でその商品や規格が広く認知されることになります。そうなったことで、自社の商品や規格を広めるマーケティングコストが必要なくなります。今までマーケティングに割いていたコストを商品開発などのほかの部分に充てられるので、さらに良い商品や規格をハイコストで求めることができるのです。

パテント料を得られる

商品や規格がデファクトスタンダードとして認知されると、その基準を参考に他社が商品や規格を生み出します。そのため、基準としての地位を獲得しておくと、パテント料やライセンス料を獲得できるのです。

消費者以外に競合からも金銭の流れができるので、さらに安定した利益を生み出すことができるのです。

他の企業と連携して技術開発できる

先述した通り、1つの企業でデファクトスタンダードを獲得しなくてもいいため、複数の企業が連携して商品や規格を開発するケースも少なくありません。最近ではニーズが多様化しているので、さまざまな企業が協力して1つの商品や規格をデファクトスタンダードに成長させていく傾向にあります。

他の企業との連携により、技術を向上させることができたり、新たなノウハウを手に入れたりすることも期待できます。

  • デファクトスタンダードのデメリット

    独占していると判断されると法律に抵触してしまう恐れがあるのでバランスが大事です

デファクトスタンダードのデメリット

利益を安定させることができ、新たなノウハウを手に入れることができるというメリットを持つデファクトスタンダードは一見とてもいいものに見えます。しかし、デメリットもつきものなのです。

ここからはデファクトスタンダードの持つデメリット面について解説していきます。

消費者にとってマイナスに働くことも

市場競争の中で基準とされた商品や規格が、必ずしも消費者にとっていいものだとは言えません。市場競争によって価格が高騰してしまったり利便性にかけるものが販売されたりと、消費者にとってはマイナスに働く可能性もあるのです。

また、市場が独占されてしまうと、汎用性が低くなり、消費者のニーズに合ったものが選べないかもしれません。

特許権侵害などへの対応

市場で基準となっている商品や規格を他社は目指して商品開発に取り組みますが、その中には模倣品が作られる危険性もあります。模倣品が作られた場合には、特許権侵害などに対応しなくてはなりません。手間や時間がかかり、面倒な事態に発展するケースもあるでしょう。

国際的なデファクトスタンダードだと、国ごとに判断や法律が異なるため、さらに対応が複雑になる可能性もあります。

独占禁止法に抵触する恐れがある 

デファクトスタンダードを獲得したのはいいものの、市場をあまりに独占していると、独占禁止法に抵触していると訴えられるかもしれません。競合を排除することは禁止されているので、基準としてのバランスを取らなくてはならないでしょう。

また、注目が集まることによって、消費者やマスコミなどからバッシングを受けることもあるかもしれません。

  • 実際に活用されているデファクトスタンダード

    意外にも身近なところでデファクトスタンダードは取り入れられているのです

市場で優位な立場に立ちたいならデファクトスタンダードを狙おう

市場競争に勝利することで獲得できるデファクトスタンダードは、商品や規格を開発するときに意識したい立場です。デファクトスタンダードを獲得すれば市場の基準となることができ、利益を安定させられるのです。

世の中にあるデファクトスタンダードは、パソコンや文字配列など身近なところにあります。これからの時代のニーズに応えるためにも、世の中の基準に目を向けてみましょう。