舞台TXT vol.2 「ID」の公開ゲネプロが16日に東京・よみうり大手町ホールで行われ、崎山つばさ、松田凌、井上小百合、萩谷慧悟(7ORDER)、小野塚勇人、砂川脩弥、鈴木蘭々、高橋悠也(作・演出)が取材に応じた。
同作は『仮面ライダーゼロワン』他、多数の作品の脚本を手掛ける高橋悠也が作・演出する完全オリジナルの新作演劇作品。2019年6月に高橋悠也×東映シアタープロジェクト TXT vol.1「SLANG」が上演され、今回が第2弾となる。極秘実験にて意図的にデザインされたアバターたちと、その実験を進める委員会の物語を描く。出演者はアバターと委員会の2役を演じることとなる。
作・演出の高橋は「今作を考えるにあたって、令和1発目の仮面ライダーシリーズが『仮面ライダーゼロワン』で、人工知能をテーマにした割とハードなSF作品だったわけなんですけど、その経験を踏まえてまた違った切り口で改めて本を作って、役者の皆さんと今日まで稽古をしてきて」と振り返る。しかし「どうもこの作品はSFというにはちょっと趣が違うようで、物語の中のキャラクターを舞台上で演じてもらうかに見えて、役者の皆がどういう感情になってどういう結末を迎えていくのか、実験を紙見ているような錯覚に陥る。結果、生まれたのは"サイエンスノンフィクション"だなと。新たなジャンルがどう届くのか楽しみにしています」と期待を寄せた。
注目ポイントを聞かれると、鈴木は「やっぱりエネルギーですかね。一人ひとりが放ってるエネルギー値が高くて、それぞれのエネルギーを見て感じてほしいです。一言一言に今の世界に刺さるなセリフが所々入ってるので、そういう所が刺さったらいいな」と明かす。砂川は「各々のキャラクターが見所だと思います。個性があって、内に秘めたる何かをこのキャラクターに出してるんじゃないかな」、小野塚は「2役あるんですけど、衣装の違いに注目。あとはメイク、自分の役者史上最も濃いメイクをしていまして、未だに鏡を見ると笑ってしまうんですけど、なるべく鏡を見ないようにしながら舞台に集中していきたい」と意気込む。
そんな小野塚の言葉に、萩谷は「言おうと思ってたことがついさっき出てしまった」と苦笑しつつ、2役演じるために「舞台中でメイクを180度変えるのは、僕も初めてやらせていただく。作り込みから、外見があって中身もあって、切り替わりポイントはけっこう違う感情。そこにも仕掛けがあって色んな変化があるので、より作品を楽しめるのではないかな」と笑顔に。井上は「キャスト全員が1人2役は斬新。お客さんも交えて実験に参加してるような感覚になる舞台なんじゃないかな。最終的にはお客さんもどこかの施設で本当に人体実験を見て帰ったみたいになったら。体験型舞台みたいなのが理想ですね」と語った。
松田は「正直に申しますと、わかりません」ときっぱり。「サイエンスノンフィクションというのは、鍵となる言葉になるなあ、と。見所を皆様で作っていただける作品だと思います。見に来て下さったときに見所を作ってみて下さい」と語りかける。そんな共演者陣の言葉を受けた崎山は「なるべくかぶってないことを言いますと、見どころはエネルギー」とぼけ、萩谷が「最初に(鈴木が)言ってた。よく覚えてましたね」とすかさずツッコミ。
松田が「入浴シーン」と振ると、崎山は「冒頭で僕の入浴シーンがあるので……」とのっかり、井上が「ないです」と否定。崎山は改めて「それぞれの与えられたものから派生していったり、枝分かれしていく瞬間もあったりして、舞台上に何人いるんだろうと思ってもらえるような舞台になっています」と締めた後に、「あとは、見所は皆さんで作って下さい」と松田の言葉を引用し、松田は驚いたように崎山を見ていた。
フォトセッション時には、「キャラクターのポーズがあれば」というリクエストに、崎山が流れるように「すしざんまい」のポーズを取り、主に崎山の小ボケが絶えない取材会に。さらに作・演出の高橋によって各役者の印象についても語られた(下記参照)。東京公演はよみうり大手町ホールにて6月17日〜27日、大阪公演はサンケイホールブリーゼにて7月2日〜4日。また特典映像付きの配信も実施される。
高橋悠也による役者の印象
・崎山つばさについて「"つばさ"という名前なだけあって、喩えるなら天使のような人柄だと最初は思っていました。でも稽古を重ねていくうちにどんどん役が入って。天使は地獄に落ちると悪魔になります。天使と悪魔両方の魅力を兼ね備えた人だなと思うようになりました。それがどういう意味なのかはぜひ舞台を見て感じてみて下さい」
・松田凌について「動物に喩えるなら、犬と狼のようだと思いました。お芝居に対する姿勢がすごく真摯で熱くて、"お芝居"というご主人様に真摯で忠実な犬のようであり、でもある時ご主人様に噛みついて芝居の肉片を食い散らかすかのような熱量を持っている役者」
・井上小百合について「前回(TXT vol.1「SLANG」)毒のある方だなと思ったんですけど、今回改めて違う役を演じてもらって、喩えるなら血統書付きの猫と雑種の野良猫のような人。同じ猫でありながら全く違う猫を演じている。気品と泥臭さ、両面を演じてるようで素晴らしい役者」
・萩谷慧悟について「非常に頭の回転が速く、目が2つだけじゃなくて上下左右前後8個くらいついてると思うほど、自分を客観視してどう見えるのか計算している。虫に喩えるなら蝶と蛾のような。ひらひらとキレイに美しく、どこから見ても美しく舞うんですけど、今回の役柄も含めてどこかクレイジーで、一見蝶かと思ったら蛾だったみたいな2面性を併せ持っている。今までの彼がやったことない役だと本人から聞いていますので、そこを楽しみにしています」
・小野塚勇人について「僕から見たイメージで言うと、シャイな頑固者という印象が強い。一見本音を隠して、どこかかわして物事をとらえるようなところがありながら、お芝居とかセリフにこだわりを持っている。自分の納得いかないセリフは自分流に変えたりしていく力強い一面がある。喩えるなら、どじょうと蛇のような役者。つかみ所がなく、つかもうとしてもぬるっと離れて行ってしまう。ひょうひょうとした立ち回りをしながら、ある時、急に演出家に毒をもって噛みついてくる」
・砂川脩弥について「非常に癒し系で、沖縄出身ということもあり、"Mr.なんくるないさ"という言葉が似合う。食べ物に喩えるなら海ぶどうのような。海にふらふらっと揺れていて、見てるだけで愛でたくなるような美しさを持っているんですけど、海ぶどうは別名"グリーンキャビア"なので、一見海ぶどうのようでいて、その中に光るキャビア成分をお芝居に感じる」
・鈴木蘭々について「非常にチャーミングで、若い頃から存じ上げてた人でありますけど、生き物に喩えるなら、鈴木蘭々という生き物だなと思いました。こう演じてほしいと思って書いた台本を180度変えるような演技プランを持ってきて下さいまして、見事に彼女にしか出来ない役柄になっている。座組の中で1番年上だけど、年上だと感じない。老若男女、少年少女から大人、はたまた人ではない人まで何役もキャラクターを演じてるところがありまして、鈴木蘭々という生き物をぜひ楽しんでいただきたい」